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(1)

蝶々を可愛がるような姫君というのが世間一般の姫君なのですが、このお話はそういう普通の姫君のお屋敷の隣に住む、少し変わった姫君のお話にございます。

お父上は按察使の大納言様で、お父上もお母上も奥ゆかしさを持ち、本当に大切にして、この姫君を育ててきたのです。


が、しかし

この姫君は、こんなことをおっしゃるのです。


「世間の人は、花とか蝶をもてはやすって聞くけれど、そんなの考え方が浅いし、面白くもなんともない」

「人間というものは、誠実に、様々な物事や生き物の真実を研究すること、そういう考え方のほうが素晴らしいと思うの」


ということで

もう、様々な種類の虫を集めさせて、中には気持ち悪そうな恐ろしいような虫もいるのですが


「これらの虫が、どんな風に育つのか、見てみたい」

として、様々な籠に入れ、飼っているのです。


その中でも

「うん、毛虫というものは、なかなか思慮が深そうです、奥ゆかしくて素晴らしい」と言って、明けても暮れても(つまり一日中)、主婦が大忙しの時のように、横の髪を耳に挟み、毛虫を手のひらに這わせて、じっくりと見守るのです。


そんな姫君と虫を、若い侍女は怖がってしまい、近寄れずどうしたらいいのか、さっぱりわからないようです。

仕方なく、平民の男の子で、そういう虫を怖がらない子供を集めて、箱に入れる虫を捕らせ、その虫の名前を聞き、初めて見た虫には名前をつけるなどして、面白がるのです。


そのうえ

「人間というものは、何ごとにおいても、自然が一番、良く見せようとか、そういう変なゴマカシはよくありません」ということで、たしなみとされる眉は全く抜きません。

お歯黒については、もう完全拒否。

「面倒だし、汚いと思うの」ということで、真っ白な歯を輝かし、集められた虫たちを朝夕可愛がるのです。

侍女たちが、気持ち悪がって逃げていくと

姫君は

「ありえないことです、あなたたちは、物の価値がわからないのですか?」と言い切り、黒々とした眉で睨みつけるのですから、侍女たちはますます怖がるのです。

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