残念な結果になりました
「ポン骨です。ベルゼブ……様に忠誠を誓います」
これでいいんだろうか? 下手に長文にするとボロが出そうだし……
『うんうん!! 上出来だよ。すぐに返事をしなかったのは、ベルゼブの暗示が効かなかったんだよね……って、ポン骨の心の声が聴こえてる!!』
『それは俺もだから……嘘でも忠誠を誓えと思っただろ?』
『そうそう……って、今はベルゼブに集中しないと』
レイが俺の思った事に返事をしてるから、互いに心の声が聞こえているみたいだ。レイがベルゼブに様を付けないのは、何かしら思っているのかもしれないな。
「よろしいでちゅ。返事が遅くて、少し焦りましちゃが、大丈夫なようでちゅ。忠誠を誓ったところで、骨を与えたらいいんでちゅね。今ある骨は食べ終わりのこれだけでちゅ。どちらかを選ぶでちゅ」
語尾が『ちゅちゅちゅちゅ』と五月蝿いと思うのは俺だけなんだろうか? ベルゼブが用意……玉座の近くで放置されてるのは【ゾンビの両手の骨(掌)】と【首なしデビルドッグの骨】だよな? どちらにしても【黄金の骨】より強くなるわけでもない……体がきちんとあるデビルドッグの骨がまだ良い方か? そのまま俺の頭とデビルドッグの体が繋がるのを考えるとシュールな姿になるぞ。
「【ゾンビの骨】でお願いします」
「って!! レイが決めるのかよ!! 俺がちゃんと決めるから」
ベルゼブの前なのに、思わずレイにツッコミを入れてしまった。両手だけ手に入れてどうするんだ? もしかして、俺の意思で自由に浮かせたり出来るのか? いやいや!! それだと頭蓋骨だけでも移動可能になるはずだ。
「……どっちにするんでちゅ。早くしないと無しにしまちゅよ」
「す、すみません」
ベルゼブはすぐ決めない事に業を煮やしたのかも。けど、【補骨】するにもどうしたら……と思ったら、【ステータス】を確認するみたいに、『【補骨】しますか?』という文字が出現した。勿論、これはレイやベルゼブにも見えてないはず。
【ゾンビの骨】と【デビルドッグの骨】の選択肢。そこから 【了承/拒否】を選ぶみたいだ。けど、その結果がどうなるかまでは表示されていない。【補骨】してからのお楽しみ……強化だけじゃなく、劣化するとも説明されてたからな。
『手の方がいいな~』
レイは【ゾンビの骨】の方が良いと、心の声の方で訴えてくる。俺自身で決めると言ったけど、レイには助けて貰った恩がある。それに【ゾンビの骨】を選ぶ事で何か考えがあるのかもしれない。
「【ゾンビの骨】の方でお願いします」
それはベルゼブに答えたのもあるけど、【補骨】で【ゾンビの骨】を選んだ事にもなった。それによって【ゾンビの骨】は一時的に光を放ち、俺の方へ……来なかった。一体化するわけでなく……
「……手だけが動いてる」
俺の意思で手が虫のように這っている。勿論、宙に浮くわけもない。ジャンプは出来そうな気もするけど、着地でバラける気がするぞ。
【追加】
力 +4
魔力 +2
器用さ +4
【ゾンビの骨】で上がったパラメーターも表示されたけど、【能力】はないみたいだ。【速度】が0なのは手は動くけど、本体である頭蓋骨は動けないからか?
「残念でちゅが……僕は眠りにつきまちゅ。起きるまでの間はレイと一緒に行動してくだちゃい。強くなる事を祈ってまちゅよ」
ベルゼブは俺を憐れみながらも、玉座の奥にある部屋に移動する。同情するなら骨をくれ!! 【デビルドッグの骨】も律儀に消さなくても良いのに……
「ゴメンね。【デビルドッグの骨】の方が良かったかな」
「いや……俺が選んだわけだから。けど、レイは何で【ゾンビの骨】の方が良かったんだ? 何か考えがあったとか」
レイは謝ってきたけど、これは仕方ない。どんな風になるかは予想出来なかったわけだから。
「えっと……もしかしたら、ポン骨の物になったら大丈夫なのかな? と思って。デビルドッグもポン骨の骨で変化したのを見たから」
デビルドッグは【黄金の骨】を食べて、姿が変化したのなら、 それは自動的に発動した【与骨】の効果なのかも。だとしても、幽霊のレイには無関係なのでは……
「やった!! 大丈夫みたい。これで色んな物に触れる事が出来るよ」
「……へっ? 俺の右手の骨は?」
【補骨】した俺の右手の骨とレイの右手が重なるとあら不思議、俺の右手の骨を動かす感覚どころか、何処かに消えてしまった。それだけじゃなく、レイの右手が壁をすり抜けなくなってないか?
「私の右手と一体化……装備してる感じかな。別ので一度試した事があったんだけど、その時は無理だったの」
「って、おい!! それが理由かよ。俺を動けるようにするためじゃなくて!?」
「そのつもりもあったんだけど、提供された骨を見て、つい……ちゃんと理由はあるんだよ。それもきちんと説明するから、場所を移動しようよ」
物を触れる以外に理由が……心の声でベルゼブと様をつけてなかった事も関係するのか? 暗示が効かなかった事にも喜んでいたようだし……
「はぁ……この状態だとレイに頼るしかなさそうだし、ちゃんと説明してくれよ」
レイが俺の右手を【与骨】したのかと思いきや、パラメーターに変動はなかった。それはレイの意思で取り外しが可能だからなのかは分からない。
「勿論だよ。私だけじゃなく、ポン骨のためにもなるんだから。ついでに左手も一体化させてね。その方が持ち運びが楽だから」
「それだと【補骨】した意味が」
「完成!! それじゃあ、私の部屋にレッツゴー!!」
俺の言葉はレイには届かず、左手も一体化させてしまった。そのせいで俺はさっきと変わらず、頭蓋骨のまま。【補骨】して強化した意味が……じゃなくて、レイの部屋だと!!