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カール3

 私達が5才の時、祖父母が毒殺された。


 父は北領に戻りたがらなかったが、伯父が領主一家の責務を果たそうと主張して、父を引きずるように北領に帰った。


 ダイアモンドは、少し遅れてフレデリック様とレイチェル様と共にオルト村に入った。


 オルト村は北領南東部に位置する最大の水源オルト湖のほとりで、水属性使いのフレデリック様とレイチェル様には、心地よく住んで貰える場所だろうと「ダイアモンド離宮」の候補地となった場所だった。


 帝国領の東の森を潤す小川の源流でもあり、帝室にとっても重要な意味を持つ場所でもある。


 ただ、フレデリック様とレイチェル様は、豪華な宮殿は好まず、自然のままに美しい村として維持したいと希望したので、大きめの屋敷を建てただけになった。


 ここに母方の祖父母を招いて、ダイアモンドの魔眼を閉じる修行をつけてもらうようになった。


 生まれた時から全開に開いていた魔眼を閉じられるようにするためだった。



 魔眼持ちには5段階ある。


 上位の魔眼持ちは、魔法オタクだったり、魔法の申し子だったりして、魔法使いとしての階級や権威には興味がないことが多く、それ以上の階層が作られていないともいう。


 だからダイアモンドがどのくらい凄い魔眼持ちかを表現するには、「生まれながらの最上位の魔眼持ち」と記すしかないが、とにかく常に全開が標準状態だった魔眼を閉じるための訓練を行った。


 週に一度のお泊りの日も再開され、アレクサンドリアに少し遅れてダイアモンドの雷魔法の訓練も始まった。


 三人で互いに雷を打ち合って、ビリビリしてゲラゲラと笑い転げた日々のことを思い出すと、今でも目に涙が溜まる。



「カール。溜まるだけじゃなくて、零れ落ちていますよ。拭って差し上げます」


「ダイアモンドだって、同じ、じゃないか……」


「サンデーは、魔法がヘタクソでしたね。ぐずっ」


「ああ。壊滅的だった」


「ふふふっ」


「くくくっ」


 三人で互いに雷を打ち合ったと言ったが、アレクサンドリアは雷の制御が壊滅的にヘタクソで、私達に命中できたことがなかった。


 私は年相応に正確で、ダイアモンドは雷の精霊かと思うほど正確無比だった。


 アレクサンドリアがあまりにも当てられないものだから私達の方で頑張って当たりに行ってあげた。

 雷は出が早いから、当たりに行くのは難しく、こっちの方がよっぽど良い訓練になった。

 

 三人で過ごした時間は、いつも楽しく、いつも笑っていた。



 **



 祖父の喪が明けた頃、東領の領主スミレ女公から、イースティア、ノーザンブリア両家の交流会が打診された。


 アレクサンドリアを惣領のシオン公子の妻に欲しいとの打診を何度も断った後だったので、一度、腰を据えて話し合う必要があった。


 しかし、この交流会は、大規模魔法戦闘に発展し、東領と北領の断絶を招いた。



「私はあの頃のことをよく覚えていないんだよ。教えてくれるか?」


「父様はシオンがアルバート陛下の子供だということを知っていました。時戻りに関係があるようです。ルーイとサンデーの婚約は、婚姻の当事者を他の兄弟に変えられるという補足事項がありましたので……」


「テーラ家の血を引いているシオンも、婚約の当事者となりえた?」


「事前に手紙で陛下に確認したところ、それならば契約の当事者をサンデーからわたくしに変更して、サンデーを婚約から解放することを提案されました」


「それで、君がサンデーと入れ替わっていたのか…… シオンは、イースティア=テーラとして表に出たから、これは書いても大丈夫だな」



 事前にアルバート陛下と父の間で、両家の婚約をシオン公子とダイアモンドに差し替え、アレクサンドリアを婚約から解放する方向で非公式な合意形成がなされ、ダイアモンドがアレクサンドリアに入れ替わってシオン公子に会った。


「私には父様がアレクサンドリアの幸せを優先したように見えた。反抗すべきだった」


「わたくしたちはまだ6才でした。反抗しても意味がなかったでしょう。それに父様が自分で育てたサンデーを優先するのは自然なことです」


「父様に聞いたよ。君、あの時、『わたくしは兄様と結婚します』と言ったそうだね」


「ふふふ。サンデーの真似をして一度言ってみたかったのです。大泣きしてしまいました」


「君はかわいいね。サンデーは舌打ちして、『なんてはしたない』と母上にガッツリ怒られて、大泣きしたらしい」


「ふふっ。サンデーっぽいですね?」


「で、シオンがかなり悪い状況に置かれていることが分かったんだね?」


「はい。シオンが日常的に毒を盛られていることが分かりました。父様はオルト村で待機していたパパにすぐに迎えに来てくれるように即信を出し、東領の滞在を伸ばして時間稼ぎをしたのですが、間に合わなかったのです」



 この時、シオン公子が日常的に毒を盛られていることが判明し、シオン公子の父方であるテーラ家による保護を要請した。


 しかし、帝室からの迎えが来る前に私とシオン公子は何らかの精神薬を飲まされて、狂化状態のまま魔法を暴発したことで、離れたところから様子を見ていたアレクサンドリアが洪水に飲まれて命を落とした。



「大規模魔法戦闘は、私とシオンの魔法だけだったのか?」


「ええ。二人だけで軍隊のような被害が出ました。わたくしはカールにしがみついて発動前の雷を出来るだけ吸収したのですが、途中で気を失ってしまいました」


「あの時…… あの時、私は君を殺してしまったのではないか?」

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