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クリストファー7

 次にアレクシアから連絡が来たのは、それからまもなくのことだった。



【面白いの妹から本当の兄様へ かわいい方の妹を見た。ノーザンブリア家の嫁に欲しい。実の兄様は慎重派だから求婚まで3年くらいかかるかも 読後焼却のこと】


 父は号泣した。

 カードを握りしめて、肩を震わせて。

 親友が亡くなった時みたいに。


 たまたま母も領地に戻っていて、一緒に泣いていた。


 ようやく北領の兄妹が、自分たちの幸せについて考えられるようになったことを喜んだ。


 そして、両親の死を思い出させるだろうマチルダをカールの妻に欲しいと思ってくれたことを喜んだ。


 母は「何があったのか調べるわ」と言って、急いで帝都へ帰った。



【本当の兄様から面白い方の妹へ 君はいつも本当の父様を泣かせる。今回は本当の母様も泣いた。3年ぐらいなら他を遮断しておく。もっと時間がかかりそうなら別途相談しよう 読後焼却したくないと言ってるが、いいか?】



 母がマチルダに「最近何かあった?」と聞くと、「ルイス殿下が偽の婚約者を連れて学園に復帰した」と答えたそうだ。


 偽の婚約者とは、東領のミレイユ姫の事で、立ち位置が「後ろに控える」なのに、妙に得意気なのだと。


 中等部の生徒は典礼の細かい違いを知らないから、「並び立つ姿は太陽と月」とか褒めちぎって、面白くないらしい。


 取り巻きたちが「リリィ様がいればあんな子、蹴散らしてくれるのに」と怒っているらしい。

 自分が戦いに身を投じる気概はゼロだ。



 マチルダは、リリィが亡くなってからずっとこんな風だ。


 マチルダはルイスが好きだったが、リリィとワチャワチャするのがルイスよりも好きだったのかもしれないと母上は推測している。



 あとは、ちょっと前に校庭に「ルイス様の秘密の恋人」が現れたらしく、みんな熱心にその子が誰だったか探しているらしい。


 茶色の髪の女の子で、ルイスが近づくと、臣下の礼をとった。


 ルイスは免礼で返し、その子が見ていた方角に合わせて「並び立った」。


 マチルダは、「あれは間違いなく『横』だった」と力説していたらしい。


 二人は校庭を眺めながらしばらく歓談した。ルイスは令嬢と向かい合って立ち話をすることはあっても並んで立ち話をすることはなかったから、強烈な特別感があった。


 ルイスとは付き合いが長いが、立場上、女性との距離感に非常に慎重だ。


 誰とも並んで歩かないし、会話をする時は立ち止まって向かい合って話す。


 そうすればダラダラと話につきあわされる事がないから。

 そうすれば一定距離を保てるから。


 一人で立っている女の子に自分から近づく事なんて絶対にない。


 これは確かに特別感がある。



 校庭にいた生徒たちは、各々素知らぬフリをして「見てないですよ」アピールをした。


 もちろん見ていたけど、比較的近くにいて顔まで見れた人でも、誰だったか分かる人がいなかった。


 最後に令嬢が臣下の礼で立ち去ろうとした時、ルイスはその子を引き寄せて額にキスをした。


 でも、その子は特に驚くこともなく立ち去った。


 あの子にとってはあれが普通のことなんだ!

 皆に衝撃が走った。


 その時ばかりはマチルダも含めみんな「見てます!」と言わんばかりに立ち尽くしていたらしい。



 茶色の髪の子たちは皆一様に口をつぐんで、学園は大混乱らしい。



 それ、間違いなくマチルダを見に来たアレクシアだろ?


 あー。

 まだ好きだったんだな。

 一途だもんな、テーラ家の男。



 それにしても、マチルダは、ルイスに対して随分トーンダウンしてしまって、心配だ。


 リリィを失った悲しさから復活できていないのかもしれない。


 リリィがいれば、キーッとなって今頃マチルダも振り回されて大変なのは確実だから。


 アレクシアが帝都にいてくれれば、また騒々しくなっていいかもな。


 などど思っていたら、アレクシアから連絡が来た。


 今年は活動的なようだ。



【面白い方の妹から本当の兄様へ 来年は平民アルとして帝立学園で「実の兄様」の露払いをすることになった。まだ男子だけど、今回はちゃんと軒下に住める。今度こそのびのびいたずらっ子っぷりで「本当の父様」から合格がもらえるかな? 読後焼却は任意】


 面白い方の妹は、面白いことに実の兄様より先に入学して、露払いするらしい。


 波乱の予感しかない。



【本当の兄様から面白い方の妹へ では私も露払いに参加しよう かわいい方の妹だけでは敵を抑えきれていない 1年経ったら地下へ潜るから短期決戦だ 読後焼却は任意】


 アレクシアは、入学式、早速、東領領主だけハブにして、4領の保護者へ敬礼を贈った。


 ミレイユ姫が参加したければ、東領領主にも敬礼を贈っても良かったが、そんなことは起きなかった。


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