史上最低の戦闘
「「「ワオーン!!」」」
犬男達の同時の雄叫びは迫力がある。弱い魔物なら竦み上がる程。レイ、クサイさんも吃驚して、動きが止まったし、ゾンビは転んでた。ベルゼブは流石に……俺を持ってる手が震えてる……って、お前もかい!!
これは一瞬で戦闘が終わる? ……というわけにもいかない。犬男達は雄叫び直後に突撃を選択。その行動は間違ってないと思ったんだけど……
「これは……ポン骨の力でちゅか」
「……そうかも」
シャクレドッグと足ドッグは巨大された箇所が原因なのか動きが鈍く、犬男に関しても、いつもの四足歩行に戻ろうとした結果、シャクレドッグ達にぶつかってしまった。
いくら強化されても、犬男達は急激な成長に体が慣れてなく、思った通りに行動出来てない。俺のせい……と言えなくもない。
「その隙を逃ちまちぇん。ペペペペぺペペぺ!!」
汚っ!! ベルゼブは手のひらサイズの唾を周囲に撒き散らす。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!!」
その唾を足ドッグは巨大な前足でガード。けど、単なる唾ではなく、溶解液。肉は溶けていき、骨が剥き出しになっていく。
転けたゾンビは直接当たり、何もせずに溶けていく悲しい存在。実は監視ハエを食べた事を怒ってたのか、今も転がってる役立たずと切り捨てられたかだな。
「汚い、汚いから!!」
レイも同じ事を思ってたのか、クサイさんと共に回避成功。二人は戦闘するフリをして、こっちの様子を窺ってるから大丈夫。
「骨まで溶かしきれまちぇんか。でちゅが、一点集中なら大丈夫かもしれまちぇん」
今度は唾を撒き散らすのではなくて、直線で一気に吐き出そうとしてる? 威力が上がれば、骨も溶かせると……
ただ、そのためには唾を溜める時間が必要らしく、ベルゼブもすぐに攻撃には移らない。いや、移れないわけで。
犬男達は遅いながらも、ベルゼブと距離を狭めてくる。そして、シャクレドッグの顎からの中距離攻撃。上手い具合に顎を外して、距離を長くしてきた。
それをベルゼブは飛ぶ事で、上へと逃げる。飛べる事は回避出来る範囲を広げる。相手の攻撃距離を潰す事にもなる。
地上で踏ん張れるからこそ、シャクレドッグは重い顎を振り回す事が出来たが、ジャンプ攻撃では無理だろう。むしろ、顎の重さがジャンプをさせてくれないかも。
勿論、それは足ドッグも同じ。肉が溶け落ちても、骨の大きいのは変わらない。跳ぶのは難しいはず。あれを【補骨】出来たら……って、【与骨】の【返還】で回復するだけか? 俺を持ってるベルゼブまで回復されたら嫌だしな。
可能性があるのは、犬男。人の姿だけあって、跳ぶ事に問題があるわけじゃない。ただ、突出した攻撃があるかなんだけど……
「まずは弱ったお前から消えなちゃい」
ベルゼブは溜まった唾を足ドッグに向けて、一直線に吐いた。それによって巨大化した骨が溶かされたら、犬男達……俺達には厳しい戦いになるはずなんだけど……
「ちょっ……最低!! 周りにいる身にもなってよ」
レイが心底嫌そうな声を出すのも無理はないかも。ベルゼブの唾を犬人間がお◯っこで対抗するとは思ってもなかった事だし。唾VSお◯っこ……史上最低の攻防だ。それで均衡状態を保っているのが凄い……が、俺が犬人間に求めていたものとは違ってるんだよな。
そのぶつかり合いも物が物だけに、互いに弱まっていくのだが、唾を吐き続けている状態は無防備に等しく、他の攻撃に目が入ってなかった。
「へちゅ!!」
ベルゼブの横腹に何かがぶつかり、墜落。何が起きたのかは俺は見てしまった。レイはあの攻防が嫌で、地面に落ちてる石をベルゼブに向けて投げていた。
「何でちゅか、あの攻撃は? 僕はパパにも叩かれた事がないんでちゅよ!!」
石はそこまで威力もスピードもなかったんだけど、地面の墜落が原因で大ダメージ!? ベルゼブは紙耐久か? 何の攻撃かも分からず、あまりの痛さに激昂しているぞ。




