飛びます飛びます!!
「無理無理!! こんな数を相手にするなんて無理だから!!」
レイは撤退を選択。さっきの不意討ちでまともに戦ったわけじゃないし、デビルドッグは前方に五匹まで増えたわけで、ここは後方に逃げるしかない。
「ふえっ!! 後ろにもとか卑怯じゃない」
けど、デビルドッグは後ろにも登場。何処から現れたんだ!? デビルドッグは威嚇なのか、『卑怯はお前だよ』とツッコミかのように全員が叫びを上げた。
「何だよ!! 責めるみたいに叫んじゃってさ。そんな風にするなら、私にも考えがあるから。来なさいよ!!」
レイは恐怖よりもデビルドッグ達に非難された事で怒り始めて、挑発。レイが考えた行動は……回転!? 回転斬りならぬ、回転打ち。俺を持ちながら回る事で攻防一体って事!!
「や、止めろ。壁に当たって……どんな状態か……分かって……ないだろ」
回転打ちをしながら前に進めたら良かったかもしれないが、フラフラと前後左右に動き、俺を壁にぶつける。その反動で別方向に移動して、更に俺がぶつかり……同じところをグルグル回るだけじゃなく、俺の頭蓋骨がどんどん凹んでいくんだけど!! しかも、デビルドッグも警戒してるのか、一匹も襲い掛かってこないし……
「うぅ……気持ち悪い。目が回って、吐きそうかも」
「はやっ!! 俺がボロボロになっただけなんだが」
レイの回転が弱まり、よろめいてきてる。知性がないデビルドッグの方が考えてる……というより、野生の勘? 放っておいても自爆すると分かっていたのかも。
「こうなったら、デビルドッグの攻撃が届かない高さまで浮くしか……って、離れていってないか? 俺の頭がスッポ抜けてるだと!!」
レイが何度も俺を壁にぶつけたせいか、【鉄骨】と頭蓋骨が外れて、あらぬ方向へ飛んでいく。その先にいるのは勿論デビルドッグの群れ。群れの中の一匹が大口を開けて、俺が中に入るのを待ってるんだけど!!
「ヤバイヤバイ!! 俺だけだとどうしようもない」
と思ったら、頭蓋骨のドクロの杖状態は継続していたのと、遠心力の勢いもあってから、デビルドッグの大口をぶち抜いてしまった。
「何とか無事……といっても、一匹倒しただけだとどうしようも……」
その後、俺はデビルドッグの群れの中に転がっていくだけ。しかも、【与骨】したわけじゃないのに、ドクロの杖→スケルトン(頭蓋骨)に変化する始末。ある意味でギリギリセーフだったわけだ。
「ないわけじゃない!! これは運でしかないかもしれないけど」
スケルトン(頭蓋骨)に戻り、その弱さに見向きもされない事を祈る……わけじゃないぞ。頭を潰したデビルドッグを【補骨】出来るんじゃないか? 少し屍肉が残ってるけど、【デビルドッグの骨】は十分見える。デビルドッグ達が共食いする前に『【補骨】しますか?』の表示が出てくれたら……
「来た!! 【了承】 【了承】 【了承】 【了承】!!」
時間が惜しいから、文字が表示されると分かった時点で【了承】を選択。この時点で表示されるとしたら、【補骨】しかないと思ったからだ。
けど、俺の目に映ったのは【与骨】……って、【与骨】!! 与えられる骨もないのに? レイが持ってる【鉄骨】を……ドクロの杖じゃなくなってるのに振り回してるのは凄くないか?
「じゃなくて!! 【与骨】はいいから、【補骨】させて……って、どうなってるんだ?」