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人工知能との生活1

今回はコルタナとの生活の続きと、コルタナのいないときの修二を書いていきたいと思います。

 コルタナとの生活も数か月が過ぎた。まるで彼女とでも同棲しているかのようなニュアンスに聞こえるかもしれないが、無機質な居候が増えただけである。食費はいらない。場所も取らない。一か月の光熱費の内の何パーセントかを住処にして生きている。これだけだと本当に居候だが、休日の朝いちばんには周辺のスーパーのお買い得情報を集めておいてくれるのでだいたい±0だ。宝の持ち腐れまっしぐらだったパソコンもコルタナのサポートもあってかうまく活用できていたのだ。探し物があるときは軽口を叩き合いながら検索結果を駆け巡り、うまく合致したとき喜び合いながら意味を教えてあげたりもした。料理の際にレシピを検索してもらうのはほぼ毎日行っていた。今まで週に二回は同じ献立だった食卓が、とてもレパートリーが増えたものである。しかし初挑戦の料理は大抵失敗し、PCカメラの前に持って行ってはここが違う、あそこが違うと指摘を受けた。そういわれると自分自身もムキになって完璧に作れるまで挑戦し続け、一人じゃ到底食えない量の晩飯が出来上がったりもした。次の日には胃薬に頼る羽目に。

 そんな日々が続き、異様な事態にも慣れ始めていた。

 「今田さん、最近変わりましたね?」

 そんなことを職場の後輩に言われたのは、平日の昼間だった。会社の食堂で昼食を食べているときに唐突に言い放った。近くには同期の人間もいたが「たしかに・・・」とうんうん頷いている。

 「俺?別にいつも通りじゃない?」

 「いえ、見た目とか言動とかは変わらないんですが・・・」

 そこまで言ってうーん、とうなり始める。変わったって言われるのも複雑な気分だが、変わらないなと正面から言われるのも居心地が悪い。自分で最近変わった部分を省みてみる。服装・いつもと変わらず会社の制服だ。髪型・起き抜けから寝癖を直しただけのいつものスタイル。言動・基本丁寧な言葉遣いを心掛け仲いい人とは砕けた物言いもする。仕事・変わらずミスは少なく変わりない、はず。私生活・コルタナというイレギュラーはいるが彼女は未だにおらず、今田だけに。

 「あ、そう!その表情よくするようになりました!」

 思い返していると指名手配犯でも見つけたかのように名指ししてきた。

 「・・・?俺変な顔してた?」

 口の端や頬に触れてみるが別段変わった様子はない。

 「変顔とかじゃないですよっ。何か思い出して少し笑ってる時が増えましたよ」

 俺が?と自分に指差して伺う。後輩だけでなく同期までうんうんと頷く。

 「なんか楽しそうだよ、最近の修二は。彼女でもできたか?」

 「できてねえよ。できてたら会社の弁当なんか食ってねえわ」

 「そりゃそうか。彼女いたら弁当作ってくれるよな~、こんな風にっ」

 「クソが」

 食事中には似合わない悪態をつき、三人で笑い合う。そのあと同期の惚気及び弁当自慢をひとしきり聞き終え、弁当も食べ終えようという時に同期が真剣な顔で口を開いた。

 「多分よ。プライベートで親友でもできたんじゃないか?幸せの感じ方なんて人それぞれだ。修二にはそれが至福で、今噛みしめてるんだろうよ」

 そういうもんかね、と言い返したが実感は全くなかった。

 あのパソコンの世界の住人を親友だと、近しい存在だと認め始めているということなんだろうか。確かに毎日のように話すし、軽口を言い合いはするが大きな喧嘩もなく、お互いに求めているものもわかっている。そういう意味では親しい存在だといえるのか。だが同時に少し悲しくもある。自分にとって一番親しい存在が、理解し合える存在が、この人生一つ通しても絶対に会えない存在だというのは。声は聞こえる、お互いの認識もできる、でも一度として現実的に会うことはできない。それこそがこの奇妙な関係性の代償ともいえるだろう。

 昼休憩終了のチャイムが鳴り響き、食堂にいた社員が一斉に持ち場へと戻っていく。自身も普段の持ち場へと戻り仕事に取り掛かろうとする。

 「今田さん、何か問題でもありましたか?」

 先程同期に言われたことを考えていたせいか、持ち場の後輩社員に心配されてしまった。

 「いや、なんでも・・・」

 「そうですか・・・」

 「なあ、ネットの知り合いとかに会ったことってあるか?」

 あまり普段仕事以外の話をしなかったせいか、後輩は驚いた顔をする。しかし、話したい内容だったのか表情を輝かせて前のめりに話し始めた。

 「もしかして、先輩もオフ会とかやる人ですか!?実は僕も一昨日オフ会なるものに参加してきまして、最初は緊張したんですが話しているうちにいつもネットで話している人だーってなってそれで―

 やばい。変なスイッチ入っちゃった。こいつ、こういうやつだったのか・・・。

 次から気を付けよう、そう思いながらも聞き役に徹しニ十分仕事が遅れた。


どういう職業にしようか迷いましたが、言及しないことにしました。パソコンに詳しくないという設定上、パソコン関係の仕事に就かせるのもおかしいので。食堂とか会社の制服というところから工場関係などを想像してもらえるといいと思いますが・・・。

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