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支えとなる声

 

 大学キャンパスのカフェテリアは、昼休みを楽しむ学生たちの声で賑わっていた。あゆみは、いつも明るい友人・奈緒と向かい合って座っていた。


「あれ、何かあったでしょ?」


 奈緒は一口飲んだコーヒーカップを置き、あゆみをじっと見つめた。


「え……そんなに分かる?」


 あゆみは苦笑いしながら視線をそらしたが、奈緒の目は鋭かった。


「分かるよ。あゆみが悩んでるときって、目がちょっと泳ぐんだもん。」


 その言葉に、あゆみは思わず笑ってしまった。そして、奈緒の優しい視線に押されるように、少しずつ口を開いた。



 


「私、同棲を始めたんだ。」


 その一言に、奈緒は少し驚いたように眉を上げた。


「えっ!同棲?相手って……やっぱり、星宮先生?」


「うん……。」


 あゆみは小さく頷き、続けた。


「でもね、すばるさんには二人の子どもがいるの。」


 その言葉に、奈緒の表情が少し真剣になった。


「前にそう言ってたもんね。どんな子たちだった?」


「れんくんとりおちゃん。れんくんは年長さんで、りおちゃんはまだ幼い。でも、二人ともすごくいい子で……逆に、それが辛いの。」


 あゆみはコーヒーカップを握りしめながら、静かに話を続けた。


「私は、子どもが苦手だって気づいたの。でも、あの子たちはそんな私に懐いてくれてる。それが嬉しい反面、自分がその期待に応えられるのか分からなくて……怖い。」


 その言葉に、奈緒は頷きながら真剣に耳を傾けていた。



 


「私、何もできないし、彼らにとっての母親なんて考えられない。でも、あの子たちと一緒にいると、自分がダメだって思ってしまうの。」


 あゆみは視線を落とし、胸の内を吐露した。


 奈緒は少し間を置いてから、ゆっくりと口を開いた。


「あゆみ、分かるよ。その気持ち。私だって、同じ状況になったら自信なんて持てないと思う。でもさ、あの頃のこと覚えてる?」


「……あの頃?」


「高校のときのこと話してくれたじゃん。文化祭で実行委員長やったんでしょ?うまくいかないことがあって、最後は泣いてた。でも、そのとき星宮先生が何て言ったんだっけ?」


 その言葉に、あゆみは目を見開いた。



 


「『行動を起こさなければ失敗は起きない。逆に言えば、行動を起こすことができたっていうこと自体が、如月さんの頑張りだよ』って。」


 奈緒の口から出た言葉は、あゆみの記憶の中に鮮やかに蘇った。


「星宮先生はそう言ってくれた。その言葉があゆみを救ったんじゃないの?」


 奈緒の目は真っ直ぐだった。


「今、あゆみはまた行動を起こしてる。子どもたちと向き合おうとしてる。その時点で十分すごいと思うけどな。」


 その言葉に、あゆみの胸の中に少しずつ暖かいものが広がっていった。



 

「でも……私はまだ、彼らに何も与えられてない気がする。」


 あゆみは弱々しくそう呟いた。


「そんなことないよ。あゆみがそこにいること自体が、れんくんやりおちゃんにとって大きな意味があるんじゃない?きっと、もう支えになってるはずだよ。」


 奈緒の言葉に、あゆみは少しだけ微笑んだ。


「……ありがとう、奈緒。少しだけ気が楽になったかも。」


「それでいいんだよ。完璧じゃなくていいんだから。無理しすぎずにね。」


 奈緒の笑顔に、あゆみは小さく頷いた。そして、自分がもう少し頑張れるかもしれないと思い始めていた。



 


 帰り道、あゆみはれんとりおの笑顔を思い浮かべた。彼らの小さな声と無邪気な笑顔が、いつも彼女を待っている。


「私は、もう一歩進んでみよう……。」


 その決意が、心の中で静かに強くなっていった。



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