五章26話 師弟対決?
牽制に投擲用の武器を投げる、今回は盗賊から回収したボロい剣をとりあえず3本、まぁこれぐらいは師匠なら簡単に対応するだろうけど、続けて魔力を込めた槍を投擲と同時に魔法剣を発動させる。
「チェインライトニング!」
雷撃を纏った槍が先に投擲した剣にも雷撃を移し計4本の雷撃を纏った武器が師匠に向かって行く。
「クエイカー」
師匠の迎撃は魔法剣、剣を地面に叩きつけるとそこを基点に地面が隆起して俺の投擲した剣を弾き飛ばした。
「前よりは工夫はしてるみたいだが、それじゃやってることが一緒だぞ」
前の俺の戦闘方法を知っている師匠に同じような手で挑んでも簡単に対処されるか……。師匠の言うように、ちょっとはアレンジしているんだけどな。
「もっと、前とは違うってとこを見せてくれよ」
と、言われてもいつも通りやるしかないんだけどな。幸い師匠が様子見状態で本気じゃないから今のうちに全力で終わらせるのが良いかな……とは言え、師匠も油断しているって訳じゃない、寧ろこっちが何をやるのかを警戒して見てるんだから闇雲にやってもまともに攻撃が入らないよな……。
兎に角色々やってブレイカーをぶち込むか……なんか、師匠にならブレイカーぶち込んでも平気そうな気がするんだよな……。とりあえず鞘に収まったままの魔剣アンブレイクを起動状態にしておく。
「それじゃ、とりあえず行きますよ!」
愛用の剣を手に師匠との距離を詰める。師匠は俺の出方を見ているだけだから何の妨害も無く距離を詰めることができた。
剣と剣で何合か打ち合い、できるだけ師匠の意表を突くタイミングでポーチから予備の剣を取り出し二刀流に切り替える。
多少意表は突けたし手数も増えたけど師匠はきっちり対処してくる。元々の技量やこれまでの経験とかが俺じゃ師匠に敵わないって言うのはよく分かった。
「お前が複数の武器を用意してるのを見て俺も二刀流で手数と同時に扱える魔法剣の数を増やすってのは考えたんだがな、さすがに今の型に慣れ過ぎていて急に二刀流に変えるのは無理だったんだが、ソウヤは上手く馴染んでるみたいだな」
魔法剣の二刀流なんて手っ取り早い強化法ぐらいは師匠も思いつくか……師匠の場合は自分のスタイルを簡単に変えられなかったみたいだな。
「俺は剣を握ってから日が浅いですからね、訓練に付き合ってくれた娘の動きも良い手本になりましたし……アクセルブレード!」
師匠に対して二刀流でも足りない、ならばと右の剣を加速させる。
「速いがその分軽い」
「分かってますよ! ヘビィブレイド!」
左の剣を振り上げたと同時に魔法剣で重くして振り下ろす。振り下ろすだけなら剣が重くても問題無い……って思ったけど加重状態の剣にそれ程不便さを感じないな……普通に振り回せそうだ。これも相田に匹敵しているらしい能力値のおかげだろうか? なら、経験とかの差が有るとは言え俺と平気で打ち合っている師匠はどんな能力値なんだ? ブラックドラゴンと魔王の血を引いてるだっけ? ドラゴンと魔王のハイブリットって考えればおかしくは無いのか?
「師匠も大概な生い立ちですよね?」
「血を引いてるってだけだ、そもそも、ゴルディリオンは亜人と魔王の国だからな、そんなに珍しくも無い」
リリとかクロトとか亜人だし、師匠も竜人って奴だよな? いや、血を引いてるだけならリミュールと似たような感じか? 問題は魔王の血がどこまで師匠に影響しているかだよな。
「師匠みたいなのがゴロゴロ居るとかゾッとしないですね!」
師匠以外の魔王の系譜が出て来ても相田に任せよう。
「安心しろ、魔王の血縁で戦場に出てるのは俺以外だと周りのゴーレムを操ってるエルフと魔王の血を引いてる奴ぐらいだ」
何の安心も出来ない! まさかこのゴーレム群を一人の術者が操ってるのか!? どんな魔力してるんだよ!? ゴーレムを操っている術者の制圧に向った玲奈と田嶋は大丈夫だろうか?
