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友人

「彼が死んで4か月ぐらい経った時に、久しぶりにあのゲームにダイブしてみたんです。そしたら死んだはずの秀人がそこにいたんです」


「え?なんだって?死んだ友達がゲーム内で生きていたって?交通事故時にゲームにダイブでもしていたのか?」


「いえ違います。普通に自転車に乗っているところをダンプに轢かれて死にました」


「……なのに彼はそこにいたっていう事か……」

僕はあまりの話に声が出なかった。

考えてみればゲーム内に取り残されるというのもあまりの話ではあるが……。


「まだ話は続くのよ。聞いて」

ゆかり先輩が話を続けるように弟に促した。


「で、僕は彼と付き合っていた杏奈をゲーム内に呼んで二人を合わせました。本当に二人は喜んでました。僕も二度と会えないと思っていた彼に会えたのでとても嬉しかったです」


「だろうねえ……」


「それからは暫くは、いつものようにゲームにダイブしては一緒にモンスター狩りをしてました。ある日、杏奈が『このままずっとここに居たい。ずっと秀人と一緒にいたい』と言い出したんです」


「僕と秀人はその意見には反対でした。それにそんな事は実現不可能だって思ってましたし……ところが、最初に意識が無くなって、ゲーム内から戻ってこれなくなった……いや、彼女の場合戻らなかったと言った方が正しいかもしれませんが……そう、意識が無くなって救急車に乗せられたのは彼女……杏奈です」


「なんと……」


「その日、僕はレベリングが終わるといつも通りネットからログオフしたんですが、杏奈はしませんでした。僕も秀人も何度も説得しましたが言う事を聞いてくれませんでした……そうしたら、翌朝杏奈が病院に運ばれったって話を聞いたんです」


「だから言ったでしょ。自分の意思で戻ってこないかもしれないって。事実うちの弟はちゃんと戻って来ているからね」

ゆかり先輩はそう言って今の話をまとめた。


僕はゆっくりとこの打合せ室にいる3人の顔を見回した。

「これって本当の事ですよねえ?」


ゆかり先輩も弟も安達も黙って同じように頷いた。


「それから……それ以降も、その杏奈って子にはゲーム内で会ったの?」


「はい。何度も会ってます。病院に担ぎ込まれた事も言いました。ヘッドギアももう被ってません。完全に接続は切れているはずなんですが、いまだに彼女はあの世界にいます」


「こうなった原因は分かっていないんですよね?」

僕は腕を組み考えた。


またもや3人が同じように頷いた。

安達が

「理論的な予想は出来ているが、まだ確証に至っていない」

とひとことだけ言った。


「その杏奈からなのよ。リアルの世界に帰らずにバーチャルの世界に留まる様になったのは……」

ゆかり先輩はそう言うと小さくため息をついた。


「で、そこでお願いなんだけど……」


「はいはい。もうなんだっていう事聞きますよ。ここに潜って秀人と杏奈に会ってこいっていうんでしょ?」

 僕はもう腹を括っていた……と言うより諦めていた。この状況でゆかり先輩が何を言うかなんて聞かなくても分かる。


「うん。そう。うちの弟も連れて行ってね」


「え?」


「だってそうでしょう?あんた秀人も杏奈も面識ないでしょう?」


「そりゃそうですけど……良いんですか?弟さん連れて行っても」


「元はと言えばこいつらが発端の様だし、さっきも言ったけどその発端の二人を知っているのも弟だし、今回のこのに関してもこいつの友達の秀人が何か知っているんじゃないかと私は思っている。でも弟一人で行かせたらこいつも帰ってこれなくなるという危惧は残るのね。だからあんたに弟の面倒を見てもらおうかと思ったのよ。分かったぁ?」

最後は何故か明るく話すゆかり先輩だった。


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