挑発合戦
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「ハァ……折角、出入口を解放してやったのに、来るんじゃないよ。しかも、人数も減ってないし、どんな裏技を使ったんだ? あの像達はどうしようもないだろ」
アクアマンが待つ最下層。大きな広間の中央には円を描いた舞台、その周囲を大量の水が溢れている。その舞台へ渡る橋が二つ。奥にあるのはアクアマンの部屋であり……ベルゼブ城みたいに転移装置が用意されているのかもしれない。
「私達が知るわけないんだけど? アンタが解除してないなら、守護者達はアンタを倒して貰いたいと思ってるのかもよ」
「そんな挑発するという事は、魔王候補を【譲渡】するつもりはないんだろうな。像達も見る目がないわ。お前達の攻撃は俺には一切効かないのに」
レイの挑発に、アクアマンも仕返してくる。
アクアマンは舞台の上で待ち構えている。目や耳、口なしの人型。アクアマンの体を通り抜けて、あちらの壁が見えるのも、体が水で形成されているから。
かおリンの体質に似ており、物理攻撃は有効打にはならず、魔力を伴った攻撃が効果的。
勿論、これはかおリンからの情報。魔王候補は名前が知られている以上、ある程度調べる事は可能らしい。つまり、ガラーク戦を覗き見ていたアクアマンからすれば、俺達の攻撃は自分には通用しないと分かってるわけだ。
「余裕ぶってるのは良いけど、俺達は裏技を使うんだろ? 他に攻撃手段を用意してるかもしれないぞ」
レイに続いて、俺もアクアマンを挑発。というのも、この場にいるのは俺、レイ、クサイさんの三人。かおリンは広間に入ってきてない。
挑発を続ける事で、アクアマンに他のところに意識を行かせないようにしてから、かおリンに忍び込んでもらう作戦だ。
かおリンは【火の息】や魔力を持つ【能力】を所持してるみたいだから、不意討ちにはもってこいだ。
「そこまで言うなら仕方ない。舞台に来いよ。俺の得意なフィールドだからって、文句はなしだからな」
アクアマンの言葉に応じて、俺とクサイは舞台の方へ。
「……お前は一緒じゃないのか? 手下の二人に任せるなんて、余裕だな」
「そっちも少しは戦闘で疲れて貰わないとね」
「ヤル気のない魔王候補なんて、俺とクサイさんの二人で十分だろ」
レイがアクアマン戦に参加しないわけではなく、【ポルターガイスト】による遠距離からの攻撃をさせるため。それはガナーク戦でも見せたが、挑発がどう転ぶか……これもかおリンに目を向けさせないため、俺とクサイさん、レイに意識を分散させるための一つ。
「そんなヤル気のない奴に、お前達はやられるわけだけどな」
俺とクサイさんが橋を渡る途中、水の中から波のような刃が向けられた。それは僅かながらに外れた……外したようだけど、【能力】の一つを見せた時点で嘗めてる証拠だ。
『無事に難所から逃れながらも、早々に再度魔王候補に挑むとは……貴方達は面白い方達だ』
俺達が舞台に立ったところで、広間に聞き覚えのある声が響き渡る。
『魔王候補を掛けての戦闘……管理者として見届けさせてもらいましょう』
魔王候補争奪戦の管理者であり、魔王の一人。魔眼のセンリの声で間違いない。




