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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
五章 異世界人・勇者
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五章24話 魔法忍者(伊勢玲奈)

 私に任された役目は、今周囲をワラワラと徘徊している魔物を操っている魔法使いをしばく事。

 周囲の生き物に気付かれなくなる能力のおかげで障害は何も無いといっても良いけど、魔法使いが何人居るか分からないので同様の能力を持っているたー……颯太と手分けしての作戦行動になっている。

 本当は蒼也がセントコーラルで預かった聖剣を届けに行くのに着いて行きたかったのだけど、魔物に気付かれずに動き回れるような能力を持っているのが私と颯太だけだったので却下された。

 蒼也は無意識になのか、私たちや本人が気が付かない内にいつの間にか無茶をしているから側で見張っていると決めたのに……と、言うか私が側に居たいだけなのだけど。

 兎に角、早く魔法使いを見つけてしばき倒して終わらせてしまおう。


 う~ん、周囲の魔物の数が減ってもう殆んど居ないのに魔物を操っている魔法使いらしき姿が見当たらない。どこかで見落とした? 広い戦場だから全ての場所を見られていない、それでも私の担当する範囲は大体見て回ったと思うんだけど……。

 もしかして、魔物を操っている魔法使いは全員颯太の担当する方に固まっている? それだと何の為に蒼也から離れたのか分からなくなるんだけど……。 それならそれでさっさと蒼也の所に戻ってしまっても構わないんじゃないかな?

 颯太の方が大変かも知れないけど、よく訳知り顔で偉そうな事言っているんだから大丈夫だよね?


「む! な~んか怪しい感じがするよ~!」

 

 え? 突然周囲の魔物の声とは違う声が聞こえて来た。声のした方は……上?

 見上げると腕が翼になっている女の子が飛んでいた。そして、羽ばたく彼女の翼から何かが落ちて来る。

 その何かは私の通って来た後方に落ちて、その瞬間に周囲の魔物を巻き込んで爆発した。

 爆弾? こんな所に居るのだから敵なんだろうけど、味方の魔物も巻き込んで爆破して来るとか……あの子なんなの!?


「う~ん、気のせいかな~? でも、まだ怪しい気配がするよ~えいえい!」


 また爆弾を落として来た! 今度は正確に私の居る位置に落ちて来ているけど、あの子私に気が付いている? 今回は回避しないと後方で吹飛ばされた魔物と同じ運命を辿る事になりそう……。

 兎に角落ち着いて退避、魔物が吹飛ばされて開けた後方に下がり爆撃を回避する。


「んふふ~、やっぱりいたぁ!」


 これまで漠然と私の居る方向を見ていた翼の女の子の目線がはっきりと私に向けられる、どうなっている? 能力は切っていないし、効果が切れるような行動も起していないはず……。


「早く出てきちゃいなよ~、居るのは分かってるよ~」


 能力は切れていない、翼の女の子の視線は私に向けられているけど、姿は捉えていないみたい。

 どうする? どういうわけか私の気配に気が付いたみたいだけど姿は見えていない、ならこのまま逃げる?


「出てこないの~? 煙や土埃が不自然に動いてるから居る場所は分かってるんだよ~」


 …………煙? 確かに私の周囲には翼の女の子の爆撃で煙なんかが舞っているけど……。

 そう言えば颯太が隠密を使って水に入ったりすると人の居る部分がぽっかり空いて見えるって言ってたけど……。


「煙でも一緒!?」


 私の居る部分を煙が避けて通っているから不自然に見えているんだ。


「や~っと出て来たぁ~」


 声を発してしまったから能力が解除されてしまった。もうここに居る事はばれていたから構わないのだけど。まさかばれるとは思ってなかった……颯太が魔王軍は魔物や獣人が多く、獣人は人より五感や身体能力が高いって聞いていたからもっと警戒すべきだった……今更なんだけど。


「それじゃ~お掃除しちゃうね~」


 そう言って翼の女の子はその翼から次々と爆弾を投下してくる。

 あれってどうなってるの? 颯太のアイテムボックスみたいな能力なのかな?


「この! 下りて……来い!」


 上からの爆撃から逃れながら手裏剣を投擲してみるけど距離が有りすぎるのか、とどくまでに減速してしまっているのかあっさりと回避されてしまう。


「それなら!」


 翼の女の子が投下した爆弾を狙う。導火線とかが付いていない爆弾だから、多分衝撃で爆発するものである事が予想できる、投下直後の爆弾を爆発させれば翼の女の子を巻き込めるはず……。


「ふふん~、そうはいかないよ~」

「なっ!」


 翼の女の子は私の意図を見抜いて爆弾の投下を止め翼を畳み急降下して来た。 


「でも! そっちから来てくれるなら好都合!」


 牽制も兼ねて手裏剣や苦無を投げる。距離が縮まっている分当たり易いと思ったんだけど、翼の女の子は彼女に似合わない無骨な金属製のブーツで全て弾いてしまう。

 そしてそのまま私に向って急降下を……っと、これは不味い!

