第九十一話
互いの力を見せ合い、宴をした後ゆっくりと休んだ次の日、俺達は船着き場に来ていた。
これから船に乗って別の大陸に向かう。
俺達は送還の為のアイテムをゲットしに行く為に!
モイラさん達は仲間の行方を探す為に!
それぞれの思いを乗せて船に乗り込んだ。
「この船って、次の大陸までどれくらいかかるっすか?」
「大体、五日くらいですね」
「じゃあ、ゆっくり船旅でも満喫するかな」
「そうだな。俺は酒場で酒でも飲んでくるわ」
「マンバ、飲み過ぎて吐かないで下さいよ」
「うるせーよガーター。俺が吐くわけないだろ」
そう言ってガーターさんは船の中の酒場へ向かって行った。
「やれやれ、モイラ、私はマンバに付いて行きます。貴方はどうしますか?」
「私はユウ達と一緒にいます。何かあれば連絡を下さい」
「分かりました。では皆様。失礼します」
マンバさんの後をガーターさんが付いていった。それを見送った俺達はモイラさんと途中で別れて、予約した部屋へと入っていった。
部屋に入るとユウ先輩が話し始めた。
「さてと、これからどうするか?」
「とりあえず大陸に着くまではゆっくりでいいんじゃないですか?」
「まあ、それはそうなんだが、大陸に着いた後はどうするか?」
「ダンジョンに向かうんじゃないっすか?」
「それはそうなんだが、モイラ達の目的を手伝ってもいいかと思っているんだよな」
「へえー、珍しいっすね。ユウ先輩がそんな事を言うなんて!」
「まあ、アイツには世話になってるからな。少しぐらい手伝ってもバチは当たらんだろ」
「私は手伝ってもいいと思いますよ。実際お世話になっていますし」
「俺も賛成っす!モイラさんには前回も世話になったっすから!少しは恩返ししたいっす!」
「私も師匠に賛成です!」
「了解だ。じゃあ、俺はモイラに話してくるわ。お前達はどうする?」
「俺はちょっと船の中を探索してくるっす」
「私は少し休みましょうかね」
「じゃあ、私は師匠に付いて行きます」
「おし、じゃあマシロ!モイラの部屋に行くぞ!」
「分かりました師匠!」
ユウ先輩とマシロが部屋を出ていった。俺はノリ先輩一声かけて部屋を出た。
さて、これからどうしようか?とりあえず、船の中を散策してみるかな?
結構大きな船だから、船内に色々あるな。酒場に食堂、大きなホールもあった。あそこで何やるんだろ?
一通り船内を探索した俺は甲板に出てみた。
売店で買った飲み物を飲みながら海を眺めていた。
「ここは地球じゃないけど、海はあるっすねー」
俺の独り言に反応する人はいないけど、俺はしみじみ思ってしまった。本当に遠くまで来たのだと。
そんな俺に話かけてきた人がいた。
「おう、ダイ。此処にいたのか?何かあったのか?」
「あれ?ユウ先輩。どうしたっすか?モイラさんに話は終わったっすか?」
「ああ、とりあえず一緒に行動するようになったぞ。まあ、アイツ等は仲間の探索、俺達はアイテムのゲットが目的だけどな」
「そうっすよねー」
「それでどうしたんだよ?黄昏ながら海を眺めてよ」
「いやー、此処は地球じゃ無いのに海はあるんだなあって思ってたっすよ」
「確かになー。あんま気にした事無かったな」
「ですよねー」
俺とユウ先輩は海を見ながらボーっとしていたら、ユウ先輩が話し始めた。
「しかし、やっとあと一つで還れるな」
「そうっすね。長い様な短い様な感じっすね」
「元の世界はどうなってるだろうな」
「家とか残ってるっすかね?」
「あと、捜索願いとか出されて無いかな?」
「あー、もう結構時間経ってるっすからね。家族から出されてるかもっすね」
「どうするよ、向こうに還っても魔法とか使えたら?」
「そうなったら俺等、凄い事出来るんじゃないっすか!色々出来るっすからね」
「だよなー、テレビとかネットとかで稼げるんじゃないか!」
俺とユウ先輩は他愛も無い話をしていた。笑いながら話していたが、急にユウ先輩が真面目な顔をして話始めた。
「なあ、ダイ。俺達は無事に還れると思うか?」
「えっ?どうしたっすかユウ先輩?」
「答えてくれよ」
「か、還れるっすよ!その為に今頑張ってるっすから!」
「だよな!そうだよな!それでよー、一つ頼みがあるんだよ」
「な、なんすか?」
「もし、俺やノリに、何かあったとしてもお前だけでも必ず還ってくれよ。っで俺の親には俺は無事に生きてるって伝えてくれや」
俺は時が止まった感じがした。あのユウ先輩がこんな弱気な事を言うなんて信じられなかったんだ!
「な、何弱気になってるっすか!そんな弱気ユウ先輩らしくないっすよ!」
「まあ、俺らしく無いけど、一応伝えておくわ。ノリにも伝えてあるけどな。この世界、何があるか分からんからな。俺等三人全員で還えるのが一番の目標だが最悪の結果も考えておくことも大事だからな」
「そ、それはそうかもしれないっすけど!そんな事を言わないで下さいっす!」
「悪いな。何か最近、嫌な予感がするんだよ。まあ、気の所為ならいいけどな」
そう笑ったユウ先輩の笑顔に、俺は何故か暗さを感じていた。嫌な予感。それを俺も感じてしまった。
そして、この時は思いもしなかった。この時に感じた嫌な予感。それがまさかあんな形で当たるとは!
この時の俺はまだ何も知らなかったのだ。もし、分かっていたら未来は変わっていたのかもしれない。




