レイの初戦闘(不意討ち)
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『いたいた。丁度一匹……暢気に欠伸をしてるわ。思った通り、私達の臭いに気付いてなさそうだし』
『気付いてないのは良いけど、お前がやった事は結構酷いからな』
レイが言っていた骨の臭いを消す……それは俺を地面に落ちてる腐った肉に浸けたり、謎の液体を浴びる方法を取ったわけだ。それを直接受けるんだから、臭いが本当に酷い。
『私も臭いのを持ってるんだから、お互い様だよ。デビルドッグやベルゼブを倒すためなんだから、我慢我慢』
一応、心の声で会話。監視用のハエがいてもおかしくないし、デビルドッグの耳に入るかもしれないからだ。
『それは分かってるけど……戦闘に慣れるためなのに、不意打ちをかまそうするのはどうなんだ?』
『ベルゼブと戦う前に極力怪我したくないでしょ。痛いのも嫌だし。上手く行けば、【デビルドッグの骨】も手に入るんじゃないの?』
確かに……クサイさんは自然治癒だけど、俺達はどうなんだ? それに【デビルドッグの骨】が手に入るのは嬉しいかも。
『抜き足、差し足……バレないように』
足といっても、レイに足はあるけど、宙に浮いてるからな。
『一撃で粉砕してあげるから』
レイがデビルドッグの目の前に立っても、相手は何の警戒もしない。レイは攻撃に勢いをつけるために振り上げる……振り上げる!?
「ちょっと待っ……」
デビルドッグに直撃するのは鉄骨部分じゃなくて、俺の頭蓋骨!! 頭蓋骨が鉄の色になったとしても、それが破壊されたらヤバいだろ!!
「わお~ん!!」
「うぎゃあああ!! ボキボキと骨が折れた音がするわ、臭いわ、変な感触がするわで、最悪なんだけど!!」
デビルドッグは断末魔の雄叫びと共に、俺の絶叫も。デビルドッグのブニョブニョの肉と骨を潰していく感じが何とも言えないぞ!!
「やった!! 一撃で倒せる、この威力。いけるかもしれないよね」
「いけるもなにも……『待ってくれ』と言おうとしたのに、止めなかったよな。俺の頭蓋骨が壊れる可能性もあるんだから」
デビルドッグを一撃で倒せる威力があったのは喜ばしい限りだけど、俺の頭蓋骨の負担が大きいだろ? それに威力がある分、【デビルドッグの骨】を粉砕する始末。今あるのは元デビルドッグの肉塊だ。
「大丈夫だよ。【装備品】なんでしょ? そんな簡単に壊れる事なんて……頭が少し凹んでるぐらいだから」
「凹んでる!? ひびが入るとか、欠けるとかじゃなく!! これは俺の体的に一体どうなんだ……駄目だろ!!」
今の状態は鉄の硬さという事で凹むだけで済んだのかも。あんな攻撃を連続でしようものなら、顔の形が変わるどころか、【装備品】から元に戻れないのでは?
「でも、丁寧に動かしても当たらないし、倒せないんじゃないの? 勢いが大事だと思うんだよね」
「うっ……一理ある。一応、単なる武器じゃなく、俺という事を忘れないでくれよ。【デビルドッグの骨】も欲しいんだからな」
「はいはい……次はデビルドッグじゃなくて、ゾンビかな。ゾンビも一撃で倒せるなら、相当なものかも」
次の標的はゾンビ……となるはずだったけど、予想外の事が起きてしまった。
「ガルルルル……」
その前にデビルドッグが再登場。断末魔の叫びが仲間を呼び寄せたのかもしれない。
「一撃で倒せると分かったんだから、一匹ぐらい怖く……」
「待て待て待て待て!!」
レイの声が止まるのも無理はない。一匹どころか、二匹三匹と、時間の経過でどんどん増えていく。しかも、何匹かはデビルドッグの肉塊を食べるという恐怖。