お尻が割れてしまう
「ちょっと!! ポン骨もしっかりしてよね」
「そこは俺じゃなくて、クサイさん……でもなくて、レイが考えなしに宝箱を開けたからだろ」
レイは俺とクサイさんを引っ張る事で、落下スピードが少しでも軽減。高さ次第で、クサイさんがグロい状態になっててもおかしくなかった。
「えっ!! 手を離して欲しいの? 私もしんどい事はしたくないし」
「すまない。私のせいだ」
「じょ、冗談だからね。私も悪かったし、ポン骨もそう……みんなが悪かったんだから」
クサイさんが謝ると、レイも慌てるように否定した。実際、俺やクサイさんは悪くないんだけど……
「おっ!! あそこに明かりが……俺も翼を使うから、クサイさんは抱き締めるのを止めてくれ」
落下の先、横から明かりが漏れているのは、壁が崩れているからなのでは? 少しでも落下速度を落として、そこに飛び込むべき。クサイさんの体が震えているのは、レイの支えてる力が限界に近いせいだろう。
「私も【鉄骨】を使う。少しで引っ掛かる事が出来れば」
落とし穴の幅はそれ程広くない。クサイさんの両手両足を横に伸ばせば届くかもしれないが、クサイさんの腐った四肢は取れてしまうと思う。
だが、お尻を突き出して、【鉄骨】を利用すれば大丈夫だとクサイさんは考えてくれたようだけど……
「止めろ。お尻が完全に割れてしまうぞ」
下手したら、クサイさんの体が縦に真っ二つになりかねない。
「ププッ!! ちょっと……必死な場面で笑わすのは止めてよ。思うように力が入らないでしょ」
素直な言葉が出てしまっただけなんだが、レイの笑いのツボに入ったらしく、一気に落下速度が上がった。
「このままでは」
クサイさんがお尻を突き出す動きをすると、レイが更に笑ってしまう。
「だから!! そんな事しなくても大丈夫なんだって」
レイは笑いながらも、【ポルターガイスト】を使用して、俺を動かした。ガナーク戦の時と同じだ。クサイさんの重さがあっても、ほんの僅かな動きで壁の穴に飛び込めると踏んでいたんだろう。
「ふぅ……腕がそろそろ限界だったから、丁度良かったんだけど……これはどう見ても隠し部屋って感じよね」
俺達は無事に横穴に入る事に成功したが、そこが部屋なのは確かだが、ドア等の別の場所に行く方法が見当たらない。つまり、この落とし穴に嵌まってないと、入れない場所になる。
「だな。隠し部屋……というよりも、祭壇? こんな場所に置いてるあるとか、不気味過ぎないか」
「骨なら分かるけどね。ベルゼブ城では頭蓋骨が落ちてたわけだし」
「俺じゃないか!! けど、あれは……魔物なわけじゃないだろ。素材にしても生々しいというか」
その隠し部屋には祭壇のような物が配置されていた。しかも、何かの左腕が置かれている。腐ってるわけでもなく、造られた感じもしない。形としてはレイやサタリアのような……男よりも女の……人型の腕だ。
落下中に見たのは部屋の明かりというより、その左腕が光を帯びていた。
「流石にかおリンもこんなのがあるなんて知らないだろうな……というか、アクアマンでもそうかも」
かおリンは様々な【能力】を求めてるから、謎の左腕にも手を出してるはず。それは魔王候補のアクアマンも一緒だと思う。俺から見ても、それには不思議な力が宿ってるのが分かる。




