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未来への決意

 あゆみは意を決して大学の指導教授の研究室のドアをノックした。小学校教師への進路変更を考え始めていたが、自分だけで決められることではない。履修変更や教育実習の調整が必要になるのは明らかで、早めに相談しておきたいと感じていた。


 ドアの前で一度深呼吸し、拳をぎゅっと握って気持ちを整える。


「失礼します。突然お時間をいただいて申し訳ありません。」


 研究室の奥でパソコンに向かっていた教授が顔を上げ、穏やかに微笑んだ。


「あら、如月さん。どうぞ入って。座って話していいよ。」


 あゆみは深く一礼して椅子に座り、慎重に言葉を選びながら口を開いた。


「実は、進路についてご相談がありまして……。」


 教授は少し首をかしげながらも、関心を示すように頷いた。


「進路のことね。いいわ、詳しく聞かせて。」


 あゆみは緊張した面持ちで、自分の迷いや考えを話し始めた。


「私はこれまで、高校の教師を目指していました。でも、最近少し迷いを感じていて……。」


 教授は眉を寄せながらも真剣な表情で耳を傾けている。


「どうして迷いを感じるの?」


「高校教師になりたいと思ったのは、高校時代の担任だった先生に憧れたからです。でも、自分が高校生と向き合うイメージが湧かなくて……。それよりも、小学生の子どもたちと関わることに興味を持つようになりました。」


 教授は目を細め、あゆみの言葉をかみしめるように頷いた。


「なるほどね。それで、小学校教師への進路変更を考え始めた、と。」


「はい。ただ、今からの変更は簡単ではないと思います。それでも、小学生たちの成長を支えたいという気持ちが強くて……。」


 教授は腕を組み、少し考え込むような仕草を見せた。


「確かに、履修変更や教育実習の調整が必要になるわね。それに、小学校の教師を目指す理由を周囲にしっかり説明する必要もある。」


「あ……はい。それは承知しています。」


 あゆみは緊張しながらも、力強く答えた。


「ちなみに、進路変更を考えるきっかけになった出来事は?」


 その問いに、あゆみは一瞬戸惑いを見せたが、正直に答えることを決意した。


「あの……私、小学校教諭に転向しようと思ったのは、一緒に暮らしている子どもたちの影響が大きいんです。彼らとの日常の中で、子どもたちの可能性や成長に触れて、小学校教師として支えたいと思うようになりました。」


 教授は少し驚いたように目を丸くした。


「一緒に暮らしている子どもたち?如月さんって結婚しているの?」


「あ、いえ……結婚はまだなんですけど、彼氏と同棲していて……その人には子どもが二人いるんです。」


 教授は眉をひそめながら頷いた。


「そういう状況なんだね。答えにくければ答えなくてもいいけれど……たまに『如月さんが高校の担任と同棲している』って噂を耳にするんだけど、もしかして今言った同棲相手って、その噂の人なの?」


 あゆみは少し躊躇しながらも、視線を落として静かに頷いた。


「……はい。」


 教授は目を丸くし、思わず椅子から少し前のめりになった。


「ちょっと待って、君の高校の先生というと……もしかして、星宮先生?」


「あ……はい。」


 教授は驚いた表情を浮かべたまましばらく黙り込み、それから小さく息を吐いた。


「いや、驚いたよ。星宮先生の評判はこの辺りでも有名だからね。教育実習の指導でも何度か関わってもらったし、生徒主導の自由な教育を取り入れていることで知られている。ただ……まさか君の同棲相手が彼だったとは。」


 あゆみは申し訳なさそうに視線を落とした。


「すみません……。」


 教授は少し困惑した様子で微笑みを浮かべた。


「いや、謝ることではない。ただ、教育の場ではこういった関係が誤解を招きやすいことも事実だ。その点は理解しておいたほうがいいよ。」


「あ……はい。そのことは自覚しています。」


 教授はあゆみの真剣な表情を見つめた後、静かに頷いた。


「話の腰を折ってしまったけど、如月さんがそういう状況の中で、なぜ高校教諭から小学校教諭に進路を変えたいと思ったのか、理由を聞かせてくれるかな?」


 あゆみは深く息を吸い込んだ後、自分の思いを言葉にしていった。


「私が高校教師を目指したのは、星宮先生のような教師になりたかったからです。でも、今の自分には高校生と向き合うイメージがあまり湧きません。それに、子どもたちと接する中で、もっと小さな年齢の子どもたちに興味が湧いてきたんです。」


 教授は黙って頷きながら、あゆみの言葉を待った。


「今一緒に暮らしている子どもたちと接しているうちに、彼らの成長や可能性に触れて……小学校で、子どもたちの可能性をもっと引き出せるような教育をしたいと思うようになりました。」


 あゆみの言葉には力が込められており、その真剣さが教授に伝わった。


 教授は腕を組み、しばらく考え込むような表情を見せた後、柔らかい笑みを浮かべた。


「なるほどね。星宮先生の影響で教育に興味を持ち、今は子どもたちと接する中で新たな道を見つけたということか。」


「はい。」


「でも、君も分かっていると思うけど、今からの進路変更は正直言って簡単じゃない。履修科目の変更もあるし、タイトなスケジュールになることは覚悟しないといけないよ。」


「それでも、小学校の教師を目指したいです!」


 あゆみの強い決意を受け、教授は再び微笑んだ。


「分かった。手続きについてはサポートするから、これからの道をしっかり進んでいくんだよ。」


 教授の柔らかな笑顔に、あゆみは深く頷き、感謝の気持ちを込めて一礼した。

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