第十二話
日が出るか出ないかの薄暗い中、突然ドアをガンガンっと乱暴に叩かれて目が覚める。
「誰だよこんな朝方に、今出るよ」
ドアを開けると兵士が一人立っており慌てた口調で話し始めた。
「朝早くにすいません。カヤ将軍からの伝言です。ダンジョンより魔物氾濫あり。至急正門前までこられよ」
それを聞いて一気に覚醒した。俺達が呼ばれた理由がついに起こったのだから。
「了解した。ユウ先輩とノリ先輩には?」
「もう伝えてあります。準備が出来次第この宿の玄関で待つとのこと」
「わかった。伝言ありがとう」
「はっ、では我々は一足先にいってきます」
「ああ、俺達も直ぐにむかうよ」
兵士は伝言を伝えると直ぐに出ていった。それと同時に俺も準備を始める。魔物氾濫は時間との勝負だから。あとユウ先輩より遅れたらまた文句をいわれるからな。
急いで準備をして玄関に向かう。すでにユウ先輩とノリ先輩が待っていた。
「すみません。お待たせしました」
「いや、俺等も今来たところだ」
「では行きましょう。私達をこの世界に呼んだ原因を解明しに!」
なんかユウ先輩だけじゃなくノリ先輩もやる気だな。基本的には感情をあんまり出さない人なんだけどなノリ先輩は。
「そうっすね。じゃあ行きましょう」
俺達は正門まで行き用意されていた馬車に乗り込んだ。カヤ将軍も待っていたので一緒に乗り込んで目的地へ向かう。馬車の中でカヤ将軍に今の状況を聞く。
「今の状況はどうなってるんすか?」
「先程軍に連絡がきた。魔物氾濫が始まったと。今は現地にいる冒険者と近くにいた軍隊を派遣して防いでいる状況だが厳しい。いかんせん魔物の数が多すぎる」
カヤ将軍が現状説明をしてくれた後にユウ先輩が俺達の行動を話す。
「カヤ将軍、俺達は魔物氾濫の討伐には参加しない」
「なっ!それでは約束と違うではないか!」
「勘違いするな。俺達はこの原因の解決だろ?だから俺達はダンジョンに入る」
「バカな!ダンジョンの入り口は魔物氾濫しているんだぞ!どうやって行くつもりだ」
「俺の光魔法のミラージュで俺達の姿を消してダンジョンに入り込む。で原因の究明に向かう」
「大丈夫なのか?かなりの数が出てくるんだぞ」
「そこは現場に見てみないとわからないがやってみせるさ」
「わかった。なら私はどうすればいい?」
「カヤ将軍は被害がでないように氾濫を押さえてくれ。その間に俺達が解決してみせるから。あと三人俺達のメンバーに入れてくれ」
「なぜだ?」
「この問題を解決したと確認してもらうためだ。俺達が解決したといっても信じてもらえないかもだしな。ようは証人だよ」
「なるほどな。わかった私の部下をつけよう」
「助かる。ただこんな状況だ。最悪の状況も考えておいてくれよ」
「了解した。無理はするなよ?」
「当たり前だ。俺達の目的は元の世界に還ることだ。それまで死ねるかよ」
「そうだな。無事に還る為にも頑張ってくれ」
「おいおい、他人の心配じゃなくて自分の心配もしとけよ?この問題を解明したのに還れませんだったら俺は暴れるぞ?」
「そいつは怖いな。魔法省には頑張ってもらわないとな」
そんな話をしていたら馬車が止まり目的地に着いたみたいだ。
「それじゃあ行きますか。とりあえず今日でこの騒動を終わらせるぞ」
ユウ先輩とノリ先輩と一緒に馬車を降りてダンジョンに向かう。目の前には魔物が溢れている。それを確認するとカヤ将軍が三人の部下を連れてきている。
「こいつらを使ってくれ。自分達の身は守れるはずだ」
「話は聞きました。足手まといにならないように気を付けます」
「よし、これでメンバーは揃った」
「今からミラージュをかける。この魔法の弱点は触れられたら魔法が解けるから魔物に当たらないように」
「ユウ先輩、ミラージュをかけてくれたら私達同士で見えるんですか?」
「いや、多分見えないと思う。ちょっと試してみるか」
そういうとユウ先輩は俺と自分にミラージュをかける。するとユウ先輩が見えなくなった。
「ユウ先輩やっぱ見えないっす?どうします?」
「そうだな個々に動いて魔物に囲まれてもヤバイから紐で繋ぐか」