「ちょっと気になったんですけど……魔王の子孫がドラゴンとかエルフとかと結ばれた系ですか?」
「いや、魔王がドラゴンとかエルフとかを喰い散らかした系だな……」
師匠、言い方を抑えて下さい……でも、なんか魔王を倒すのにやる気が出てきた。聖剣持った相田って戦力も有るし、もう話し合いとか良いんじゃないか? いや、異世界人としては争いは避けた方が良いんだろうけど、これまでに散々殺ってるからなぁ……。
「まぁ、魔王のことは今は置いておけ、目の前の相手をどうにかしないとだろ? ほら、こっちからも行くぞ!」
受けるだけだった師匠が攻めに転じた。ちょっ! 魔法剣の無詠唱って! 何の魔法剣を使ったのかよく分からないけど、魔力を帯びた剣が左の剣を弾き飛ばす。
魔法剣で重くなっている筈の剣を弾かれたって事は軽くなっている右の剣なんて簡単に飛ばされると思い咄嗟に剣を引き後ろに下がった。
思った通り、師匠は右の剣も狙っていたようで、俺の剣のあった場所を師匠の剣が薙いで行く。
弾かれた剣は捨て置き、新たに予備の剣を取り出して構える。
「相変わらず、何本持ってるんだよ……」
「新品の物なら馬鹿みたいに持って来ましたよ……見ますか?」
シルバーブルを出る前に星月が適当に作った武器、主に剣を大量にポーチに放り込んで来たからな、あいつ能力が鍛治なせいも有って適当に作った武器でも余裕で魔法剣に耐えられるレベルなんだよな。使われずに眠ってた試作武器なんかも手当たりしだい持って来てやった。無断で……。
玲奈や冬子は俺と合流する前から星月とか武器防具生成能力持った奴の作った物で装備を固めていたんだよな……羨ましい限りだ、急いでいたのもあって防具の方は何もパクってこなかったからな……。
「師匠、さっきの魔力砲食らって見ます? 準備できたみたいですけど……」
「準備時間が要るのかよ、だが、一度見た技をそう簡単に食らうと思うなよ」
あ、チャージ時間が要るのに気づいてなかったのか……黙ってブラフに使った方がよかったかな……まぁ、ブレイカーさっきゴーレムを薙ぎ払うのに使ったのを師匠に一度見られているからな、簡単には食らってくれないだろうと思って挑発してみたんだけど……失敗だった。なら、師匠の知らない魔法剣でいってみるか……。
「まぁ、師匠には簡単に通用しませんよね……とりあえず、他の手で行きますよ」
「なんかお前の俺に対する評価が高すぎる気がするんだが、まぁいい、で、何を見せてくれるんだ?」
師匠は戦う前に最後の稽古って言っていたけど……ホントにそんなノリだな。
「まぁ……とりあえず、クロスブレイド!」
交差させた左右の剣を一気に振るう、左右の剣は同時に魔法剣を発動させ、合わさって1つの魔法剣として効果を発揮する。
交差した魔力の斬撃が師匠に向かって飛ぶ、けど、その威力はただ魔法剣を2回撃っただけの物を遥かに超えているはずだ。
「何かと思えば、手数を生かしただけか? ……いや!」
俺の飛ばした斬撃を迎撃しようとしていた師匠は、迫り来る斬撃の威力に気が付いたのか回避行動に切り替える。師匠に避けられた斬撃は俺たちを遠巻きに見ていたゴーレムの胴体を半ばまで抉り取った。
「ただ2回撃っただけって訳じゃないみたいだな」
「魔法剣は武器によって込められる魔力の限界が有りますからね……せっかく二刀流なんてやってるんだから2本の剣で1つの魔法剣を使ってみるぐらいは試しますよ……」
「験した結果が、あの威力か……でも、魔王を相手にするならまだ足りないな」
いや、魔王は相田か田嶋が何とかするから、俺は戦わないし話し合いにも参加しないと思うんだけど……。
「まだ何か有るか?」
まぁ、有るには有る……ブレイカー以外の切り札ってやつが……。もう最近気軽に撃ちすぎてブレイカーが切り札って感じじゃなくなってるから俺だって色々考えて試したりしているんだ……でも、本番で験した事が無い切り札だからどれだけの威力が出るかも分からないんだよな……。
「なんか躊躇ってるみたいだな、まぁお前ばかりに手札を曝させるのも公平じゃないな。よし、俺も取って置きを見せてやる……しっかり見て、避けろよ」
そう言って何か呟く師匠の前に、黒い魔法陣が展開される。魔法陣? 師匠って魔法使えたのか?
