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「もしかしてこのコンピュータを開発したのはあなたですか?」


「基本的な構造理論は私が考えましたが、最終的には私のチーム全員の力で作り上げました。私だけの力ではないです。そして先人の科学者や技術者の努力があってこそのこの実機です」


 安達はそう言ってブレインズを眩しそうに眺めた。自分の業績を誇らずに淡々と事実のみを述べる……案外良い奴かもしれないと僕はその時思った。


「安達君、あなたにしては分かり易く説明できましたね」

ゆかり先輩が笑いながら安達さんを褒めた。


「ありがとうございます。私はいつも分かり易く話をしているつもりなんですが」

安達はそう言うと無表情のまま僕の顔を見た。

 仕事柄何となくは分かったつもりで聞いていたが、普通はあの説明では何を言っているのか分からんだろう……僕はそう思ったが敢えてここは黙っていた。



「天田君、彼も私の後輩よ。大学は違うけど多分君の同期になると思う」

ゆかり先輩はそう言ってこれを僕に紹介した。


「あ、そうなんですか。よろしくお願いします」

僕はその安達という男が同年代だと分かってちょっと緊張が解けた。


「こちらこそ、よろしく」

安達という男は無表情で声も抑揚があまりないが、不愛想ではない様だ。


「で、何ですか?僕にこのサーバー群を見せて……ゲーム内にダイブしろっていうんですか?」

僕は覚悟していた。

この先輩ならそれぐらいの事を平気で僕に命令するだろう。


「うん。良い勘しているわね、でもその前に会ってほしい人が居るんだ」

ゆかり先輩がそう言うと安達は黙って歩き出した。

その後を僕とゆかり先輩はついて行った。

サーバールームの隣の部屋へ続くドアを開けると、そこは小さな打ち合わせルームのようなこじんまりした部屋があった。

そこに高校生風の男の子が打ち合わせテーブルの奥に座っていた。


 彼は僕達を見ると椅子から立ち上がり頭を下げた。


「紹介するね。この人は私の後輩で今は警視庁に勤めている天田鉄平君。で、これね私の弟の研二。よろしくね」


「あ、篠崎研二です。よろしくお願いします」

その高校生は頭をちょこんと下げて挨拶をした。

先輩と違ってとっても素直そうな良い子に思えた。


「ま、座って」

ゆかり先輩と弟研二君の前に僕と安達は並んで座った。


「実はね。うちの弟もあのゲームやっていたんだ」


「え?そうなの?」

僕は驚いて弟君の顔を見た。


「はい」


「それでね。こいつから興味深い話を聞いたんで、君にも聞いてもらいたいと思ってここに来てもらったんだ」

ゆかり先輩は僕の目を覗き込むように見つめて話した。

ダメだ。この目に僕は勝てない。吸い込まれそうな瞳だ。


「何なんですか?その興味深い話って」

僕は思わず視線を外して聞いた。

ゆかり先輩は目で研二君を促した。



「実はあのゲームを僕達はβ版時代からやっていたんです。今から4年前です」

研二君はボソッと話を始めた。声は小さいが彼も姉と一緒にで声が通るので聞き苦しくはなかった。


「僕達?」


「はい。同級生の秀人と杏奈です」


「なるほど。でもあのゲームはカットオーバーしてまだ3年だろう?」


「はい。その前にβ版で1年近くやってました」


「ああ、そうか。ゴメン。話を続けて」



「実は……昨年の春に秀人が交通事故で死んだんです。杏奈は秀人と付き合っていたので落ち込みようは凄まじかったです。僕も小さい頃からの親友だったので本当に悲しかったです」


「それは辛かっただろうねえ」

僕はチラッとゆかり先輩の顔を見たが、もう何度か聞いた話なんだろう……全く表情も変わらずに聞いていた。


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