迷いの中で
家に帰ると、あゆみは玄関で深く息を吐いた。れんとりおの元気な声がリビングから聞こえるが、彼らの顔を見る気力がわかなかった。
「ただいま。」
少し沈んだ声で言うと、リビングからすばるが顔を出した。
「あ、おかえり。何かあったの?」
すばるの穏やかな声に、あゆみは心の奥底に溜まった感情が少しずつこみ上げてくるのを感じた。
「少し話してもいいですか?」
あゆみは小さな声で言いながら、ソファに腰を下ろした。すばるも彼女の隣に座り、その顔を覗き込む。
「あの……今日、大学で友達と話したんです。」
あゆみは視線を下げながら話し始めた。
「その子……かずき君って言うんですけど、私たちのことを知ってて、すごく心配してくれて……でも、その中で普通じゃないって言われたんです。」
すばるは一瞬黙ったが、穏やかに促すように頷いた。
「それで?」
「あの人の言ってること、間違ってないんです。普通じゃないって思われるのは当然で、子どもがいることも、私がすばるさんを選んだことも……。」
言葉に詰まるあゆみを見て、すばるは少し考え込むように目を伏せた。
「ぼくも、迷ってる時があるよ。」
その言葉に、あゆみは驚いて顔を上げた。
「迷ってる……?」
すばるは視線を床に向けたまま、静かに話を続けた。
「ぼくだって、自分が君を幸せにできるのか、正直わからない。君はまだ若いし、他にももっと普通の道があるんじゃないかって考えることもある。」
その言葉を聞いて、あゆみは胸が痛むのを感じた。
「でも……僕は君と一緒にいたいと思ってる。それだけは変わらない。」
すばるの言葉に、あゆみは涙を堪えきれなくなった。
「すばるさん……私、どうしたらいいんでしょう。」
その問いに、すばるは一瞬黙り、そして優しく答えた。
「一度、少し考える時間を作ってみるのはどうかな。君が本当にどうしたいのか、自分の気持ちと向き合うために。」
あゆみはその言葉に頷いた。
「そうですね……少しだけ、考える時間をもらいます。」
すばるは微笑みながら、彼女の肩に手を置いた。
「どれだけ時間がかかってもいい。君が自分の答えを見つけるのを待ってるから。」
その夜、あゆみは自分の部屋で天井を見つめながら、かずきの言葉や、すばるの言葉を思い出していた。
「私が本当に望んでいることって何だろう……。」
静かな夜の中で、あゆみは自分自身と向き合うための旅を始めようとしていた。




