生きていたわけ
今日もいつも通りの日々が始まる。
いつも通り支度をして、いつも通り学校へ向かう、いつも通り鳥のさえずりが聞こえ、いつも通り自分の席に着く。
今日もいつも通りの日々だ。
「テストを返すぞー。今回の最高点は98だ。」
・・・テスト返しがあった。
今回もいつも通り悪い点数、順位も下から数えた方が早い。
ある意味いつも通り。
いつも一緒に下位を争っている友人の点数を聞いてみた。
「今回めっっっちゃ頑張ってなんと!98とって1位!!!」
おいて行かれた。素直に褒めた。努力してその結果がしっかり出て本当に凄い。
次の授業は体育。
まさかの持久走。いや、前回の授業で言っていたから知ってはいたけど。
持久走は嫌いだ。
まぁ、運動全般好きじゃない。持久走が嫌いな理由もいっつも最後尾の方を走っているからだ。みんなが早すぎる。他の種目も出来なさすぎて嫌いだ。
運動も勉強も出来ない。
昼休み友人と雑談していると、友人にとある有名人に似ていると言われた。どうやらいい意味らしい。
でも、その有名人はよく友人が好きじゃないと言っていた人だ。暗に嫌いと言っているのか?
そんな考えをよそに友人は自分に楽しそうに話す。
わからない。嫌われてないならいいか。
今日もいつも通りの自己肯定感が下がる1日だった。
帰り道、お年寄りが荷物を沢山持って歩いているのを見た。だいぶ大変そうだ。普段だったら人見知りで見て見ぬふりをしてしまう。でも今日は少し違った。自己肯定感が下がった自分を慰めるように、勇気を出して「手伝いますよ」って言おうとした。唾を飲み込んで、一歩前に歩き出す。
「手「大丈夫ですか?荷物持ちますよ」
他の人に先を越されてしまった。その人に荷物を持ってもらってもまだ大変そうだが、先ほど振り絞った勇気はもうなくなってしまい。そのまま早足でその場から離れた。
少し胸が痛む。
家に帰ってきた。今日は何をしようかな。テストは見せたらまた怒られてしまうし、明日にしよう。多分、おそらく、きっと、明日に見せるはずだ。
今日はゲームをしよう。対人バトル系のゲームだ。気になるゲームの腕前は真ん中ぐらいだと思う。実際にランキングも真ん中をうろついている。
1番得意なことはゲームかな。でも、自分より上手い人はいっぱいいるし、毎日やりこんでいるわけでもない。実際、ゲーム好きの友人と話をするが、話が詳しくなっていくと理解するのがやっとになる。
夜、ベットに寝っ転がって天井を見上げた。
なんで自分は生きているんだろう。ふと、そう思った。
自分より辛く苦しい中生きている人も沢山いるのに、生きたいのに生きられない人も沢山いるのに、何も出来ないこんな自分がなんで生きているのか甚だ疑問だ。
死にたいわけじゃない、ただ自分が生きていることを納得できてないだけだ。
自分が居なければ、もっと上手く世界は回っていたのかなと意味のないことを永遠考えてしまう。
例えばなんか得意なことがあれば、勉強も運動も性格も趣味も何もかもダメだ。いいところがあったとしても他の誰かが自分を遥かに上回ってくる。そんなことを思いながら眠りについた。
朝、今日もいつも通り通学路を歩いていたら、いつも通りじゃないことが起きた。
子供が車に轢かれそうになってる。
刹那、自分の体が動いていた。
子供を車に轢かれない場所まで思い切り突き飛ばした。
そして、自分に車がぶつかり、地面にこれでもかと言うほど強く叩きつけられた。
痛い。呼吸が荒くなる。
意識がなくなっていく。寝る時みたいに、自然にぼーっと意識がなくなる。
これが死か、
あぁ、思い返すとくだらない人生だった。
人並みに笑い、泣いた。辛いこともあったし、楽しいこともあった。いくらなんでも10代で人生を終えるのは早すぎるな。
お酒とかタバコとか試してみたかった。まだ恋人も出来たことがないのに、無性に苛立ってきた。
走馬灯が見える。
…今になって後悔がふつふつと湧き出てくる。これまでの人生もう少し何か出来たんじゃ無いかと。
走馬灯って生きるための何かを探してるんじゃないのか。これだとただ後悔するだけじゃないか。せめて幸せに死にたい。
はぁ、後でやろうと後回しにしてきたものがいっぱいある。まだいつもの1日が続くと思ってたから、自分の好きなことですら、後回しにしてしまった。
こんなに早く死ぬならやっておけば良かった。
あのゲームまだやってないんだよな…ゴロゴロしながら日々を過ごすぐらいならやっておけばよかったかも。
あっ、あの漫画最後どうなるのかな。せっかく完結してるのに、読むのサボってたせいでモヤモヤする。
明日本気出そうとか思ってたけど、もう明日は来ないのか…
結局友人には負けたままだったな。最後にテストかゲームかなんでもいいから勝ってみたかったのに、負けっぱなしの人生だ。
今だってそうだ、自分は死に友人は生きるこれからの人生で友人は勝ち続け、自分は挑戦する権利もなくなる。誰にも勝てない。
死者と勝負か?
それでも勝てないと思うな。
勝ち逃げならよかったのにな…
負け逃げだ。
はは、なんだよ負け逃げって。
ずっと自分はいらない人間だと思っていたら、本当に死ぬことになるなんてな。
眠い。もう、死ぬか。
あ、思い出した。
重くなってきたまぶたを気合いで開ける。
こんな後悔まみれの人生で、唯一誇れるもの。
眠い目を開けて横を見る。
あぁ、よかったあの子供は生きてる。少し膝を怪我をして大泣きしている。それだけで良かった。
本当に本当に良かった。
今、自分が死ぬとしても勇気を出して飛び出して子供を守れたこと。これは一生後悔しない。
もう一生は終わるけど。
この子を守るために自分は生まれてきたのかもな。
ずっと負け続けたこともこの子を守るためだったのかも。
もし、勝ち続けていたら自分のことを大切にして、飛び出せなかった。
悲しい話だが、自分が要らないと思っていたから飛び出せた。
変な話かもしれない、でもこれが自分だ。
ずっと自分の生きる意味を探してた。
見つかるわけないな。誰かを守って死ぬなんて。
でも、良かった。
見つけられて。
生きてて良かった。
最後に自分に誇れて良かった。




