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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
五章 異世界人・勇者
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五章17話 聖剣の在り処

 パリンパリンと違和感丸出しの音が砦に響く、砦に設置した魔法兵器がリミッターをぶち抜いた魔力の込め過ぎによって砕け散る音だ。


「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺が何をやっているのか分からずに見守っていた砦に残っていた兵士たちの悲鳴が上がる。

 まぁ、田嶋がここにある魔法兵器が数回の使用で爆発すると説明したのだが、全く信じなかった兵たちが悪い。面倒になったのでこっそりと田嶋に一言言って強行手段に出た。何のことは無い、魔法剣士がリミッターをぶち抜いて魔力を込め過ぎる事によって起こる魔法道具や魔法兵器の破壊だ。どんどん行こう。


「や、止めろ~~~~~!」


 遅まきながら俺を止めようとした兵士たちは、田嶋の麻痺毒によって行動不能にさせられた。


「ふぅ~」


 一仕事終えて、掻いてもいない額の汗を拭う動きで砦中の魔法兵器の破壊作業は終了した。


「お疲れ~、前に来た手紙にも書いてたけど、これが魔法道具や魔法兵器の破壊方法か~、魔法剣、俺も覚えるかな」

「そっちも、兵士たちを止めるのお疲れ。

 魔法剣を覚えるのは止めないけど、前に玲奈と冬子が習得しようとした時は全く上手くいかなかったぞ」


 前にも至った答えだけど、本来熟練した者が無意識に至る領域の技術が必要になってくるんだ、意識して習得しようとしてもそう容易ではない。俺の場合は多分相性がよかったんだろうな。


「制圧、完了」


 田嶋が受け持ったのとは別ルートから俺の魔法兵器破壊行動を止めようとして来る兵たちを止めていた玲奈が戻って来た。


「いや、制圧しに来た訳じゃないからな」


 最近玲奈が過激になってきている気がするんだが……いや、結構元からだったな、気にしなくてもいいか。


「で、これからどうするんだ? なんか完全に敵視集めちゃってるみたいなんだが……」


 近くで麻痺している兵士が凄い睨んできている。


「いや、でもあのまま魔法兵器を使う訳にはいかないだろ?」


 まぁ、そうなんだけど……自分たちが利用している勇者の言葉を真っ向から疑ってかかるとか、シルバーブルの兵士もどうしようもないな。


「とりあえず白山だけ残して相田たちに合流するか」


 シルバーブルからこの砦に来る際に、あっちで江ノ塚に壊されないようにある程度回復した白山は連れて来たけど、肉体的にも精神的にも未だ戦える状態じゃ無さそうだしな……。


「それに、早く相田に合流しないと飯本が暴走しそうだ」

「あれが恋する女って言うのは怖すぎるんだけど……大概の奴は見た目に騙されて痛い目に合ってるみたいだが、放っておくと変な勢力を作られそうだよな」


 飯本の親衛隊とか……元の世界でも居たよな、相田を影から亡き者にしようとしながら抜け駆けしようとした仲間も容赦なく叩き潰す危ない集団……怖過ぎる。


 シルバーブルでの話し合いも大体終わり、残った案件は江ノ塚に任せて俺たちはブロズ荒野で魔王軍から奪還したという拠点の砦まで来ていた。

 メンバーは俺、田嶋、白山、玲奈、冬子、飯本、リリの7人だ。

 江ノ塚は王の代理としてシルバーブルに残った。今のあいつの見張りは幼馴染の暁が受け持っている。暁は治りきっていない白山の事も気にしていたけど、寺坂たち屑グループの居る戦場に江ノ塚を戻すのも、白山と江ノ塚を一緒に残すのも拙い事を説明して今の形で納得してもらった。まぁ、今まで白山たちがやっていたことを考えれば、暁も納得しない訳にはいかないだろう。

 リミュールは残りの話し合いと停戦の連絡が行っている戦場が落ち着いたら三国とシルバーブルの残兵を纏めてこっちに参戦する予定だ。


「ソウタ……何処ですか……」


 は? 突然目の前に綺麗な女の子が現れた。本当に突然で意味が分からない。


「うお! セリアじゃないか、お前が居るって事は相田たち戻って来たのか?」


 そうなのか? それならさっさと飯本の暴走が止められるな。


「ソウスケたちはまだ戦場です。今は地平を埋め尽くす程のゴーレム軍を前にしている所です。ですから! 早く私の本体を出してください!」


 地平を埋め尽くすゴーレム軍って……やばくないか?

 俺がすぐにイメージとして浮かんでくるのは、マギナサフィアのアホ兄弟が作った魔法兵器のゴーレムだけど、師匠に聞いた話では、魔物じゃないけど地属性の魔法で産み出すゴーレムも居るんだよな。


「ちょ、ちょっと待てって! 訳が分からねぇから順を追って説明しろ! まずなんで相田が居ないのにお前がここに居る、ある程度離れて行動はできるみたいだったけど、聞いていた今の戦場とここじゃ距離が離れすぎてるだろ?」


 田嶋の言い方だとこの美少女は相田関係か……なんと言うか、あいつはこの世界でも美少女引っ掛けてるんだな。無自覚なんだろうけど、天然誑しなんて持ってても厄介だとしか思えない……。


「私の本体がソウスケに近付きすぎた為、私が引き寄せられました。

 ここに、ソウタたちが居る場所に引き寄せられたという事は、貴方たちが持って来たのですよね?」

「本体? 聖剣エクセリアの精霊の本体って言ったら聖剣か? そんな物……」


 そう言えば有るな、セントコーラルでティルに託された物が有る。俺じゃ使えないみたいだから今もポーチの中に眠っているが、セントコーラルを発つ前に聞いた名前は救世(クゼ)の聖剣だった筈なんだけど、聖剣エクセリア? 名前が違うっポイけど同じ物なのか?


