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最強になった『第三紋章』  作者: HiKA
序章 最果ての地へ
2/2

第二話 右手の紋章

~ここまでのあらすじ~

重度の記憶喪失に陥った主人公・グレン=アーカディアは、緑の茂った森の中でレン=シンシアという青年に命を救われ、シンシア家族の宿屋でお世話になることが決まった。

記憶喪一日目の終わりに差し掛かったところで、謎の老人から不可解な地図を手渡され、新たな鍵を手に入れた。


翌朝早く目覚めた俺は、小鳥の(さえず)りに引き寄せられて部屋の窓を開ける。


隣の家の屋根に止まって鳴いている小鳥が、青い空をその小さな羽根で天高く(かけ)て行くのが見えた。


そのまま小鳥を目で追うと、雲一つない綺麗な青空にこの地を照らす大きな太陽があり、その眩しさに思わず右手で光を閉ざす。


その瞬間、右手が焼けるように熱される。

反射的に手を下ろすと、三本の矢が円形の陣に刺さっている紋章が手の甲に現れた。


(これは...第三紋章?)


太陽の光に照らされ浮かびあがった紋章を見た途端、紋章についての記憶が蘇る。


その記憶が正しいという確証はないが、俺自身も理解が追い付いていないため、振り返りながら説明しよう。


紋章は三種類あり、右手の甲に浮かびあがる。

全てにおいて円形の陣に矢が刺さっている紋章だ。


第一紋章は一本の矢が左下から斜めに刺さった紋章。

火・水・風魔法による攻撃(アタック)防御(ガード)を使い、一対一で驚異的な強さを見せる。


第二紋章は二本の矢が下から上に刺さった紋章。

闇魔法による強化(エンハンス)(トラップ)を使い、剣術に長けた者が多い。


第三紋章は三本の矢が右下から斜めに刺さった紋章。

光魔法による回復(ヒール)防御(ガード)を使い、パーティの構成に欠かせない役割だ。


数字の通り第一紋が優秀とされているが、パーティには向かない。

パーティ内に第二紋がいれば、基本的には援護に回ることになり、個性が隠れてしまう。

反対に第三紋は、パーティに入れば防御回復役(ガードヒーラー)として大いに役立つ可能性もあるが、魔法学園などで教えられるのは単独もしくは二人組が多く、その点においての格差は小さくないと言われている。


もちろん、光魔法の第三紋が攻撃魔法を使えないわけではない。唯、魔力(マナ)消費が著しいほどに激しい。


元々の魔力(マナ)量が多ければ数発打つには十分だが、少なければ一発撃つだけで尽きてしまい、防御魔法や回復魔法をかける余地もない。


それに対して、第一紋は少ない魔力(マナ)消費で攻撃魔法を打つことができ、さらに防御魔法までも使えるというから、わざわざ魔力(マナ)消費量の多い回復魔法なんて使わなくても十分に戦えるため、努力がどうとかは関係ない。

もちろん他の紋章も努力すれば技量があがり、魔力(マナ)量が増えたり手数が増えたりするが、第一紋の比ではない。

これこそチートと言われる所以(ゆえん)だ。


いつの間にか紋章のことで熱く語ってしまっていたが、簡単に言えばこうだ。


第一紋:チートオブチート。

第二紋:カッコイイ。努力のしがいがある。

第三紋:地味で弱い。落ちこぼれ。


と、まぁこんな感じだ。


この考え――もとい、俺の紋章についての記憶がこの国でも当てはまるのか、後でレンに聞いておこう。


時刻は朝の六時半。

昨夜と今朝、俺の身に起きた現象を朝食後の空いた時間でレンに聞こうと思い、大まかにまとめて部屋に置いてある紙とペンでスラスラと書き記す。


そろそろ朝七時に差し掛かる頃、シンシア家族と朝食の時間になり、俺は寝泊まりさせてもらっている宿の部屋を後にしてレンの部屋へと向かった。


レンの家と宿屋は建物ごと繋がっていて、建物を出ずに移動することができる。

ちょうど俺が寝泊まりしていた部屋も二階で、レンに案内されて通った道を思い出しながら歩く。


なぜ俺が宿屋の食堂ではなくシンシア家のレンの部屋に向かっているかと言うと、昨日の夕食時に遡ることになる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「グレンさん、お口に合いませんでしたか?」


