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(3)

このご両親と姫様とのやりとりを若い侍女たちが聞いていたのです。

「まあ、姫様は本当に面白そうに毛虫で遊ぶんだけど、気持が悪くなります」

「ねえ、よりによって毛虫でお遊びになるとは・・・」

「何の因果で、こんな蝶好きの姫様に使えることになったのでしょうか」

などと愚痴を言いあいます。


兵衛という侍女は嘆きます。

「なぜ私には、普通の姫様はこうなんですよと教えてさしあげることもできず、こんな毛虫を直接ながめるようなお勤めをしなければならないのでしょうか、毛虫そのままの姫様は、いつになったら、蝶のように美しくなるのでしょうか」


小大輔という侍女は呆れ顔で苦笑い。

「世間の姫様がうらやましいですね、世間の姫様は、蝶や花を愛でるのが普通なのですが、私たちは毛虫臭い世間に暮らしているのですよ」

「ああ、辛い、もう嫌だ」

「あの姫様の眉毛って毛虫に見える」

「ええ、歯茎もそんな感じ」

「皮のむけた毛虫なのかな」


左近という侍女は

「冬が来ても、着物の心配がなくて便利では?」

「寒くても、このお屋敷は毛虫ばかりで暖かいでしょうよ」

「着物なんか着ないで過ごせるでしょうね」

・・・・


そんな感じで、若い侍女連中が言い合うのですが、それでも年配の侍女はたしなめます。

「もう、あなたたち若い人は、とんでもないことを言っているのですよ」

「蝶を可愛がる姫君にしてもね、それほど素晴らしいことではありません、むしろ感心できないことです」

「たとえば、毛虫を並べて蝶です、なんて言う人はいませんでしょう」

「蝶になるのには、毛虫が皮を脱ぐからなのです」

「うちの姫様は、そういうことろに、興味があるのですから、よほど考えが深いと思います」

「それにね、蝶は捕まえると、手に粉がつきます、とても気持が悪いのです」

「蝶を捕まえてワラワ病で熱が出て震えのおこる病気になることもあります、そっちのほうが、嫌ではないですか」

どうやら毛虫と蝶の論議になっているけれど、若い侍女たちはますます憎さが強まり、陰口を言い合うようになりました。

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