第六話
ユウ達が近くの魔物討伐をしているのと同じ時、王城では主要メンバーでの会議が行われていた。
「では、今月の会議を始める。まずは彼等の近況を、カヤよ報告せよ」
「はっ、まずは松山遊星から。あの三人のリーダー的存在です。武術訓練でもかなり好成績を残しています。武器も使ったことが無いと言っていたのですが既に部隊長クラスでないと相手になりません。彼ならもう少し鍛えればダンジョンの謎も解けるかもしれません」
「それほどか」
「付け加えるなら魔法訓練でもかなり良い成果を出しています。武術、魔法共に1ヶ月では最高ランクの伸び率を出しています」
「ふむ。それなら今回の召還は間違ってなかったのかもしれんな」
「このカヤ、個人の意見としては間違いないと思います。彼をみてるとあの方を思い出します。あの方さえ居れば今回の召還は無かったかもしれないのですが」
「もうよい。ここに居ない者の話はよい。それで他の二人はどうだ?」
「はっ、竹海徳光は平均より少し上です。どちらの訓練も一般兵よりは上です。ただ、頭は良く働くので戦術などを考えたり、相手の策を読んだりするのは凄いですね。どちらかと言うと前線よりも後衛の方が合うのかもしれません」
「なるほど。配置はカヤに任すので、好きにするがよい」
「分かりました。最後に梅川大騎ですが、今のところごく平凡な結果しかでておりません。正直な話三人の中では一番下ですね。ただ残りの二人が非凡なので何かあるのかもしれませんが・・・」
「ふむ。まあ三人中二人が当たりなら問題あるまい。それで送還の方はどうなっている?キャンベルよ」
「はっ、現在王宮の図書館を探しておりますが未だに手がかりがありません」
「そうか」
「ただ、過去に召還したものが還ったとの報告がありました。その記述書を確認しております。もう少し御待ち下さい」
「うむ。ただなるべく急げよ。あやつ等の気が変わらぬうちに。今のところあやつ等は約束を守っている。なら余も守らないとな」
「分かっております」
「それであやつ等は今何をしておる」
「今日は休みで三人で冒険者ギルドにいって討伐依頼を受けているみたいです」
「休みでも鍛えておるのか。やる気はあるみたいだな。ロボロ、あやつ等につける予定のメイドはどうなっておる?」
「はっ、今は各所より集めておりますがかの三人の好みが分かりませんのでまだ保留にしております。それに・・・」
「どうした?」
「実は以前メイドの話を松山殿に話した際断られてしまいまして」
「なぜじゃ?メイドがいた方が楽じゃないのか?」
「多分でありますがまだ彼等は我々を信用していないのではないでしょうか?」
「うーむ。その理由はなんだと思う?」
「おそらくですが初日のジャコウ殿との会話のせいではないでしょうか?あの時の対応で彼等はこちらを信用してないと思ってもおかしくないでしょうから」
「やはりか。そうなるとジャコウには何かしらの処分を与えないといけんかの?」
「・・・最悪それも一つの手だとは思います」
「ではそれも検討しておくか」
「少しよろしいですか王よ」
「なんじゃキャンベルよ」
「はっ、彼等の信頼は早めに回復した方が良いと考えます」
「なぜじゃ?」
「先程も話題に上がりましたが松山殿の戦闘力は目を見張るものがあります。彼は魔法を見ただけで使え、その後もすぐにレベル2まであがりました。もし還す方法が分からない場合この国を去るかもしれません。不安の芽はなるべく早く摘んでおいた方が良いと考えます。」
「去るならばほっておけばよいのではないか?」
「それは愚行かと。あの戦闘力を手放すと色々厄介になるかと。かといって去る前に亡き者にしようとすればこちらもかなりの痛手を受けると思います」
「なるほど、カヤはどうじゃ?」
「私もその通りかと。彼等は日々成長していっております。しかもまだ上限が見えません。下手に敵に回ると危険かと」
「なるほど、ではジャコウには何らかの罰をあたえておくか。それをそれとなくあやつ等に伝えておくか。ロボロよ手配しておけ」
「かしこまりました」
「では今月の会議はこれにて終了じゃ。各々勤務に戻るのじゃ」
ロボロやキャンベル、カヤが部屋から出ていったあと王は一言呟いた。
「まったく、お前が居ればこんなに面倒なことをしなくてもよかったんだがな。なあ、ハツカよ」