クサイ七変化
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「はぁ……よく寝た。慣れない事をすると疲れるよな」
俺達はかおリンがダンジョンから戻ってくるのを待つため、ベルゼブ城から転移してきた廃屋へと戻った。その道のりで、野良魔物達と遭遇する場面はあったけど、かおリンが暴れているのを覚えてるのか、襲い掛かってくる事はなかった。
ただ、俺の場合、翼で移動するのは結構しんどく、いつもならレイが運んでくれたんだけど、筋肉があるクサイさんが運ぶ事に……
「クサイさんはよく眠れたのか? 外で寝てたから、野良魔物に何処か食べられたりは……って、大丈夫か!!」
俺やレイ、クサイさんは死霊系なんだけど、睡眠を取る事も出来る。野良魔物を警戒して、廃屋の中で寝た方が良いんだけど、クサイさんが男女別と紳士的な提案して、レイが廃屋で休む事に。俺とクサイさんは外で寝たわけなんだけど……
「問題ない。効果が切れただけだ」
「いや……問題はあると思うんだが……」
【ミノタウロスの肉】で筋肉クサイになってたのに、それが萎んだ形になっていた。以前よりも細くなり、爺さんみたいにヨボヨボだ。【ミノタウロスの肉】は一時的な強化であって、反動として、筋肉が激減するみたいだ。
「ん……どうしたの? クサイさんが細く見えるんだけど」
俺が驚いた声を出した事もあって、寝惚け眼でレイが起きてきた。それも壁から半分体をすり抜けた状態だ。
「【ミノタウロスの肉】の効果が切れたらしい。その反動で細くなったみたいだけど」
「……えっ!! 私の【能力】も消えたりなんかは」
レイは俺の方へ両手を向けて、【ポルターガイスト】を発動させる。
「う、浮いてる!! 俺で試すのは止めてくれ!!」
石ころとか茸とか落ちてる物は色々あるのに、俺で試さなくてもいいだろ……変に落ちて、翼部分を骨折させるのは嫌だからな。
「ゴメンゴメン……けど、【能力】が消えてなくて良かったよ。問題はクサイさんの体が戻るかだよね。かおリンが来るまでに治ればいいんだけど」
クサイさんには……いや、魔物には自然治癒がある。ミノタウロスやオークの身売り販売はそういう事だろう。
「魔力のある物や肉を食べたら回復が早くなる」
肉は持ち合わせてないし、近いのは【肉厚茸】ぐらい。魔力のある物を【茸の森】に探しにいかないと駄目かもしれない。
「これでなんとかなる」
クサイさんが掴んだのはかおリンの欠片。俺達と合流するために渡してくれた物だ。このスライムから連絡が取れたらいいんだけど、そんな力は備わってないみたいだ。とはいえ、かおリンの一部だから、クサイさんを回復するぐらいの魔力はあるのかも……
「いやいや!! 駄目だろ。かおリンから協力してもらえなくなるぞ」
「……そこは面白さでカバー出来ないか?」
クサイさんはミニスライムが美味しそうに見えたのか、未練タラタラだ。魔物が面白さを重要視するのであれば、それもありなのか?
「一度は食べられてみたかったの……なんて、言うわけないでしょ!!」
ミニスライムが弱ってるクサイさんの手を振りほどき、元にいる場所に戻っていく。
「かおリンだ!! 無事に戻ってきたんだね。アクアマンのいるダンジョンはどうだった? そのパーティーで倒したりとか……」
「ないない。弱いパーティーだったから、アクアマンがいる場所まで辿り着けずに全滅したんじゃない? 分断時に取り残されてる魔物もいるだろうし」
アクアマンがいる場所まで辿り着けずに全滅……って、余程の罠があるか、強い部下がいるんじゃないのか?
「でも、そこまで深刻な話じゃないよ。対策は少し考えてるし、正攻法で行くつもりもないから」
かおリンは意味深な言葉を口にしたけど、『正攻法で行くつもりはないから』って、どういう事だ?
「取り敢えず、お土産があるから、ポン骨とクサイさんは、それで【強化】すればいいんじゃない?」
かおリンの【収納】から出てきたのは大量の肉と……骨!! 昨日の【蝙蝠の骨】に続いて、新しい骨を持ち帰ってきてくれたのか!? それにクサイさんの回復に肉が必要だったから、滅茶苦茶助かる。
「ポン骨とクサイさんにはお土産があるのに、私にはないの?」
「レイには止めといた方がいいのだから」
それを聞いてしまうと、【補骨】もそうだし、クサイはんも得体のしれない肉が食べ辛くなるだろ……




