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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
一章 シルバーブル・努力の時
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一章7話 魔法剣

「いつも師匠が使ってるそれ魔法ですか?」


 今日も今日とて野営中、剣を四方に突き刺して作った結界を確認する師匠に前々から気になっていた事を訊ねた。

 今日は師匠と修行の旅を始めてから一月ぐらいか? 本来馬車で10日程の道のりをあっちへ行きこっちへ行きしながらまだ半分ほどしか進んでいない。 その分強くなっていると言う自覚はあるので時間が掛かっている事については全く問題無い。それよりも魔物の巣を壊す時や、野営の度に師匠が使う魔法?が気になってしょうがない。


「ん~、そうだな、そろそろソウヤにも教えておかないと別れる時までに使い物にならなくなるか……」


 どうやらこの魔法?を俺に教える事は師匠の中の修行プランに入っていたみたいだ。


「熟練の剣士が剣で城壁や魔法を斬るって話は知ってるか?」


 当然そんな話は知らないので首を振って否定する。


「そうか、んじゃその説明からだな、熟練者に成れば成る程、剣で城壁を斬るとか、剣で魔法を斬るとかそう言った無茶をやらかすようになる、それは無意識の内に武器に己の魔力を乗せているからなんだ。魔力の乗った斬撃なら、普通剣では斬れない物も魔力が刃を強化し斬ることが出来る、魔法に関しても魔法に魔力の乗った斬撃を当てている訳だから斬ることが出来る、と言っても無意識でそれをやっている訳だから、それが出来る熟練者は自身が魔力を使っていることにも気付いていないだろうな」


 要は魔力による武器の強化?


「俺が使っているのはそれを更に突き詰めたものだ、自身が魔力を武器に乗せている事を自覚し、武器と共感し、武器に力を借り、武器を通して世界に働きかける。武器に魔力を乗せる工程が詠唱の代わりになり面倒な詠唱無しに魔法にも似た力を行使できる。ただし、色んな工程を武器に依存しているからその種類は攻撃に偏っている……」


 武器が必要になる魔法、その代わりに詠唱が必要無い。


「魔法剣?」


 ふと、そんな言葉が思い浮かぶ、師匠のやっている事はゲームの技・奥義や魔法剣のようだ。


「ああ、それ分かり易いな、よし、魔法剣で良いや。これからソウヤには魔法剣を覚えてもらう」

「えっと、有り難いんですけど、俺魔法を使えるような魔力無いですよ、魔法道具ぐらいなら俺の魔力でも使えますけど……」


 能力値がカス、そのおかげで俺はシルバーブルの城で魔法の講習にも参加させてもらえなかった。参加してもどうせ無駄だろうと言われてな。


「何言ってる、俺がこれまで喰わせて来た魔物の能力値強化部位には魔力を強化する物も有るだろうが、魔力に関しては心配するな、大丈夫だ、俺だって魔力に関しては一般の冒険者よりも低いぐらいなんだぞ、魔法剣は武器に依存する、少ない魔力でも武器が応えてくれるなら大きな威力を発揮する事ができる」


 武器が応えてくれるって、まるで武器を生き物のように言うんだな……


「魔法剣は魔力の低い者の裏技みたいなものだ、でも魔力の高いものが使えない訳じゃない、ただ高すぎる魔力で魔法剣を使っても武器が持たないからな……」


 魔力を込め過ぎると武器が壊れると。


「結局は武器との相性なんだけどな、でも失敗して壊れてもいけないから武器に魔力を込める感覚が掴めるまでは予備の武器で練習した方がいい、魔力を武器に込める事さえできるようになれば後は武器がこっちのイメージを読み取ってくれる、ただ、どこまでそれを再現してくれるかは、やっぱり相性次第だな」


 俺は今日から魔法剣の修練を始める、召喚されたクラスメイトたちは能力を使うのに詠唱の必要は無い、彼らに並ぶには同じ条件の魔法剣は都合が良かった。たとえその効果が攻撃に偏っているとしても覚えない手は無い。


「じゃあまず予備の武器を出せ、そんで魔法道具を使う時の感じで魔力を込める」


 ポーチから予備の武器、盗賊のボロ剣を取り出し魔力を込める!