「これか?」


 とりあえずポーチから預かっている聖剣を出してみる。


「それです!」

「有るのかよ!? なんで高深が持ってるんだよ!」


 何でって言われてもな、偶々としか言い様が無い。


「セントコーラルで王子に預かった。召喚された奴の中で使える奴が居るんじゃないかって」


 この感じだと相田が使えるみたいだな、まぁ、想像通りと言った所か。


「早く、ソウスケに届けてください!」

「急かすなよ、チラッと聞いただけじゃやばそうってことしか分からねぇから相田たちの状態を詳しく話せ」


 セリアって子相当焦ってるけど大丈夫か?  地平を埋め尽くすゴーレム軍って聞いてやばそうだとは思ったが……。


「そのままの意味です! 魔王軍が大量のゴーレムを戦場に投入してきました! いくらソウスケたちでもあの数には対応し切れません! 私の本体がソウスケノ手に渡ればまだマシになる筈です!」


 聖剣を持った勇者(相田)でもマシになるって程度なのか? 地平を埋め尽くす量って言うのも誇張って訳じゃ無さそうだな。


「術士系の勇者が高威力の術を使いながら、魔法兵器の有る砦まで撤退するといった作戦を話している所でこっちに引き寄せられてしまいましたから、その後どうなったのかは分かりません」


 その魔法兵器の威力がどれ程の物か分からないけど……。


「その作戦で使う予定の魔法兵器って……」

「壊したな」


 どの道数回の使用で爆発するんじゃ使えないけどな。


「相田たちはゴーレムの数を減らしながら戻って来てるのか? 砦の魔法兵器を当てにして?」

「作戦が変わっていないなら、そうですね」


 魔法兵器の代わりか……俺の持つ手だとブレイカーが有るが、連発は無理だし……相田たちができるだけ数を減らしてくれる事を願うしか……ん?


「ゴーレムを減らしながらの撤退戦って……意味無くないか?」

「ん? どういうことだ?」

「いや、ゴーレムって多分魔法で産み出したゴーレムだろ? 魔法兵器の方だったら壊せば良いけど、魔法で産み出した方は魔力さえあれば補充が利く……」


 で、この世界には魔力を回復する薬とかも存在する。いくらゴーレムを倒しても、ゴーレムを産み出している術者を倒さないと次から次へと補充される事になる。


「ソウタ! 急いで私をソウスケの所に!」


 セリアが更に焦りだしたな。待っていても相田たちは戻って来るんだろうけど、その時は大量のゴーレム軍団と一緒にだ……飯本が居るから結界内に逃げ込めば防御はできるんだろうけど、何か手を打たないと詰むな。


「セリアって言ったか? とりあえず聖剣を相田に届けたらどうだ」


 ゴーレム軍団を何とかする作戦は考えないといけないけど、先に聖剣を相田に届けてもらおうとセリアに向って聖剣を差し出す。


「う……すみません、自分で自分を運ぶ事ができないのです。ですから誰かにソウスケノ元まで届けて欲しいのです。お願いします」


 聖剣の精霊って言うのだどういうシステムなのか分からないけど、そういうものなんだろう。なら、誰かが間に届けなくてはいけないけど……。


「飯本で良いか?」

「待て、飯本は能力的に居残りだ」


 いや、あの暴走しそうな飯本を砦に残して行くのか?

 

「敵の真ん中で下手に結界張って飯本の結界しか防御の無い拠点を作られても困る」


 ああ、飯本の結界の弱点も考えれば、確かに拙いな。


「だからまぁ、相田へ聖剣を届けるのは高深に任せて良いか?」

「まぁ、預かったのは俺だし、構わないけど……」


 田嶋が届けた方が早いと思うぞ、もしくは玲奈か。


「俺と伊勢はゴーレムを産み出している術士を何とかする、隠密でならゴーレムを無視して突っ切れるだろう?」


 ああ、田嶋と玲奈はそっちを何とかするのか、なら残ってるのは俺か冬子かリリになるけど、その中じゃ俺が適任か……。


「えっと、タカミでしたか? 急ぎましょう!」

「ソウヤでいい。とりあえず相田たちの所に行けば良いんだな、田嶋、玲奈、術士の方は任せた」


 田嶋と玲奈を残して砦を出る。他の皆への説明とかは任せてしまおう。


「セリア、相田の居る方向は分かるか?」


 ちなみに聖剣は邪魔なのでポーチに戻した。

 それでもセリアは消えたりはしない、まぁ、元々聖剣がポーチに入っている時点で出て来ていたからな。


「はい、聖剣に固定されて戻れませんけど、ソウスケとの繋がりは変わりませんから」


 なら入れ違いにもならないだろう。

 とりあえず急ぐけど、結構な距離になるだろうからペース配分考えないとな……前みたいに全力で走り出して早々にばてる訳にも行かないしな。

 チンピラドラゴンが一緒に来てくれていれば移動が楽なんだが、せめて魔法車が有ればなぁ……。

 無いものを強請っても仕方ない、できるだけ急ぐとするか……。


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