嘘は言ってない
「せめて、コイツがかおリンが持ち帰ってきた、【ガナークの骨】になってくれたら良いんだけど……」
ガラークは死体のまま。ベルゼブの時みたいに消失する事も、バッドみたいに素材へ変化する事もない。素材を落とさない事もあるのは分かってるけど……
『はぁ……面倒臭い』
「だね。ガラークを倒しただけで満足だよ……あれ? ポン骨やクサイさんの声じゃない?」
「俺達の声じゃないぞ。鶏冠カエサルでもないよな? それに……死体から聞こえたような……」
ガラークの死体から声が響いてきたような……実は倒しきれてないのか!?
『ガラークを倒した事で満足したなら、帰って欲しいんだけど。今日の挑戦は終わったのに、裏技を使うなんて卑怯だと思わない?』
魔王センリみたいな遠くからの通話? 会話の中身を考えると……
「アクアマンか? 魔王センリみたいな事を」
『正解。センリ様みたいな事は出来ないよ。上が五月蝿いのが分かったからさ。ガラークを媒体にしてね。ここまで弱まってると、すぐに死ぬだろうけど』
という事は、俺達がガラークにトドメを刺したわけじゃなくて、アクアマンがガラークの体に割り込んできたからか!?
『けど、魔王候補も一緒に来てるようだし。そこの幽霊がベルゼブを倒したのかな。次に狙いをつけたのが僕というわけだよね?』
魔王センリの言葉通り、魔王候補同士であれば、刻印を隠したとしてもバレてしまう。ガナーク越しからでも、レイが魔王候補だと判断出来たみたいだ。だとすれば、アクアマンの不意を付く事で有利に進めるのは無理になったぞ。
「別にそういうわけじゃなく、ここに来たのは偶然なんだけど……魔王候補に興味があるわけでもないし」
『えっ!! 魔王候補に興味がなく、このダンジョンに来たのも偶然……確かに入口は閉じてるはずだから、別の場所からここに繋がる道があって?』
「うむ……確かに嘘は言ってないぞ」
クサイさんもレイの言葉に頷いている。確かに本当の事を言ってるんだよな。ここ=ダンジョンじゃなく、魔王カオスールが支配している場所なわけで、偶然にも魔法陣の移動先がここだっただけ。魔王候補になりたいのは俺であって、レイじゃないわけだし……
『本当か!! なら、出入口を開けるから、そのまま退散して貰えると助かる。出来る限り、戦いたくないんだよ』
なんだろう……ここまでヤル気がないのか? ただの引きこもりの魔王候補だろ。レイ達よりも酷いかもしれない。普通なら、魔法候補ならその資格を奪い取ろうとするはずじゃないか?
『まぁ……魔王候補の資格を譲りたいというなら、貰ってあげてもいいけど』
魔王候補同士、資格譲渡の事はアクアマンも知ってるみたいだ。それが魔王候補ベルゼブを倒したレイしか無理な事も。
「残念だけど……一応、渡す相手は決まってるから。帰ってもいいなら、野良魔物とか罠はなしがいいかも」
『資格を譲渡するにしても、僕に会いに行くしかないわけだから、疑うよね。そこは仕方ないか。野良や罠が動かないようにしておくから』
と、アクアマンはレイの言葉を信じたのか、アクアマンとの通話が切れ、ガナークの体も消滅してしまった。素材は……ない。