さっきまでユウ先輩がいた位置に行くけど何処にいるのか分からない。
「そこで止まれ。今解除する」
解除されたのだろう。目の前にユウ先輩が現れた。
「次はこのロープを腰に巻け。っでミラージュをかけるからノリはロープが見えるか見ててくれ」
ロープを腰に巻いて準備出来たからユウ先輩にまたミラージュをかけてもらった。
「ユウ先輩、ロープも見えなくなりましたがこれロープに触れられてもミラージュは解けるんですかね?」
「どうだろう?ちょっとノリ、触ってみてくれ」
ノリ先輩がロープに触れるとミラージュはとけてしまった。
「なるほどな。つまりロープも体の一部か。移動の際は気を付けていかないとな。ルートは俺が決めるからお前達は俺の後をついてきてくれ」
全員で頷いた後、ロープで繋がりミラージュをかけてダンジョン前まで移動する。魔物にあたらないように気を付けて移動する。ダンジョンに入り込む前にノリ先輩が矢を空高く射つ。ダンジョンに入った合図だ。直ぐにミラージュをかけ直してダンジョンに入る。俺達がダンジョンに入る為に遠距離攻撃を止めていたからそれを解除する合図だそうだ。そうして俺達はダンジョンに入った。
ダンジョンの一階には以前入った時と明らかに違う所があった。階段を降りた先に魔方陣が六つあった。一つ一つの魔方陣から魔物が出てきている。それをみたユウ先輩が
「おいおい、もう問題解決しちゃたんじゃないか?」
「いえ、ユウ先輩。まだこの魔方陣をセットした奴を捕まえないとこれを繰り返しますよ」
「分かってるよ。おいあんたら、この魔方陣に見覚えはないのか?」
「いえ、すいません。我々では分かりません。もしかしたらキャンベル将軍ならわかるかもですが」
「あんたらはこの騒動の時にダンジョンには入らなかったのか?」
「あの数の中に入って行くのは無理でした。入るのは魔物を全て倒してからでしたから」
「それだとこの魔方陣も片付けられるな。そうなると分からないってことか」
「どうします?この魔方陣壊しますか?そうすれば魔物氾濫は落ち着きますが?」
「だからそれは一時しのぎに過ぎない。この魔方陣をセットした奴を捕まえないとな」
「しかし、何処にいるのか分かるんですか?」
「目に魔力を込めて見てみろ。全て魔方陣は繋がっていてそこから一本の魔力の糸の様な物が出てるだろ?」
俺はそれがまだ出来ないのだが付いてきた兵士達は出来るみたいで見て驚いてた。
「なっ!これは一体?」
「多分魔力の通り道だろうな。つまりこれを辿っていけば魔力を流してる奴に会えるだろ」
「なるほど。しかしよく気付きましたね」
「こんな危険な所にいるんだ。周りに気を付けるのは当たり前だ」
「確かにそうですね。ではとりあえずこの魔力の道を辿っていくのですか?」
「今はそれしかないだろう。いくぞ!」
ユウ先輩の声かけで進み始める。俺には魔力の道なんて分からないがユウ先輩達には見えてるから俺は後をついていく。
一階、二階と降りて三階の迷路の所まで来た。こんな離れてもあの魔方陣まで繋がっているのか。全員で進んでいたらユウ先輩が止まる。どうやら行き止まりみたいだ。しかし、ここって怪しいって言った行き止まりじゃないか!
「ユウ先輩ここって確か!」
「ああ、初めての時に怪しいって言った行き止まりだな。魔力の道はあの壁の向こうまで続いている」
「どうするんすか?」
「とりあえず兵士の方たちは下がってもらえます?っで俺達に手に終えない感じだったら一人はクリスタルを使って援軍を呼んできて下さい」
「わかった。では我々はあの角に隠れている。何かあったら直ぐに駆けつける」
そういうと三人は曲がり角に隠れる。それを確認してからユウ先輩が
「うっし。じゃあこの壁をぶち壊すから少し離れてろよ」
「ちょっとまて下さいユウ先輩。まずは罠を解除してからです」
ノリ先輩が罠を解除してユウ先輩が大剣を構える。そのまま大剣を壁に当てて壁を破壊した。すると壁の向こう側は部屋になっている。
そしてその部屋に白衣を着た女が一人立っている。こいつが犯人なのか?
