腐った×××
ー2ー
「おおっ!! 魔界の空は紅いんだな。空気も重く感じるし、臭いも独特だぞ。それにあの黒い穴は……人間界に繋がるという出入口か?」
記憶がないせいもあるのか、初めて魔界の空を見る。紅い空、その中に黒い穴のような物が二つある。その一つが人間界に通じる穴なのかもしれない。
「私も記憶がないから全然。この紅い空は時間経過で紅から紫、青、最後に白に変わるんだから。それが一日のサイクルみたい。クサイさんに聞いた」
街の誰かに聴いたんじゃなくて、クサイさんなのかよ!!
「その時間で魔物の強さが変わる時がある。この森の魔物は比較的大人しい」
時間帯によって、強さが変わる魔物もいるのか……これが常識なのか分からないけど、クサイさんの知識は勉強になるな。
「クサイさんの足の速さを考えると、空が紫に変わるかも。寄り道せずに、ちゃんとした道を進まないと……変に動いたら、迷子になるんだから」
その言い方だと、レイが迷子になった事を教えてるようなもんだけどな。街を見つけたのも偶然なのかも。
「ほら!! 色んな魔物がいるでしょ。今のところ、私達に襲い掛かってこないんだけど、危険な奴もいるから注意してね」
【茸の森】は木々が多く茂ってるのもあるが、それよりも巨大茸の方が生えてるのが多いかもしれない。
そこには足の生えた茸が歩いたり、監視ハエのような虫を食べてる茸、変な臭いを醸し出してる茸もある。その全部の茸は魔物なんだろうな。
「野良だな。倒しても自然発生する。知性はなし。素材、売り物になる」
「野良? デビルドッグみたいなものかな。売り物は分かる気がするけど、素材って何だ?」
ベルゼブ城にいたデビルドッグやゾンビみたいなのが野良なんだろうな。じゃないと、ベルゼブが食べてばかりで減る一方だし、ベルゼブは暗示で野良を使役していたんだろうな。
「進化。ポン骨がドクロの杖になったのと同じ。色んな物を取り入れて、強くなる。進化素材」
「【補骨】みたいな事がレイやクサイさんにも出来るって事か?」
「そうだ。だが、同じ種族でも進化する素材は千差万別。どんな物になるかも不明。戦闘だけで進化する者もいるぞ」
クサイさんは器用に尻に刺さった【鉄骨】を上げて、食虫茸を一刺し。デビルドッグ達よりも茸の魔物達は弱いのかも。そこから茸を真っ二つに割って、口の中に!?
「まさか……クサイさんはその茸を食べたら、進化する事を知って……大丈夫なのか!? 逆に乗っ取られてなんかないよな!!」
「ちょっと……失敗とかあるなら、私は進化とかしなくていいかも」
クサイさんが食虫茸を食べた結果、頭のてっぺんや腕とかに謎の茸が生えてきた。食虫茸がクサイさんを侵食してるとも取れるし、進化失敗の反動か? レイが嫌がるのも無理ないかも。俺がドクロの杖になるところも見てるわけだし。
「茸を取る。腹の中から吐き出す。それで問題ない。進化に失敗しただけ。これも素材になる。新しい【能力】を試すか?」
【収納】を試す……クサイさんに生えてる【謎茸】より、食中茸の方が良かった。食べるわけじゃないけど、口の中に入れる事に抵抗があるというか……
クサイさんは言葉通り、自身に生えた茸をもぎ取った。それ良い。それは良いんだ……けど、『腹の中から吐き出す』というのは尻から……鉄骨の中が空洞になっているのか、それを通って【腐った×××】が登場……って!! 明らかにアレだろ!!
「待った!! 茸はまだ良いとして、それを拾うのは止めてくれよ。まして、【収納】しようなんて事も」
クサイさんが【腐った×××】を拾おうとしてるから、そこは止めておかないと。レイもその行動に後退りしてるからな。流石にレイも俺を持ってるわけで、嫌がらせで口の中に放り込む事はしないはず。失敗したら、自分にとばっちりがくるからな。
「レイも嫌がってるみたいだし……そこまで嫌なのか?」
クサイさんとの距離がじわじわと離れていく。レイが直接クサイさんに言った方が効果的かも。
「そうじゃなくて、魔物に吸い込まれそうになってるのよ。前も吸い込まれそうになったし、しつこいんだけど!!」




