遭遇
あゆみがすばると街を歩いていると、どこからか声が聞こえた。
「如月!」
振り返ると、大学の友人であるかずきが、少し驚いたような顔をして立っていた。あゆみは一瞬戸惑ったが、すぐに微笑みながら挨拶を返した。
「あ、かずき君。こんにちは。」
すばるもその場で足を止め、軽く頭を下げた。
「あゆみのお友達かな。こんにちは、星宮昴です。」
すばるの穏やかな声に、かずきは少し緊張した様子で頷いた。
「あ、どうも。如月と同じ大学の一輝です。」
その名乗りに、すばるは柔らかく微笑んだ。
「そうなんだ。いつもあゆみがお世話になってます。」
そのやり取りを見ていたあゆみは、二人の初対面に少し気まずさを感じながらも、何となく安心感を覚えていた。
少し雑談が続いた後、かずきがふと口を開いた。
「実は……如月のこと、好きだったんです。」
その言葉に、あゆみは驚き、目を見開いた。
「え……?」
「でも、告白する前に盛大に振られましたよ。」
かずきは軽く肩をすくめて苦笑いを浮かべる。その様子を見て、あゆみは何も言えず、ただ戸惑うばかりだった。
「支えたい人がいるんだって、如月に言われてさ。まあ、その強い言葉を聞いたら、俺が入る余地なんてないんだなって思った。」
すばるはその話を静かに聞き、少しだけ驚いたような表情を浮かべた後、柔らかな笑顔で口を開いた。
「そうだったんですね。でも……かずきさんがそう思うのも自然だと思います。あゆみは、それだけ魅力的な人ですから。」
すばるの言葉に、かずきは少し驚いたように目を見開いた。
「でもね、僕だけが特別に思っているなんてことはないんです。あゆみは、誰から見ても魅力的な人だから。彼女が好きになる理由は誰にだってあると思います。」
すばるは少し微笑みながら、優しい声で続けた。
「自分だけが彼女を特別視しているなんてこと、ありえないんです。僕が魅力的だと思う人なら、きっと他の人もそう思っているはず。だから、かずき君があゆみを好きになるのも仕方ないし、それは僕にとっても喜ばしいことだよ。……まあ、複雑な気持ちが全くないと言ったら嘘になるけどね。」
そして、少し照れたように笑いながら、こう続けた。
「そんな魅力あふれる彼女の隣に相応しい男であれるよう、日々自分磨きの最中なんですよね。髪型やファッションにも気を使うようになりましたし、少しメイクだって取り入れるようになったんですよ。」
かずきはその言葉に驚いたように目を丸くしたが、すばるの冗談めかした表情を見て、思わず吹き出した。
「メイクって……本気で言ってるんですか?」
すばるは楽しそうに肩をすくめた。
「さあ、どうでしょうね。試してみる価値はあるかもしれませんよ?」
その軽妙なやり取りに、部屋の空気が少しだけ和らいだ。
その言葉に、かずきは一瞬黙り込み、そして苦笑いを浮かべながらぽつりと呟いた。
「……あなたには勝てないですね。」
かずきは立ち上がり、少し気恥ずかしそうに笑った。
「如月、かっこいい彼氏で良かったな。」
その言葉に、あゆみは目を丸くし、すぐに幸せそうな笑顔を浮かべた。
「でしょ!自慢なんだ!」
あゆみのその言葉に、かずきは一瞬驚いたような顔をした後、少し寂しそうに笑った。
「確かに、自慢できる彼氏だな。」
そう言って軽く手を振りながらその場を去った。その背中には、どこか清々しい空気が漂っていた。
「ありがとう、かずき君。」
あゆみは小さく呟きながら、すばるの方を振り返った。
すばるはそんなやり取りを見て、優しく微笑んだ。
「あゆみ、君は本当に魅力的だよ。だから、僕だけじゃなくて、誰が見ても素敵に映る。そういう君が、僕を選んでくれたことが何よりも嬉しい。」
その言葉に、あゆみは胸の中に少しだけ自信を感じた。
「これでいいんだ。この人と一緒にいることが、私の選んだ道なんだ。」
心の中でそう呟きながら、あゆみはすばると並んで歩き出した。




