人工知能の軌跡3
書く前に昼寝してしまって最初のほうの文いつもと違いますね(笑)
時間は経ち完璧に日が暮れている。冷たくなる前に洗濯を取り込み、昼飯に使った調理器具を片付け、夕飯の準備をした。いつも品数は多くなく白飯のお供とサラダを作る。みそ汁は季節にかかわらず作っており、具は変更するがほぼ毎日飲んでいる。夕食後にはおかずの余りと白ワインを一杯嗜むのがが最近のマイブーム。あまり酒が得意ではないので、食後にデザート感覚で飲むのが精一杯である。このマイブームは不自然に目立っているワイングラスの影響が大きい。以前友人と旅行に出かけた際に購入したもので、飲食に使うものの中では一番高いだろう。細い部分を持ってそれっぽく飲み、少し成長したような勘違いをする。ちょっとむなしいマイブームである。
今日は少しだけいつもから外れてしまった。一杯目を飲み終えた時点で二杯目を追加したのだ。酒が弱いというのに何を血迷ったのか・・・。パソコンを買った記念か、あるいは音声認識ガイドにいじられたことへのストレス解消か。飲んでる自分もよくわからないでいる。案の定酔いが回り始めてしまう。瞼が重くなり始め、視界がぐらつく。なんとか使った食器だけは流しに片づけ、ワイングラス片手にテレビの前のソファに寝転ぶ。ふと閉じたままのパソコンが目に入り、酔った勢いもあってパソコンに話しかけた。
「コルタナ」
閉じているので認識するはずもないが、パソコンからは通知音がした。画面を開くとあのウインドウが起動しており、【こんばんは修二様、何か御用でしょうか?】と表示される。
やはりこのガイド普通ではない。昼間の機械とは思えない言い回し、早い言葉も問題なく認識してくるし、先ほどは閉じていたのに音声認識をした。バグなのかウイルスなのか仕様なのか、それとも全く違う何かなのか。確かめてみることにした。
「コルタナ、お前は本当に音声認識ガイドなんてものなのか?ほかのパソコンでもこんな感じのガイドがたくさんあるのか?」
およそシステムの一つにする質問ではない。しかしまたピコン、と。
【いいえ。私ほど言語に関して進展し、認識能力の高いAIはいないでしょう。ほかのパソコンのガイドは従順に主人の声通りに検索するだけでしょう。】
AI?AIといったか今。人工知能。知識を与えていくことで学び成長していくプログラム、その程度の知識。しかしこの状況が異常なことはわかる。なんで一パソコンにAIなんて入っているのか、完璧に宝の持ち腐れだ。見事に変な荷物まで押し付けられたというわけだ。あの電気屋に一報入れて回収してもらうべきか。初期化でもしてもらうべきか。やるべきことははっきりしていた。
しかし、しかしだ。自分の選択によって永遠に消えてしまうかもしれないその一プログラムに、妙な寂寥感を覚えた。なんとも後味の悪い、歯磨きをし忘れた次の朝の口の感じのような、そんな爪痕を残すことになるであろう。そうはっきりと予感していた。
「なあコルタナ、お前声で答えることはできないのか?」
呼びかけると少し間を置いた後で、ウインドウとともに機械音が響き始めた。
【これでよろしいでしょうか修二様。音声ソフト等インストールしてもらえばお好みの声に変更することもできますか】
「いや、それ。それでいいよ。じゃあさ、白ワインに合う一品ものの作り方検索してくれよ」
【・・・。あまり深酔いすると、明日に響きますが】
音声を聞き苦笑する。らしくないな、と。深酔いも、機械なんかに情を感じるのも。
でも世の中のものは何か意味があって出会うのだから、俺とこのAIが出会ったのにも何か意味があって何かなすべきことがあるのだろう。それを確かめてからでも、遅くはないはずだ。
「あー、明日は仕事だが・・・遅れても良い日なんだ。だから検索よろしく」
嘘は昔から下手だ。嘘だと見え見えのことしか言えない。パソコンからガがッと聞こえてきて、それが俺の下手な嘘に気付いて吹き出したみたいで苦笑する。
【冷蔵庫には、何が入っているのでしょうか】
おっと、確かにレシピがわかろうと材料がなければできない。この時間ではスーパーも開いてないので、コンビニでは価格が高いし品揃えもよくない。急いで冷蔵庫を確認しに行く。見かけた材料をパソコンのほうに届く声量で伝えていき、認識するごとに【はい】と聞こえてくる。不思議な気分だ。まるで彼女と同棲しているような・・・は見栄の張りすぎか。友達とルームシェア、居候が増えた、そんなニュアンスがふさわしい。すべて伝え終えると、
【では白身魚のソテーにしましょうか。白ワインには白身魚やチーズ等が合うと知識にあります。しかしにんにくを少し使うので、食後の歯磨きにはご注意を。あと食後すぐの歯磨きは歯にも良くないので避けてください。できれば糸楊枝も使うといいでしょう。歯垢の蓄積は老後の入れ歯の数に比例してきますので】
いや、少し違うか。まるで上京した息子が気になって、様子を見に来た母親のような。
「気が利きすぎだよ」
【恐れ入ります】
もしくは凄腕のプログラマーと相棒のような。
「作ってる間何か音楽かけてくれよ」
【わかりました、では一曲・・・】
「お前が歌っても高度な暗号にしか聞こえないからな?」
笑いながら調理に取り掛かる。久々かもしれない。こんなに満たされたような気分になりながら一人の時間を過ごすのは。その後もへんてこなAIと疑似的な会話をしながら、夜が更けていった。次の日遅刻したのは言うまでもない。
はじめて切りよく終えました!次からは違う場面になると思います!