魔法ならアンサンブルで斬るか? いや、なんか師匠の剣にも魔力が込められている……多分俺が2本の剣で1つの魔法剣を発動させるのと同じような事が魔法と魔法剣でできるんじゃないか? これは斬って何とかなる規模なのか分からないから師匠の言ったように避けた方が良いかな……。
師匠の魔法の発動前に魔法陣の正面から離脱するように駆け出す。
俺が駆け出した直後、師匠は剣で魔法陣を叩き割る、砕けた魔法陣は剣に吸収され刀身に黒い文字を浮かび上がらせる。
「ブレスソード!」
師匠の咆哮と共に、剣から黒い魔力の奔流が渦巻きながら放たれ、俺のすぐ隣を突き抜けて行った。
「黒いブレイカー……」
色以外の見た目と威力が似ている……ブレイカーを撃った時と同じ様にさっきまで俺の後ろの方に居たゴーレム郡が一直線に綺麗に消えてしまっている。
「竜魔法って分かるか?」
避ける事が分かっていた様に平然と聞いて来る。いや、避けろって言ってたし、師匠が避けられるように撃ったんだろうな……。
で、竜魔法? チンピラドラゴンの使ってた飛行補助魔法とかか?
「飛行補助魔法……」
「お、知ってるのか、今俺が使ったのはブレスの威力増強だな。普通の人間、異世界人でも竜魔法は使えないから真似は出来ないだろう」
ブレスって言うか、魔法剣の威力が上がっていたんだけど……師匠にとって魔法剣がドラゴンのブレスって扱いなのか?
「さて、もっと威力を上げてもう一発、次は当てるぞ。出し惜しみせず全力を見せろ。耐えるか打ち勝つか出来たら俺の負けで良い、引いてやるよ」
師匠はそう言って準備を始めてしまう。
正直、剣の技量も戦闘経験も師匠に及ばず、頼りのブレイカーも師匠の黒いブレイカーを見た後じゃ決定打にならない、俺の勝てる要素は無いに等しいのだけど、師匠が勝利条件を出してくれた。
俺は乗る以外に選択肢が無いけど……まぁ、やるしかないか。
「どれだけの威力が出るか分かりませんよ……」
一応言ってみるけど、師匠は既にさっきの黒いブレイカーを撃つ気で準備を始めている。宣言通りさっきよりも威力を上げているのだろう展開される魔法陣がさっきよりも大きく、そして強く輝きを放っている。
「俺も殺す気でやるんだ……お前も遠慮する必要は無い」
言ってはみたけど師匠を相手に穏便に勝とうなんて無理なのは分かってる、師匠の言う通りこっちも殺る気で行かないと勝てる訳が無い……。
「分かりました……」
遅れ馳せながら俺も切り札の準備を始める……とは言え、切り札もまた魔法剣だ。準備もそれほど手間ではない。
俺はエバーラルドからずっと使い続けている愛用の剣に告げる……。
悪いが、ここで散ってくれと……。
長く共に戦い続けて来た剣が応えてくれる、俺の意思を汲んでこの命を燃やし尽くそうと云う意思を返してくれる。
そして俺は剣に魔力を込める。
「おいおい、そんなに魔力を込めたら……」
魔法剣は武器が使い手の意思を汲んで効果を発揮する技だ。でも、武器により込められる魔力に限界が有る……そうなると、当然威力にも限界が有る。だから俺は限界以上に魔力を込めても武器が壊れないイメージを重ねた。結果は散々で魔力を込め過ぎれば当然のように武器は壊れた。でも、武器ではないけど一度だけ……限界以上の魔力を込めて少しの間だけ能力が向上した物が有る。マギナサフィアで借りた魔法車、あれだけは限界以上の魔力を込めて数瞬の間、その魔力に見合った働きをしてくれた。
「……壊れない?」
だから俺は訓練時間の合間なんかに限界以上に魔力を込める方法が無いかを色々験した。
で、見つけた条件が、ある程度使い続けて俺に馴染んだ武器であること……そうでないと剣が応えてくれない。そして、長く使い続けていればいる程、その込められる魔力の量は増す。
今魔力を込め続けている剣は俺の持っている武器の中で一番長く使っている物だ。魔力も、今の俺の残り魔力が枯渇寸前になるまで込められる。能力値的に相田に並んでいるらしい俺の魔力が枯渇寸前まで込められるんだ……正直、どれだけの威力が出るのか想像もできない。
「壊れませんよ、この魔法剣を撃ち終わるまではね……」
撃ち終わった後は必ず壊れるけど……。
「さっき言っていた魔力砲で来るかと思ったんだが……面白い! さぁ、撃ち合うか!」
俺も師匠も一定の距離を空け、最後の一撃の準備は整った。
「行きます! 暴走魔法剣・ラストブレイカー!」
「ああ来い! フルブレスソード!」
俺の最強の魔法剣のイメージ、ブレイカーそのままに威力を増した暴走魔法剣と師匠の先程よりも威力の増した黒いブレイカーが俺たちの間でぶつかり合い……爆発した。
うあ~身体中が痛い……最大威力の攻撃をお互い同時に撃ち合うには距離が近すぎたんだ……。致命傷って程の物は無いけど身体中が痛くて動きたくない。
互いの魔法剣同士がぶつかり合い爆発で吹飛ばされた。多分反対側で師匠も吹っ飛ばされているだろう……。いや、師匠なら避けるか?
