第六十三話
あれからもシュガールさんとベンガルさんと特訓を繰り返していた。
そんな日々を過ごしていたら遂に明日、船が出航する事になった!
つまり今日があの二人と最後の特訓の日だ!
「やっと明日、出航っすね」
「そうですね。長かったような短ったような感じですね」
「俺達も大分修行できたから良かったなマシロ!」
「はい!私も以前より強くなった気がします!師匠!」
「そうだよな!流石俺の弟子だ!所でダイとノリは今日はどうするんだ?」
「私とダイはまた二人で街をふらつきますよ」
「そうっすね。明日には違う大陸に行く訳っすから、とりま見て回りたいっすね!」
「ユウ先輩はどうするんですか?」
「俺か?俺達はちょっと武器屋に寄って、その後は街を見学するかな!」
「了解です!師匠!」
「そうっすか!じゃあ俺とノリ先輩は行ってくるっす」
「おう、きーつけろよ!」
ユウ先輩とマシロに挨拶して、俺達はいつも通り海岸舞台に向かった。
舞台には既に、シュガールさんとベンガルさんが待っていた。
「お待たせっす!」
「おう、来たか!って、今日は四人できたのか?」
「えっ?四人って?」
クルッと後ろを見るとノリ先輩だけしゃなく、ユウ先輩とマシロがいた!
「えっ!ちょっ!ユウ先輩とマシロ?一体いつからいたんすか?」
「ちょっと前だ。ちなみにノリは気づいていたぞ。お前だけ気付かなかったな」
「ノリ先輩まじっすか!」
「ええ、ここに着く少し前に合流しましたよ」
「なら、教えて下さいっすよ!」
「気付かなかったダイが悪い。もう少し周りを確認しろ」
「・・・そうっすね。申し訳ないっす」
「どうしたんですかユウ?貴方はマシロと修行してたんじゃないんですか?」
「いや、俺達は明日には船で別の大陸に出航する。その前にお前達との決着を着けとこうと思ってな」
「ほう、それは良い心掛けですね。私も実はそう思っていましたので!」
「アタイもだよ!結局、アンタとは戦ってないからねえ」
二人は嬉しそうにしているが、俺は何か少し胸がざわついている。何だ?ユウ先輩は何をするつもりなんだろう?
「じゃあ、少し準備運動したらやるか」
それぞれで準備運動をして、五分くらいしたら始めようとユウ先輩が言った。
「それじゃあ、私とベンガルどちらとやりますか?」
「勿論、アタイだよな?」
「・・・さっきも言ったが、俺達は明日には別の大陸に行く」
「おう、さっき聞いたな?」
「ええ、それがどうしたのですか?」
「だから、この大陸を去る前に、お前達に一つプレゼントをやろうと思ってな」
「へえー、いいね、プレゼント!なんだい?」
「けど、ユウの手元には何もありませんよ?一体何を頂けるのです?」
「簡単だよ。お前達に敗北をくれてやるよ」
ユウ先輩がそう言うと、魔導甲冑を全力展開している。オロチの時よりもなんか圧力上がってないか!
「なっ!これは!」
「やばいよ!シュガール!」
ユウ先輩の圧力を感じて、すぐにシュガールさんとベンガルさんも神器解放をした!
まさかユウ先輩、二人同時に相手にする気か?
「じゃあ、イクゾ!気を抜いたらすぐに終わるからな!お前達も本気で来いよ!」
「アンタまさか二人同時に相手するつもりかい?」
「・・・ベンガル、それしかありません。多分、タイマンでは勝てませんよ」
「・・・分かってるよ。この感じ。あのオロチと同じ位の圧力を感じるねえ」
「話は終わったか?じゃあいくぞ!」
そう言ってユウ先輩が突撃した!手には双剣を持っている。アレが朝言っていた武器屋から買った物かな?
ユウ先輩は先ず、シュガールさんに突撃する。
シュガールさんもユウ先輩を近づけない様に、青龍刀を振るが、それをユウ先輩は双剣で上手くいなしながら懐に入る。
「こんなに簡単に懐に入れたら駄目だろう。シュガール!」
「クッ!」
「やらせないよ!」
シュガールさんの懐に入ったユウ先輩を、殴る為にベンガルさんが庇いにくる。ユウ先輩の顔面に向けて拳を振るうが、ユウ先輩はその拳を受け止め、その腕を掴んで柔道の背負投を食らわせた。投げた先にはシュガールさんがいた。
「グハッ!」
「グッ!ちょっとベンガル邪魔よ!」
「何だと!アンタが殺られそうだったから助けてやったんだろ!」
「余計な御世話です!」
「コイツッ!」
「おいおい、敵を前にして口喧嘩なんて余裕だな」
ユウ先輩はそう言うとはシュガールさんとベンガルさんを殴り飛ばした!
「きゃあ!」
「グッ!何て威力だい!」
「お前達、俺がオロチなら死んでたぞ」
なんかユウ先輩、めちゃくちゃ怖いな。さっきの胸騒ぎはこの状態を予想してたのか!
「何かユウ先輩、怖いっすね」
「そうですね。けどこれはユウ先輩なりの置土産なんでしょうね」
「置土産っすか?」
「漫画とかでよくあるでしょう。敗北を知らない天才に敗北を経験させて、挫折からの復帰で力を付けさせってやつですね」
「けど、復帰しなかったらどーするっすか?腐ってそのまま終わる場合もあるっすよね?」
「確かにありますが、あの二人なら大丈夫でしょう。一応、この戦いが終わった後、フォローをしますよ」
「あの二人でも負けるのは確定っすか?」
「確実に。むしろ私達が一緒に戦っても厳しいんじゃないですかね?」
「俺は勝てる気しないっす」
なんて話していると、ユウ先輩が、シュガールさんを吹っ飛ばしてる。そして、そのまま動かなくなってる。あれはもう無理だろうな。残りはベンガルさんだけだ。
「チクショウ。まさか、此処まで力の差があるとは思わなかったよ!」
「最後に見せてやる。打撃の得意なお前に、必要な技の一つだ」
「技かい?」
ユウ先輩はベンガルさんに近づいていく。ベンガルさんも迎撃するもユウ先輩は軽く躱して掌底を腹に添える。
「これが魔力で行う浸透勁だ!」
トンッ!と軽くベンガルさんの腹に掌底をぶつける!
