巧妙な罠
「…………」
レイの体が固まって……いや、フルフルと小刻みに震えてる。宝箱が魔物だった……わけでもなさそうだし、誰かが先に中身を取っていたのか?
「先に中身を取られてたのか? 俺達以外でもこの道を見つけた魔物がいたんだろ?」
俺はレイの背中越しから宝箱を確認してみた。中身は空っぽじゃなく、一枚の紙切れ。そこには『ハズレ!!(笑)』という文字が。
「何が書いてるのか分からないけど、絶対馬鹿にされてるでしょ!!」
「魔文字じゃないな」
確かに街にあった文字とは違う。クサイさん曰く、魔文字(魔界で使われる文字の事か?)ではないみたいだ。何故か、俺はそれを読む事が出来るんだけど……
こんな事をするのは……サタリアか? けど、このためだけにベルゼブ城から、この付近に転移させたなんて事は……サタリアならやりかねない。理由なんて簡単だ。面白そうだからで片付いてしまう。
「……罠じゃなかっただけでも良かったと思うしかないな」
「どう見ても罠でしょ。期待させてのこれなんだから。まだ落とし穴とかの方がましだよ」
俺も若干期待したところがあったから、否定は出来ないけど、俺が最初に宝箱を開けてたら、あんな風に怒ってたのかも。レイはハズレの紙切れを取り、ビリビリに破いてしまった。
「ん? 紙の下に何か書いてるぞ」
「えっ!! あの紙はそれを隠すための物だったわけね」
クサイさんは紙が置いてあった場所の下に、何か書いているのを発見した。レイは怒りを抑えて、何が書かれているのかを見た……といっても、あの文字を読む事が出来ないんじゃなかったか?
『上を見なさい』
そんな文字が書かれていて、読めないはずなのに、レイは自然と顔を上に向け、クサイさんもその真似をする。
「もしかして、この文字を少し理解してるんじゃ……」
俺も視線を上に向けると、そこにあったのは俺達自身を映し出す鏡。そして、その鏡にも文字が。
『馬鹿が見てるわね』
二段階に分けての罠というより、イタズラ!? 馬鹿な俺達自身の姿を見せるために、鏡まで用意してあるのはちょっと……
「本当に何なの!! 私達はそんな魔物じゃないんだから」
レイも馬鹿にされたのは分かっているが、少し勘違いしている。文字は読めてるけど、感覚だけで理解してない? 本当の意味を教えても、余計に怒るだけだろう。
「あっ……」
『上を見なさい』にはちゃんと意味があった。スイッチとなったのは俺達全員が上を見た事だったのか……宝箱の目の前、俺達がいる場所の床が開いた。所謂、落とし穴だな。ここだけが特殊な仕掛けだったんだろう。
俺とレイは飛んでるから問題なかったけど、クサイさんはどうしようもなく……手を伸ばす。
「そこは俺じゃなくて、レイの方だろ!!」
クサイさんが伸ばした手の先にあったのは俺で、しがみつこうとした。クサイさん+【鉄骨】の重さに耐えきれるわけがなく、俺はクサイさんに抱き付かれるまま、落下に付き合わされるはめに……




