表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

第四話 赤い糸伝説

 城山玲子先生と俺たちは、赤坂駅の前で別れた。

俺、織畑正義と早乙女沙月は丸の内線の赤坂見附駅までの夜道を歩くことになった。


「正義さん、今日は色々ありがとうございます」

「いえいえ、俺の方が助けられていました」


「正義さんは、赤い糸伝説を信じますか」

「占いとか、スピリチュアルとか、わからないけどさ、

ーー 運命って、あるような気がするね」


「わたしも、運命的な出来事には興味があります」


 街灯に照らされた沙月の顔がお酒でも飲んだように赤くみえた。

正義は喉の渇きを覚えて躊躇いながら沙月に尋ねた。


「沙月さん、赤坂はお店も多いからちょっとお酒でも飲みませんか」

沙月は少し考える仕草をしたあと笑いながら正義を見上げた。


「わたしも喉が渇いていたのでそう思っていました」


 赤坂一ツ木通り(ひとつぎどおり)の途中にある居酒屋の暖簾(のれん)をくぐり二人は中に入る。


「沙月さん、今、二十一時だから、ちょっとだけにしよう」

「そうね、明日も仕事ですし」


 二人は、ビールと枝豆を注文した。


「じゃあ、とりあえず、沙月さんの赤坂デビューに乾杯」

「まあ、デビューなんて大袈裟ですね。乾杯」


「今朝の夢では、沙月さんが登場してね。

ーー 楼閣(ろうかく)で消えてしまったんですよ」

「まあ、わたしが、消えてしまうんですか」


「夢は、そこで終わっているから、その先は分からないけどね」

「でも、その夢、長崎なんですね。確か」


「今度の社員旅行と被りますが・・・・・・」

「デジャブかもしれないわ」

「デジャブって、俺、知らないけど」


「それはね、過去に経験したことがないのに

ーー 経験したような錯覚になることよ。

ーー 日本語では既視感(きしかん)とも呼ばれているの」


既視感(きしかん)って、どんな漢字ですか?」

(すで)にと書いて、()るは視力の()ね」


「なるほど、既にに見ている感覚か」


「人間の無意識はアカシックレコードに繋がっているのよ。

ーー そこには時間も存在しない映画のフィルムみたいなの。

ーー その一コマが今なのね」


「沙月さんって、詳しいんですね」

「女の子って、少女漫画から入って、

ーー 占い、スピリチュアルって流れが多いからね」


「俺なんか、最近はともかく、運動ばっかりしていたので全然ダメ」

 正義は照れ隠しに坊主頭(ぼうずあたま)をボリボリと()く。


「運動って何ですか」

「ハイキングとか登山ですよ」


「山、好きなんですか」

「ええ、ちょっとだけ」


「私も山に興味があるの」

「そうなんですか?」


「今度、連れて行ってもらえますか」

「初めてですか?」

「ええ」


「じゃあ、次の週末に登山ショップに寄りましょう」

「じゃ、正義さん、よろしくお願いしますね」


 正義は、名刺を取り出して携帯番号を書いて渡した。


「分かったわ、ここに連絡するのね」

「留守電あるから、俺に伝言残して」


「そうするわね」

「じゃあ、今夜はそろそろ退散しますか」


 二人は丸の内線の赤坂見附駅から四谷に出て別れた。


 週末、神田駿河台下の歩道を歩く、早乙女沙月(さおとめさつき)織畑正義(おりはたせいぎ)

双子の姉の紗央莉は用事で来られない。


 沙月はブルージーンズに水色のブラウス姿で、ポニーテールをしていた。

背丈は正義よりも低いが女性としては平均身長以上に見える。


 アイスクリームのような入道雲が遠くに湧き出ていた。

正義は空を見上げ(まぶ)しそうな表情をする。


「沙月さん、登山用品って、お金かかるけどいいんですか」

「OLって、みんな蓄えているから心配ないわよ」


「じゃ、今日は、ウエア、靴、靴下、帽子、リュックサック、手袋など最低限だね

ーー 水筒、コップも必要、忘れていた」

「沢山、あるわね。持てるかしら」


「大丈夫、俺が近くまで持って行くから」

「正義さんがいて助かるわ」


「さー、到着。ここなら何でもあるから」

「本当、登山用品のデパートみたいね」


 正義と沙月が店内に入ると空が急に暗くなって、雷鳴が(とどろ)き激しい雨が降り出した。


「通り雨だね。ゆっくり買い物しましょう」

織畑正義の言葉に早乙女沙月が微笑(ほほえ)んでいる。

 お読みいただき、ありがとうございます!

ブックマーク、評価を頂けると嬉しいです。

投稿後、追記と脱字を修正をする場合があります。

三日月未来(みかづきみらい)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