兎に角、自己治癒力が強まるように意識してみる、チンピラドラゴン曰く、これで放って置くよりも早く治るらしい。
「あ~、何とか痛みが引いた……」
暫く回復に専念していると、傷自体は治りきっていないけど痛みを無視できる程度には回復した。
右手には柄の感触、腕だけ動かして目に見える位置に持ってくると、刀身が砕けて柄だけになった剣の成れの果て、十分俺の意思に応えてくれた。ありがとうと心の中で呟いて残った柄をポーチにしまう。
身体を起こして俺と師匠の魔法剣がぶつかり合った場所を確認すると、そこには結構なでかさのクレイターができていた。
クレイターを挟んだ向こう側に倒れている師匠も見える。どうやら、ししょうでもさっきのは避けられなかったみたいだ。
ポーチから出した新見の特製回復薬を一気に呷り回復を早め、なんとか立ち上がり師匠の元に向かう。
「師匠~、生きてますか?」
全身傷だらけで大の字になって倒れていた師匠が目を開き幽霊でも見るように俺を見る。そんな目で見られるのは心外だけど……よかった、師匠も生きていたみたいだ。
「無傷って……お前……」
いや、怪我自体は師匠のとこに来るまでに粗方塞がったけど、装備は結構ボロボロ、服だって破れて血が滲んでいる。これを無傷って見るのは……師匠も怪我で混乱している?
「とりあえず飲んでください」
新見の回復薬を師匠の口に突っ込む、途中一度咽たけど何とか全部飲みきってくれた。新しく取り出した回復薬を……ついでだから全身にぶちまけておこう、これで外と内から回復が行われて師匠も早く回復するはずだ。
「何だこの回復薬……」
回復した師匠が身体を起こして最初に発した一言。
「そういう能力持ちの異世界人作ですよ、市販の物と一緒に考えないでください」
「それでも効果が有りすぎるだろうが……」
なんか納得していないっぽいけど俺にどうこうできることでも無いしな、そういう物だと思って便利に使うしかない。
「まぁ、この効果ならすぐに動けるようにもなるか」
俺が平然と動いているのは、新見の回復薬以外に生命竜の回復力も手伝ってるんだけど、師匠は回復薬のおかげだと言う事で納得したみたいだ。
「それにしても、お前の俺に対する評価、高すぎないか?」
ん? どういうこと?
「俺は最後の一撃勝つ心算で撃ってなかった。そして、魔法剣は使い手の意思を汲んで効果を現す……それなのに、結果は両者の魔法剣がぶつかり合って大爆発。ソウヤ、お前、師匠である俺に勝てないって思ってただろう? 俺が勝つ心算無く撃ってる魔法剣に勝つ心算の魔法剣をぶつければ、普通は勝てる筈なんだよ……」
う……確かに、俺は師匠に対して超えられない壁のような物を感じてしまっているかもしれない。でも、それは仕方ない事だ。魔物に襲われていた俺の命を助けて、この世界で生きる術を叩き込んでくれた師匠に対して本気の敵意なんて抱ける筈も無い。表面上は師匠に勝つって意気込んでも心の奥底では師匠には勝てないって思っていたんだろうな……それが魔法剣にもろに出ていると……。
「お互い勝つ気が無いから俺たちの魔法剣は相打って爆発した。引き分けって所か、まぁ、あれを対処できたんだ、俺の負けだな」
「いや、勝つ気無かった人が何言ってるんですか……」
「それは、無意識かもしれないがお前もだろうが、それに、俺がソウヤの成長具合を様子見している間にゴーレムの増援が全く来なくなったのには気づいているか?」
え、そうなの? 師匠と戦うので一杯一杯で全然気が付いてなかったけど……。
「その様子だと気付いてないか、まぁいい。でだ、多分ゴーレムを作って戦場に送り込んでいた俺の弟が誰かにやられたんだろうな」
あ~、ゴーレムを生み出していた術者なら、対処に出た田嶋か玲奈がやったかな?
「そんで、クロトも捕らえられている現状だと、この戦場の勝敗は決しただろ……」
「まぁ、そうですね……じゃぁ、師匠も砦の方に来ます? 多分その弟さんも俺の仲間が捕らえて連れて来ると思いますよ……てか、師匠と一緒ならゴーレムに襲われないんですよね? とりあえず一緒に来てください」
敗者は勝者に従うか、と言って了承してくれた師匠と砦に向かって歩き出す。
師匠が言うには相手方の戦力はほぼ押さえたらしいから、これでこの戦いも終われば良いんだけどな。