すると、ベンガルさんは全身を震わせた後、口から何かを吐いた後、倒れた!
あれは!某地下トーナメント漫画で医者がやってたやつか!
「ダイ、ノリ、後は頼むわ!俺も疲れたから先に宿屋に帰るわ!行くぞマシロ!」
「は、はい!師匠!」
ユウ先輩とマシロが去って行った後に、シュガールさんとベンガルさんの治療に向かう。
二人共気絶してるな。シュガールさんよりベンガルさんの方がキツそうだけど命は大丈夫そうだ!
「ノリ先輩どうするっす?」
「取り敢えず、治療して、起きるまで、待っておきましょう。流石にほっとく訳には行きませんからね」
それから十分位して二人共目を覚ました。
「大丈夫っすか?水いります?」
「いえ、大丈夫です。・・・完敗でした」
「ああ、ぐうの音も出ないほどの完敗だったねえ」
「どうでした?人生初の完敗は?」
「ちょ!ノリ先輩!」
「いえ、いいです。その通りですからね。負けたのに気分は悪くないんですよ」
「そうだな。アタイ達より強い奴がいる。って事はまだまだアタイ達も強くなれるってことだからねえ」
なんか二人共大丈夫そうだな。思ったより元気そうでよかった!
「さてと、じゃあアタイ達はここで少し休んでから帰るよ」
「そうですね。明日は貴方方の見送りはさせてもらいますね」
そう言って二人は海を見ながら座っている。後ろ姿を見ながら俺達は帰ろうとする。
「何とか大丈夫そうっすね。良かったすね」
「大丈夫そうですか?アレを見てもそう言えますか?」
ノリ先輩が指を指した先では、シュガールさんとベンガルさんがいた。
二人共海を見ながら座っているが、上を向いている。目には涙を流しながら嗚咽している。
そうだよな。悔しい訳がない。それでも俺達の前で泣く訳にはいかなかったんだろうな。
「やっぱり悔しいっすね。多分初めてマトモに負けたはずっすからね」
「けど、あそこまで、悔しんでるなら大丈夫そうですね。彼女達なら立ち上がれるはずです」
「そうなんっすか?」
「諦めてる奴が涙なんて流しませんよ。あー、これは無理だってなったら、涙も流さずに諦めるんですよ。人はね」
「勉強になるっす!先輩!」
「いえいえ、じゃあ私達も帰りましょう。彼女達もこの姿を見られたくないでしょうからね」
「うっす!」
俺達は二人を置いて宿屋に戻った。宿屋の食堂ではユウ先輩とマシロが飯を食っている。
「おう、ダイ、ノリ。彼奴等のどうだった?」
「多分大丈夫ですよ。悔し涙ながしてましたし」
「そうか、なら良かった。こんな事で潰れてほしく無いからな」
「それなら、あそこまでボコボコにしなくてよかったんじゃないですか?」
「手加減出来る奴等じゃなかったからな。しゃーないだろ」
「まあ、そうでしょうね」
「けど、ユウ先輩。また強くなってなかったすか?」
「それは、マシロと修行してたからだろ。」
「頑張りました!」
「まあ、ユウ先輩っすからね。取り敢えず明日はやっと出航っすね」
「やっとだよな。次の大陸では簡単にブツを集めたいよな」
「どうでしょうかね?私達トラブルに愛されてますからね」
「そうっすねー。特にユウ先輩が愛されているっすねー!」
「うるせ!今日はもう寝ようぜ!流石に疲れたわ」
そう言ってユウ先輩とマシロは部屋に戻って行った。
「それじゃあ、私達も休みましょうか。明日は遅れない様にしましょう」
「了解っす!」
俺達は明日の為に今日は早く寝る事になった。
明日はとうとう、出航して別の大陸にいく。
早くアイテム集めて日本に還りたい!
・・・その頃海岸舞台・・・
「あー!負けたし泣いた、泣いた!流石にもう涙はでないねえ」
「本当です。初めてじゃないですか?貴方の前で泣いたのは!」
「いや、確か昔、家の中で喧嘩して家具を壊して親父に二人揃って怒られた時も泣かなかったかい?」
「あー、確かに!あの頃は二人で色々馬鹿な事してましたよね」
「したした、お前ん家の庭で戦って花壇の花を踏み荒らした時もめちゃくちゃ怒られたよなあ」
「あと時は、お父さんよりもお母さんの方が怒ってて、怖かったですね」
「ああ、普段は優しいアンタの母親が、鬼に見えたよ」
「・・・それでも此処まで完膚なきに負けたのは初めてです」
「・・・悔しいねえ。どうしょうもなく悔しい」
「けど、ユウはあそこまで強くなれた。つまり」
「アタイ達もまだまだ、強くなれるってことだよねえ」
「ええ、むしろ成らなくてはいけない。そして強くなって」
「ああ、強くなって」
「「必ず、ユウの花嫁になってやるわ。」」
その頃のユウは・・・
「へーくしゅん!あー、何だ?急に悪寒が」
「師匠、風邪ですか?」
「いや、分からんが。とにかく早く寝ようぜマシロ!」
「了解です!師匠!」
二人の想いには気づかないユウなのであった!!




