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【エンディング】ルイス後編15

「緑の部屋の閉鎖? 問題ないと思いますよ? 不安な理由は何ですか?」


 カールがノーザス城内の時戻りの影響を受けない部屋を消滅させるつもりだとアデルに話したら、賛成も反対もしていない時の返事が返ってきた。



「ノーザンブリア家は、当主の手記をそこに保管することによって代々、時戻し前と時戻し後の世界の違いを比較しながら世の中の動きを読んできたんだろう? それが出来なくなっても大丈夫?」


「船頭多くして船山登る。時戻しの判断も、世の中をどう変えたいかもテーラ家に託されているのに、ノーザンブリア家がそれを観察する必要はないのです」


 あっさりしすぎていない?



「ダニエル公は反対しているんだろう?」


「父様は猛反対していますが、ノーザンブリア家はテーラ家の治世に協力的というわけでもないでしょう? それならば害になることの方が多かったはずです」


 歴史的にはそうかもしれない。

 アルバート陛下だって、ダニエル公ともカールとも政治的に対立していたと言える。



「歴代の北領の姫の真実の記録もそこに残っているんだろう?」


「ふふっ。気になるなら帝立図書館にでも寄贈しましょうか? 時戻し関係はダメですが、姫の記録なら外に出してもいいでしょう……」


 本当にこだわりがないようなので、私もそれで良いということにした。


 救済の仕組みにしても、時戻しの影響を受けない部屋にしても、放棄するのは非常にもったいないと感じてしまう私は貧乏性なんだろうか?



 もやもやした気持ちを抱えたままでいる私の表情を見てクスリと笑ったアデルは、珍しく自分から私の膝の上に乗って、腕を私の首裏に回して、反対の手で頬をするりと撫でてきた。


 どうしたの?

 時戻しの前によく見かけた子供達のことを愛おしいと思っている時と同じ表情を浮かべた。


 アデルの「愛してる」の顔だ!


 え?

 ほんとに?


 私、ずっと不安だったんだ。


 時戻しの後は、ずっと一緒に暮していたけど、この表情のアデルを見たことがなかったから……


 連続した記憶を持っている私にとって、アデルは変わらず私の最愛だけど、アデルは前とは全く違う環境で育ったし、どうやったらアデルに好きになってもらえるのか、愛してもらえるのかさっぱり分からなくて、本当に本当に不安だった。


 アデルの「愛してる」の顔は見れないかもしれないって……


 じんわりと私の目に涙が溜まったのを見て、何かに気付いたアデルは、唇にちゅっと軽くキスをくれた後、優しく問いかけてきた。



「ルーイとわたくしが孫の顔を見た後のずっと先の話ですが、わたくしは魔王になります」


「まおう?」


「ええ。任期は千年です。ルーイは王配になりたいですか?」


 プロポーズ?

 だよね?


 時間のスケール感が予想外だけど、プロポーズに違いないよね?



「なりたい!」


 私は嬉しくて、嬉しくて、それからしばらくアデルと存分にイチャイチャした。


 アデルが成人を迎える前だから、二人でくっついておでこや頬にチュッチュしながらおしゃべりを楽しむだけの、かわいい恋人たちのイチャイチャだよ?


 私、つい時戻し前みたいにアデルの首裏や胸元に鼻を突っ込んだり、スカートの中に手を入れたりしたくなっちゃうけど、ぐっと我慢したよ。


 孫の顔を見た後にも千年もの時間があるんだから、結婚式まであと1年、頑張ってお行儀よくしようと思ってね……


 もうね、ただお話しているだけでも、涙が溢れそうなくらい幸せだしね。


 結婚式とか、ずっと泣いてしまいそう。


 はぁ~。

 のろけ話って、ずっと書いていられそうだけど、どういうことか知りたいよね?



