◯◯に進化?
「檻? これは鉄の棒だよね。地味に骨みたいな形をして繋げてあるみたいだけど、これも魔物の骨だったりするの?」
クサイさんが指差したのは俺じゃなく、牢屋の檻? 柵? 閉じ込めるための鉄の棒の事を言ってたみたいだ。俺は首を動かす事も出来ないから、レイに頭蓋骨の向きを変えてもらう必要があるわけで。
「違う。ただの道具。【鉄骨】と呼ばれてた事があるだけ」
「道具だと流石に無理があるんじゃ……頭の向きを変えて貰えると嬉しいんだけど」
「もう……いちいち面倒臭いな~」
レイは俺の頭蓋骨を檻の方に向けてくれた。そもそも、俺の右手を一体化させてるのはレイなんだが……
「仕方ないだろ……って!! いけるのかよ。骨と名前がつくなら何でもいけるのか?」
いや……違うか。『【補骨】しますか? 【了承/拒否】』が『【補骨】してみる? 【了承/拒否】』になってる。
『してみる?』となると、試しにやってみる? 感があるよな。魔物の骨以外に試す以外に考えてなかったとか。
「どっちみち、試してみるしか方法がないんだよな。普通の骨よりは固くて、強そうな気はするし」
頭蓋骨のままだとどうしようもない。レイも右手を返す素振りもないからな。流石に自分一人で動けるようにはなっておきたいからわけで……【了承】だ!!
「あっ!! ポン骨と【鉄骨】の一本が光に包まれて、一つに」
レイが説明をしてくれてるが、【鉄骨】だけじゃなく、俺自身も光を放ってるらしい。【鉄骨】の光が俺の元にやってきて……
ガランゴロンと音がしたけど、何も変化なし? 全く動けないぞ。それどころか地面に転がってないか? 念のために【ステータス】を確認してみよう。
【変化】
【種族】 スケルトン→【装備品】 ドクロの杖
力 +30
耐久 +20
速さ -5
重さ 10
……【装備品】!! 【ステータス】のパラメーターからHPとMPも消えて、俺自身がドクロの杖という道具扱いになったのか? 道理で動けないはずだよ。
【能力】は消えてないから一安心。【与骨】で【鉄骨】を取り外すべきなのか? レイとクサイさんでは何とも言えないし。【鉄骨】はまだ残ってるから、追加で【補骨】すれば、【装備品】からの脱却も……
『同じ骨を【補骨】するためにはランクが足りません。必要 【補骨C】以上』と表示された。
「どうやら、武器になったみたいだ。この状態だとどうしようもないから」
「一応武器なんだね。頭に鉄棒が刺さっただけだから、何とも言えなくて。頭蓋骨も鉄の色をしてるから、結構硬くなっていて、強くなってかも。これで寝込みのベルゼブを叩けばいいんじゃない?」
確かに……力+30は大きいかも。【ゾンビの骨】だと+4だったし。他のパラメーターを考慮して、【デビルドッグの骨】を【補骨】したとしても、これ以下の可能性もある。
「練習。私達は戦闘皆無だぞ」
そう言われたら……俺の生前はどうだったんだ? 【装備品】だからどうしようもないが、そんな状態で大丈夫か?
クサイさんは俺を【装備品】として、持ち上げようとした。すると、クサイさんの腕が抜け落ちた。体が腐った状態だから、俺の重さに耐えられなかった? パラメーターにあったのはそういう事!!
「大丈夫なのか!!手が落ちたぞ。」
「大丈夫だ。問題ない。唾をつけとけば治る」
いやいや、苦悶の表情を浮かべてるから!! 汗も凄くて、臭いが漏れてるぞ。
「クサイさんは大丈夫だよ。何度か私もクサイさんの体をやっちゃった事があるから」
レイもそれを簡単に言うべきじゃないと思うんだけど、何度も経験があるなら大丈夫なのか?
「クサイさんが持てないなら、私が持つしかないんだよね」
嫌嫌するみたいな感じなのはやめてくれ。クサイさんみたいに腕が外れるわけでもないんだから。
「あれ? 全然持てるんだけど……クサイさんよりも力があるのかも!!」
それは俺の右手と一体化してる事が理由かも。一応、体の一部なわけだし。もしくは、レイは幽霊だから重さを感じないとか。
「まぁ……装備が出来たのはなりよりだ。武器……俺に慣れるためなら……デビルドッグやゾンビと戦うのか?」
武器を持っただけで、デビルドッグと戦うのはどうなんだ? クサイさんを見る限り、ゾンビを相手にした方がいいかもしれない。
「う~ん……デビルドッグ一匹だけ。デビルドッグよりもゾンビの方が強いから。強さ的にゾンビ>デビルドッグ>クサイさん>私>ポン骨の順かな」
デビルドッグよりもゾンビの方が強いと言いながら、クサイさんの方が弱い……というか、俺達三人が最弱を独占してるのかよ。それでベルゼブに挑むのは無謀じゃないか?
「でも、ポン骨が武器になった事で強さの順は変わるかも。そのためにもまずはデビルドッグ一匹だよ。クサイさんは治療に専念しておいてね」
クサイさんの腕がもげてしまったから仕方ないけど、何も考えなしに挑んだら、敗北確定なのでは?
「デビルドッグ一匹といっても、骨の臭いに集まってくるんじゃないか? 俺を犠牲にするのはなしだぞ」
「そこは安心してよ。ちゃんと考えてるから。要は臭いを消せばいいんだから」
レイも一応対策は考えてたみたいだ。それを信じてもいいかは話は別なんだけど……
「それでは、デビルドッグを倒しに行くよ!!」
「……おい!! 杖の持ち方を考えてくれ。地面に頭が擦れてるよ!!」
重さを感じないといいながら、俺の頭を雑に地面に引き摺っていくのは止めてくれ。