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「強くなるためには犠牲がつきものだから。そっちの準備も出来たみたいだし、出発するわよ」
「……何処に?」
かおリンの説明はいつの間にか終わっていて、俺とクサイさんは目的地が何処なのかも分からない。
「何言ってるのよ。アクアマンがいるダンジョンに決まってるでしょ」
「いや……そのダンジョンに入るためには登録書が必要なんだろ? それを手に入れるためには街に入らないと駄目なわけで……」
街に毒を撒き散らした結果、俺達は出禁になったはず。流石に昨日今日で解禁はされないだろ? 本当はかおリンも追われてたはずで、犯罪者パーティーに登録書を渡すとも思えないし……
「話を全然聞いてなかったの? 正攻法ではいかないんだから」
「さっきの俺とクサイさんの状況になったら、話に集中出来ないからな」
レイは自信満々に言ってくるけど、『正攻法』という言葉は聞いたぞ。
「それでも少しは聞いてたぞ。ダンジョンには門番がいて、倒してしまうと入口が閉じてしまうんだろ? それに一日に一つのパーティーしか無理じゃなかったか?」
「そうね。今日のパーティーも決まってるわ。今頃、ダンジョンを攻略してると思うわよ」
「なら、ダンジョンに入るのは無理じゃないか?」
パーティーメンバーのふりをして、中に入る程甘くないはず。
「入口が一つならね。他にも隠された道があるのよ。そこから戻ってきたわけだし。下手したら、アクアマンを倒す以外に二度と戻ってこれない仕組みもあるのよ」
「それはパーティーを分断する時みたいだよ。太郎が生き残ってるのも、最初に別れたからなんじゃないかな? その分断も、かおリンが対策方法を考えてるから」
「レイがいたら問題ないって話だったよな? という事は、壁をすり抜けるのが重要な感じか」
誰かがダンジョンを進めためのスイッチを押しておかないと、通れない道があるのかも。レイのすり抜けがあれば、スイッチを押した後でも合流出来るわけだしな。
「そんな感じね。他にも危険な場所は三ヶ所あるわね。隠し通路の入口がそうなんだけど、そこまで案内するわ」
かおリンを先頭に、【茸の森】の中を進んでいく。その方向には街がある。かおリン曰く、アクアマンのダンジョンは街の中にあるらしい。
「といっても、街の中に入るわけじゃないから」
街を囲う柵が見えたところで、入口の反対側に行くために遠回りの道を行く。その途中で幾つかの井戸が設置されている。勿論、水を手に入れるためにも、街の中にもあった気もする。
「実はこの井戸がダンジョンの隠し通路になるわ。アクアマンは水を使用した攻撃が得意だから、ダンジョンには至るところで水路が引かれてるのよ」
「だから、クサイさんが蛙みたいな感じになったのを喜んでたのか? 井戸の中に飛び込むって事は、泳ぎが必要になるわけだから」
ついでに言うなら、【ガナークの骨】によって手に入れた【水泳】もそうなんだろうな。といっても、底が全く見えないんだが……この中に飛び降りるのは相当勇気がいるぞ。
「そういう事。途中で分岐があって、上上下下左右左右の順番で穴に 移動するのよ。そうしたら、階層を少しスキップ出来ようになるわ。道を覚えられそうにないなら、私が先に行くから」
かおリンは躊躇する事なく、井戸の中に飛び込んだ。それに続けとばかりにクサイさんもジャンプ。
「飛び込むのに、少しは心の整理が必要だろ。あまりの高さで死んでしまうかもしれないのに」
「私達は死んでるから大丈夫でしょ。持ち上げて欲しいなら、そう言えばいいのに」
「馬鹿!! 俺はそんな振りをしたわけじゃなくて」
そう叫んだ時点で、レイは俺を井戸へと投げ棄てた。