 翼の女の子の勢いが重力加速とかで凄い事になっている、あのまま金属製のブーツで踏みつけられたらただじゃ済まないのは簡単に予想できる。

 慌てて回避行動をとり直撃は避けられたけど、さっきまでの爆撃を凌ぐような衝撃で吹飛ばされてしまう。


「なんなの!? 自殺?」


 自ら転がるようにして衝撃を殺し、起き上がって翼の女の子の着地点を確認する。

 あんな上から減速もしないで地面に激突するなんて自殺行為以外に考えられない。それに見合った殺傷力は発揮できたかも知れないけど、私は避けているし……こんなの割に合わない。

 衝撃で舞った土埃が視界を遮っていたれど、それもすぐに巻き上げられるように不自然に吹き飛ぶ。

 開けた視界の先には踏み潰しの衝撃の凄さが窺える地割れした窪み。そこに翼の女の子の姿は無い……。


「もう一回行くよ~」


 全く翳りの無い彼女の声は再び上空から聞こえて来た。

 あの衝撃で無事なの!? 獣人は人より丈夫だって言っても限度があるわ!

 でも嘆いている暇は無い、翼の女の子は再度急降下を始めてしまった。


「奥の手……使うしかない」


 せっかくできるようになったんだから最初に蒼也に見せたかったのに……でも躊躇っている場合じゃないよね! 急いで、でも落ち着いて手裏剣を取り出す。


「そんなちゃちな飛び道具じゃ~無駄だよ~」


 私が今装備している武器は忍刀から苦無や手裏剣、鍵爪にいたるまで全て異世界人の中で鍛治師の称号を持つ星月の作った物だ。武器として決してちゃちなんて言える物じゃない。

 だからこそ耐えられる。


「火遁……爆炎刃(ばくえんじん)!」


 魔力を込めた手裏剣は先程と同じ様に翼の女の子のブーツに弾かれるかに見えたけど、ブーツに接触した瞬間、私の思考を汲んだ手裏剣は爆発を起こし衝撃と炎を撒き散らせる。


「きゃぁあああああ!」


 思わぬ衝撃を受けた翼の女の子は本来の着地目標の私とは離れた位置に墜落した。

 爆炎の衝撃で落下速度が落ちたのと、あのブーツ結構重いみたいで足から落ちていたみたいだからさっきと同様に大したダメージは無いと思う、だから追い討ちが必要よね?


「雷遁……雷穿刃(らいこうじん)


 新に取り出した手裏剣に魔力を込めて、発動の意思と共にまだ落下の衝撃から立ち直れていない翼の女の子に向って投擲する。

 前に颯太が言っていた。飛行タイプには雷が効くって……。

 颯太の戯言を信じた訳じゃないけど、痺れさせて自由を奪うっていうのは良い、先の作戦会議でもこの戦いは話し合いで終わらせたいから相手はできるだけ殺さないようにって話しになっていたから……。


「ひぐっ!? あ……やぁあああああ!」


 手裏剣が翼の女の子の翼に浅く刺さり、そこから気絶する程度に調節された雷撃が流れる。

 暫く痙攣していたけど、雷撃が止まると女の子はぱたりと倒れて動かなくなった。


「死んでない……よね?」


 一応確認しておこう……。


「きゅ~……」


 きゅ~って……気絶しながらそんな声出している人なんて始めて見た。

 死んではいないみたい、使用者の意思を汲んで効果を現してくれる技術だから大丈夫だとは思っていたけど、使えるようになったのは数日前、実戦で使うのも今回が初めてだから自信なんて無かった。でも、上手く使えたみたいだから、これで蒼也に見せても大丈夫。

 私が魔法剣を使えるようになったって知ったら驚いてくれるかな?

 ふふ~ん、早く蒼也の所に戻りたいなぁ……。

 とりあえず気絶した翼の子は縛り上げて……放置は駄目かな、周囲の魔物は爆殺されて瓦礫と化しているけど他の魔物が来たら救出されてしまうかも、面倒だけど持っていくしかないかな……近くに、私の探索していない範囲に颯太が居ると思うから押し付けよう。敵の女の子って分類ならリリも居るし、颯太に押し付けておけば大丈夫、多分……。

 このまま蒼也の所に連れて行ってライバルが増えても困るから先に颯太の所に寄って行かないと……。

 翼の女の子も含めて能力を使い探索を再開した。そして、私の担当範囲は調べ終わったから颯太の方へ……結局私の担当範囲には魔法使いは居なかったから、魔法使いは全員颯太の方って事になる。

 …………颯太一人で手に追えるのかな? まぁ、翼の子を押し付ける用事も有るし、様子を見に行くには丁度良いかな。


「う……う~ん? うん? あれ? 何これ~? どういう状況~!? 翼も動かせないし! なんだかお尻と背中が痛いんだけど!!」


 それは縛って引き摺っているんだから仕方ないと思う。でも、とりあえず……。


「五月蝿い、黙って……」


 翼の子が声を出したせいで能力が解除されちゃった。今なら回りに魔物は居ないから問題無いと言えば問題無いんだけど……。

 ちょっとイラッとしたから乱暴に黙らせた。

 もう、早く颯太に押し付けよう。

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