「初めましてだな。こんな所で何をやっているのかな?」
ユウ先輩が部屋中の女に話しかける。
「あらら、ついにばれちゃったか!まあ大分稼げたからいいかにゃ~」
にゃーって猫かよ。そんな事を考えているとユウ先輩がさらに声をかける。
「この魔物氾濫はお前の仕業だな。何が目的でこんな事をやっている?」
「にゃははは、それをいちいち教えたらこそこそ隠れてた意味にゃーよ。所であんたこの国の人じゃにゃーね?それとそこの二人も」
「そうだとしたらなんだってんだ?」
「ってことはこの国に喚ばれた異世界人ってことだにゃ!アイツのいってたことは嘘じゃにゃかったってことにゃね」
「すまないが俺達にわかるように話してくんないか?あんたは猫人なのか?」
「そうにゃね。それくらいは教えてあげるにゃ。私は猫人じゃないにゃ」
「そんなににゃーにゃーいってるのにか?」
「猫人関係ではあるけど猫人じゃーないにゃ!これ以上は教えないにゃ」
「なんだよ、ケチだなー。とりあえず捕まってくれないか?お前を捕まえないと俺達が還れないからな」
「それもお断りだにゃ!私は自由が好きなんだにゃ」
「なら無理矢理にでも連れていくかな!」
「にゃははは、無理な事は口にしないほうがいいにゃよ。あんたとそこの人も分かっているんにゃろ?」
猫人?はユウ先輩とノリ先輩を指を指している。俺は指さないのね。確かに俺はそんな風に考えていない。ユウ先輩とノリ先輩なら大丈夫だろって思っていた。だけどノリ先輩の顔色が悪い。ユウ先輩も顔が強ばっている。
そんなにこいつはヤバイのか!!
「まあ、安心するにゃ!今回はこれで私は引き上げるにゃ!だからあんたらが後を追ってこないなら見逃すにゃ!」
「あんたが居なくなれば魔物氾濫は起きないのか?」
「そうだにゃ!あれは私の魔力で召喚してた奴等だから私が居なくなれば召喚されないにゃ」
「それを信じる証拠はあるのか?」
「そんなものなんかにゃいにゃ!まあ信じる信じないはあんたら次第にゃ」
こいつの言うことは本当なのか?ただどうやらヤバイ奴ってのはマジらしい。あれだけの魔物を召喚出来るのだから。俺達が動けないでいると後ろに待機していた兵士の一人が近寄ってきた。
「何をやってんだ!早く捕まえろ!お前達が捕まえないなら俺が捕まえてやる」
兵士は無造作に女に近づいていく。
「おい、馬鹿やめろ!早くこっちへ戻ってこい」
ユウ先輩が大声で静止させようとしたが遅かった。女に手を触れようとした瞬間に兵士が細切れにされた。何をされたのか分からなかったが兵士が殺されたのだけはわかった。
「はぁー、相手の実力と自分の実力の差をわからないゴミは私は嫌いだにゃ!」
女はそんなこといっているが動いた様子がない。兵士が細切れされたのに。全く何をされたのかわからなかった。ただユウ先輩には見えていたのか
「おいおい、おっかない爪だな。ちゃんと切っといてくれよ」
なんて事をいっている。女の手を見ると爪が伸びていた。そして爪には赤いマニュキュアの様な血がついていた。あれでやったのか!!
「ふーん。あんたには見えていたのかにゃ!ますます殺すのが惜しいにゃ」
女は爪に付いた血を振って落としている。そのまま攻撃してくるのかと思ったが
「まあ今回はこれをもって帰るのが仕事にゃ。ということでサヨナラにゃー!」
女は机に置いてあった黒いボールみたいな物を持って消えた。まるで俺達がタリスマンで転移してるみたいに!それを確認したユウ先輩が
「・・・なんとか生き残ったか。あいつはヤベーわ。勝てる気がまるでしなかったわ」
そういって座り込んでしまった。額には汗が流れている。そしてノリ先輩も座り込んでいる。
「全くです。よく生き延びれたと思います」
そんなに凄い奴だったのかあの女は!俺は全然何も感じなかったけど?
「ダイは何ともなかったのか?」
「えっ?ああ、はい。特に何も感じませんでしたけど?」
「マジかよ!お前俺よりも大物になれるぜ」
「えっ!マジっすか!」
「あれだけの殺気を感じなかったなんて信じられないぞ」
「そんなにヤバイ女だったんすか、あいつは!」
「ヤバイなんてもんじないわ!今の俺が六人いても勝てる気がしなかったわ」
「そんなに!めちゃくちゃヤバイ奴じゃないっすか!」
「だからそういってんだろ。実際一人殺されたしな」
「・・・確かに、何をやったかわからなかったっす」
「まあとりあえずこれで依頼は達成だろ。おいそこの兵士!早く地上に戻ってカヤ将軍かキャンベル将軍を呼んできてくれ。あとこの部屋も調べて欲しいからな」
「わ、わかりました。直ぐにもどってきます」
兵士の一人がタリスマンを起動させ地上に戻っていく。それを確認したらユウ先輩が
「残った四人でここを守るぞ。せっかくの資料を魔物に荒らされたらたまらないからな」
「「了解!」」
その後地上に戻った兵士がカヤ将軍とキャンベル将軍を呼んで戻って来るまで女がいた部屋を防衛した。
将軍達が来たら調査を任せて俺達は地上に戻った。詳しい事は後日報告することにして俺達は街に戻った。
果たしてこれで本当に魔物氾濫は起きないのか。そして俺達は元の世界に還れるのか!まだわからないが早く還りたーい。