「それにしても、魔王が任期制だったとは、想像を絶する世界観だね」


「魔王は、管理者としてこの世界のバランス調整の為に雇われた存在なのです」


「雇い主は神様?」


「神様は存在しません。それに、この世界にいる間に外の世界について具体的な話をするのは禁忌なので、わたくしも知りません。魔王になったら詳しく聞いて教えてあげますね」


 カールとアデルが当代魔王ウィリアムが里帰りするとかなんとか言っていたのは、この世界の外の世界に行くってことだと理解した。



「カールも魔王が任期制だと知ってるの?」


「魔王の仕組みについては知らないと思います。ただ、カールは時空魔法の修行中に私達の住む世界と魔界と緑の部屋は時間の進み方を独立させる仕組みを知って、それを可能する為には、外側にもう一つ全てを俯瞰できる世界が必要だということを察しただけです」


 カールって何気に天才なんだよな……



「ふぅん。でも、千年って長いよね? 魔王の任期中は不老不死になるの?」


「不老不死にはなりません。救済と同じ時魔法で身体の時を撒き戻します」


「記憶は?」


「身体の時戻しを使う時に記憶球に預けて、時を戻した後にメモリーデータを読み込んで同期しますから、すぐに思い出せますよ」


 言葉が専門的になってワケが分からなくなってきたから、この辺で根をあげとく。



「つまり、子供から老人までを何度も繰り返すんだね?」


「そうです。でも、老人になりたくなければ、身体の時戻しの頻度を上げることもできますよ?」


 なんだかすごいな。

 魔王だけ技術力が桁違いに高くて、神様みたいだ。

 なのにその魔王がなんと「雇われ人」だなんて、おかしな世界観だ。



「それでバランス調整って、どんなことをするの?」


「ルーイが知っている例で言えば、世界がディストピア側に傾きすぎた時に『時戻し』で戻すとか?」


「でも、それって、テーラ家の継承者が戻すじゃない?」


「魔王がその世界で暮らしていれば、魔王が直接『時戻し』を使うタイミングを決めてもよいのです。でもウィリアムは魔界の方が好きなので、こちらの世界に『王』を設置して、代行してもらうのです」


 なるほど。

 実際にテーラ紋の継承者は、どの世代も時を戻した後、世界が悪い方向に行かないように努力を重ねる。


 私の代だって、時戻し後には、二度の紛争と出兵を防ぎ、最終的な歴史では「不戦のテーラ」を維持している。


 ふむ。



「じゃぁ、アデルは魔界じゃなくて、こっちの世界に住み続けることもできるの?」


「できますよ。でも、身体を若返らせるたびに新しい身分を手配するのが面倒じゃありませんか?」


 確かに?

 魔王ウィリアムのお陰で、魔界では『タイムロードは、時々若返りする種族だ』と認知されているからその辺を気にしなくて良いのが楽だね。



「それにしても、外の世界って、どんな感じなんだろうね? カールとか行きたがりそうだよね?」


「外の世界のことは分かりませんが、この世界は外の世界にとっての古代遺跡だそうです」


「古代遺跡? ああ、なんとなくわかる。魔王だけ技術力が突出しているよね。魔王の技術が現代で、私達の技術は古代なんだろう?」


 古代遺跡に生まれ育った自分が原始人扱いされているようでモヤっとしなくもない。



「この世界には人間性や理性を試すための『試練』が無数に備わっていて、20年置きにランダムで実行される仕様があるので『古代の人間性の訓練施設』だったと推測されているそうです」


「そっか。管理者のウィリアムがこの世界の『試練』に巻き込まれるのを面倒くさがって魔界を作った気持ちが分かった気がする」


 夕食の支度が出来たと女官が呼びにきたので、アデルをエスコートしてダイニングに向かうことにした。


 アデルがいる暮らし、最高。

 こういう平穏に過ぎる日々の何でもない瞬間が大好きだ。


 それに目の前に楽しみしかないって、いいよね。


 来年は結婚して、そのうち子供が生まれるでしょ?

 前回3人だったから、今回も3人は欲しいな。


 まだ孫は生まれたことないから、孫の顔を見て、そして、アデルと一緒に千年のラブラブ魔界生活か。


 時戻し前には、アデルから魔界生活のプロポーズはしてもらえなかったから、時戻しして本当によかった!


 なんだかだで、私の場合、こうやってアデルと一緒にいる生活が続く限り、場所も時代もどこでもいいんだ。


 頭の中がお花畑?

 良く言われる。


 私は気にしてない。


 じゃぁ、君たちも、幸せに。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。


思う存分にごちゃごちゃした設定にできて、自己満足度が高い作品になりました。


次の作品からは、ごちゃごちゃを封印してスッキリ端的に書くよう努力します。

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