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プロローグ

 広く白いその部屋の上座に座るその男はザワザワと呟かれる声に目を瞑った。


 その様子を、ちらちらと覗いながらもその場にいる者達の声は止まない。

 いつもならば、静閑に満ちるその場も、今は影も見せず落ち着きのない空気が室内を満たしていた。


 それほど、現在の状況は著しくなかった。

 …──世界の危機、と言っても良いほどの事態。



 上座に座る男は閉じていた目を開け、その視線を外へと向けた。

 否、そこから見える神殿の樹木へと。


 そこにそびえ立つ蒼樹と呼ばれる始原よりそこに在る樹木。

 蒼樹はその世界の力の源だった。


 その蒼樹は現在、過去に例を見ない異変を見せていた。

 



「このまま蒼樹(そうじゅ)の異変が進めば、どんな事態になるかっ」




 未知の事態への恐怖は計り知れない。

 実際、もう()が活発に動き始め被害がでている。

 恐らく、これからもっと動きは大きくなっていくのだろう。


 ──そうなってからでは、遅いのだ。

 全て、迅速に行動していかなければならない。原因も究明出来ていない今、出来るだけ多くの準備をしておく必要がある。



「蒼樹が、黒く染まるなどっ」



 予想外の、事態に備えなければならない。

 民のために。そして世界のために。


 ゆっくりと視線を室内に居並ぶ者達へと巡らせる。そして一番遠く、奥の壁に寄りかかっていたその男と視線がかち合う。

 その深緑の瞳には強い意志が宿り鋭く光を増していた。

 その男はしかし、そのまま気配を悟らせないまま静かにその部屋を後にした。恐らく男が退出したことに気がついた者は自分しか居ないだろう。

 

 

「王よ!ご決断を」


 

 視線が集まり、顔を上げた。

 世界が、動く。望むのは、全てが終わったとき、少しでも多くの人々が無事であることを。

 ──これからこの世界を護るため一人の人の全てを奪う。

 

   


「神官長レベローゼ=ラウ=ドレナグシュ、魔法師長ロナルド=マグガン」

「「はっ」」



 二人が一礼し、立ち上がる。

 一呼吸おいて、強く強く願いを込めて、決断を。

 


「次に蒼樹の力が満ちて月が蒼に染まる10日後」



 この決断を、後悔する時が来ないことを願って。



「聖女の召還を決行する」



 どうか、救いを。我等の創世神アウシュトラーゼ様。

 そして、この地に降り立つ黒髪の聖女よ。我々にどうか力を貸してくれ。

 


 ──この世界に、平穏を。

 

 


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