昨夜の夕食はユイさんとリンが作ったのだろう。

俺がうかない表情をしていたため、リンが心配そうに聞いてきた。


「あぁ、違うんだ。俺の分も用意してもらったのが、少し申し訳なくてな......とても美味しいよ。」


「そんなことだったのね。気にしなくていいのよ。」


率直な思いをそのまま伝えると、ユイさんは安心したようにそう言ってくれた。


「それなら、明日の朝も一緒に食べませんか?」


「ありがたいな。一緒に食べさせてもらうよ。」


自分の作った夕食を美味しいと言って貰えて嬉しそうなリンは、翌朝の朝食も一緒に食べたくなったのか、そう提案してきた。


(シンシア家族のご好意には甘えっぱなしだな...)


「明日の朝七時頃に俺の部屋に来てください。」


「じゃあ、私のところにも呼びに来て下さいね?」


レンとリンは嬉しそうにそう言って、俺を含めて三人で向かうことになったのだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


そんなこんなでレンの部屋へ辿り着いた俺は、ノックをしてレンを呼んだ。


今の今まで寝ていたと言わんばかりの寝癖と、ほとんど開いていない目に少し驚きつつも、むにゃむにゃとした言葉で挨拶されたので、そのまま応えた。


「ん...おはようございます...グレンさん...」


「あぁ、おはよう、レン。」


流れるようにして隣の部屋の扉をノックすると、今度は起きてから数十分の間に髪や服装を整えた、とても可愛らしい女の子が出てきた。


「おはよう!お兄ちゃん!グレンさんも、おはようございます!」


「おはよう...リン...」


「おはよう。リンは朝から元気なんだな。」


「はい!私は朝型なんです!お兄ちゃんは夜型で...」


朝から元気なリンを見たからか、俺にも元気が溢れて来るような気がした。


(いつの間にかリンとも親しくなっただろうか....

堅苦しくないくらいが接しやすいのかもしれないな。)


そう思いながら、三人で食卓のある一階へ降りる。

台所にはユイさんとロイさんの姿があり、今朝はこの2人の担当なのだろう。

トーストのいい匂いが鼻の中を通り抜けていく。


「おはようございます、ユイさん、ロイさん。」


「おはよう!パパ、ママ!」


「おはよう......」


レンは一体いつまで寝ぼけているのか。

これがいつも通りなら少し心配になってきた。


三者三様の挨拶を交わすと、二人は忙しそうな腕を止めずに顔だけこちらに向けて返してくれた。


「あら、三人ともおはよう。」


「おはよう、みんな。」


そして昨日と同じ席につくと、三分も経たないうちに五人分の朝食が運ばれてきた。


バターのいい香りがするトーストに、コーンスープ。採れたてを彷彿(ほうふつ)とさせる綺麗な緑色のレタスに、軽く炒めたベーコンとスクランブルエッグ。

今朝も申し分ないほど、いい朝食だった。


朝食を終えて食器を洗い、レンの部屋へと向かった。今朝メモに書き記したことを伝えるために。


朝食前に呼びに来た時のようにノックをして、レンに呼びかけてから戸を開けて部屋に入る。


予想はしていたが、本当に――

レンは静かに息をしながらぐっすり眠っていたのだ。


どうするべきかと悩みながら一度部屋を出て、隣の部屋の扉をノックすると、少し開けられた扉の隙間から頬を赤く染めた少女が顔を出した。


「あ...グレンさん!ちょっと待ってくださいね!」


「あぁ、ゆっくりで大丈夫だ。」


リンは慌てた様子で部屋の中へ戻り、突然訪問した俺のために中断していた作業を急いで片付け、学園の制服らしきものを羽織ってもう一度現れた。


「すみません!お待たせしちゃって。」


その華奢な身体に纏っていたのは、薄桃色のカッターシャツと黒を基調とした赤いチェック柄のスカート。


肩から羽織っているマントも黒が基調で、アクセントに夏らしく涼し気な青色の丸い宝石が胸元できらりと輝き、なんとも可憐な姿だった。


「それは...学園の制服か?」


「はい!今日は部活があるんですよ!」


過去の記憶はないが学園の制服だと感じた俺は興味本位でそう聞く。

リンは質問に応えた後、小さく肩をすぼめて言った。


「あ、あの......どう...ですか?」


学園に通っていると言ってもリンはまだ十五歳。

年頃の女の子と言っていい年齢だ。

他人からの印象が気になるのは必然といえる。


(兄より年上の俺に聞くのはどうかと思うが...)


「あぁ、よく似合っていると思うぞ。」


「ほんとですか!ありがとうございます!

そう言って貰えて嬉しいです!

そういえば、私に何か用があったんじゃないですか?」


あからさまに喜んだリンは、そのままの勢いで話題を元に戻して聞いてきた。


「そうだった。レンに話があったのだが、二度寝をしているみたいでどうするべきか迷っていたところなんだ。」


「なるほど...お兄ちゃんはいつもそんな感じですね。その話、私でよければ聞きますよ?」


「いいのか?」


「はい!部活までまだ時間ありますし、魔法の知識に関してはお兄ちゃんより私の方が上ですからね!」


「そうか、初めてレンにあった時にも自慢の妹だって言っていたな。ありがとう、助かるよ。」


「そうと決まれば早速ですが、立ち話も何なので私の部屋で話しましょうか。」


「そうだな、お邪魔させてもらうよ。」


「どうぞ入ってください!今、お茶入れますね。」


「あぁ、ありがとう。」


そう言ったリンは手慣れた手つきで紅茶を入れ始めた。


昨日遊び相手をしながら喋っていた時は、初対面だったから緊張していた――いや、警戒していたのかもしれない。


可愛いパステルカラーで染め上げられた女の子の部屋で、紅茶のいい香りが部屋中に舞っている。


「お待たせしました〜。どうぞ飲んでくださいね。」


「あぁ、ありがとう。いただくよ。」


「じゃあ、本題に入りましょうか。なんでも聞いてくださいね?」


リンが入れてくれたとてもいい香りのする温かい紅茶を味わいながら、今朝書き留めておいたメモを取り出して話し始める。


レンに寝泊りする部屋へと連れられる途中、謎の老人に地図を手渡された昨夜の出来事。


青空を翔ぶ小鳥を見ながら太陽に手を(かざ)した瞬間、右手に第三紋章が現れた今朝の出来事。


第三紋章の顕現によって紋章についての記憶が(よみがえ)った出来事について。

どうもお久しぶりです。

第二話 右手の紋章 いかがだったでしょうか?

昨夜から翌朝へと様々な出来事に遭遇してしまうグレン。果たしてどのように記憶を取り戻し、冒険していくのか!これからの進展をお楽しみに~♪


読んでくれた方は感想を書いて貰えると嬉しいです!また、面白い・続きが読みたいなど、興味を持ってくれた方は広告の下にあるポイント評価をしていただけると幸いです!


また、面白くない部分や私の語彙が拙い部分もありますが、きっとこの先、面白くなる筈なので、気長に待ちながら読んでいただけることを願っています!


作者名の「HiKA・」の後ろにつく名前は、登場キャラのアイデアをくれた人の名前です!

毎回変わったり、なかったりしますが、気にしないでください!(笑)


※更新日時は不定期です。ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] え、普通にめっちゃ面白いんだけど そっち系専門の学校とかいってる?いや、俺は全くそっち系に精通してないんだけどこの普段本めちゃくちゃに読みまくってる俺の魂がそう思わせている…………それほど…
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