 パリンと、鉄が壊れるには少々おかしな音がして剣が砕けた。


「あれ?」

「魔力を込め過ぎだ、魔法道具と同じ感じって言っても込める魔力は抑えろ、魔法道具は元々余剰分の魔力を受け付けないようになってるが普通の武器にそんな機能付けないからな」


 魔法道具を使う感覚で魔力を込めるのは簡単だけど、込める魔力量の調節、これは意外と難しいかもしれない。

 ポーチから別の武器、盗賊のボロ剣を取り出して再挑戦。

 イメージ、ちょっとだけ魔力を込めるイメージ。


 パリン


「…………」


 イメージでどうにかなる物ではないみたいだ。何度も失敗して感覚を掴むしかないか。


「……プ、剣がボロ過ぎて難易度が跳ね上がってる……ププ」


「師匠、そんなトコで蹲ってないで何か感覚を掴む良い方法は無いんですか?」


「ちょ、ちょっと待て……うん、うん? 良い方法? 繰り返しあるのみ、頑張れ!」


 何の役にも立たなかった!

 そうして失敗を繰り返すうちに剣のストックが切れた。もしもの時に投げるように残しておいた盗賊のボロ剣が無くなった。


「ちょっとかってきます」

「おう、いってら、もう少ししたら晩飯だから急げよ~」


 今回は時間が惜しいので最速でかって行く、ポーチに十分な量の剣を入れたら急いで師匠の元へ帰る。


「お、おかえり~近くでかれてよかったな」

「ですね、晩御飯の仕度任せてしまってすみません」

「ああ、いい、いい、晩飯の後まだやるんだろ、本来なら無意識ながらも1つの道を究めるに到った者が辿り着く領域の事をやれってんだから、まぁ仕方ない」


 でも、習得に何年も掛かるとか悠長な事やってられない。


「なに、無意識に辿り着くから大変なだけで、意識的にやれば習得はずっと早い」

「今はそれを信じてひたすら繰り返します」


 今日狩った魔物の肉、能力値強化部位で師匠が作った晩飯を完食し、この付近をうろついていた盗賊たちから狩ったボロ剣で魔法剣の練習を続ける、何とか早く習得したいものだ。

 それからは、野営時の俺の見張りの時など、空いた時間を魔法剣の習得に費やした。


「ププ……またボロい剣、あれじゃ難易度が跳ね上がるっての、ププ……まぁ、これも修行だ、細かい制御を覚えればそれだけ応用も利く、ププ」


 眠っている師匠が珍しく寝言を言っている、剣の砕ける音が安眠の妨げにならないかと思い、離れた場所で見張りをしながら修練していたので何を言っているかは聞き取れなかったが、ちゃんと眠れているようで何よりだ。


 パリン


 ん? 今日何本目かの剣を駄目にした所で何かが近付いて来るのに気が付いた。

 真っ直ぐこっちに来る、暗くてよく確認できないけど二足歩行、人か?


「あんたら、こんなトコで何やってる……」


 人か、1人2人……3人。

 声をかけて来た師匠よりも少し年上っぽい男の人、彼の後ろに隠れる女の人は嫁さんか? と言う事はもう1人の男の子は2人の子供かな。


「見ての通り野営だが? そっちこそどうした? 旅行中にしてはずいぶん軽装……」


 3人とも着の身着のままって感じだ、護身用の武器処かマジックポーチの類すら持っていない。


「怪しすぎるんだが?」


 新しく取り出したボロ剣を手に念の為に立ち上がる。

 こいつら以外に怪しい奴が居ないか、この3人が囮で別の方向から伏兵が攻めてこないか……


「ソウヤ、大丈夫だ」


 何時の間にか起きて来た師匠が俺の手にした剣を押さえ、俺の代わりに3人に向き合う。


「この近くに村は無い、旅行者か? 護衛はどうした?」

「大量の魔物に、私たちを逃がす為にまだ戦ってくれている筈……です……」


 何時からその魔物と戦っていてどれだけの時間かけてここに辿り着いたのか知らないが、その護衛が既に力尽きている状況を想像してしまったのだろう、最後の方は祈るように声を振り絞っていた。


「ソウヤ行くぞ、お前らは疲れてるなら暫くここで休んでな、剣が刺してある内側なら魔物は寄って来れない」


 師匠に言われボロ剣をポーチに入れいつもの剣を取り出す。そして、男に聞いた方向へ師匠と2人駆け出した。


 暗い森の中での疾走もここ1月ほどの修行で慣れた物だ、師匠の背中を見失わないように駆けて行きその場所に辿り着く。


「何だこれ……」


 思わず声が出た。

 森の前方、乱立する木と同じだけかそれ以上に魔物が犇いている、修行で魔物の巣をつついて大量の魔物と戦った事は有るけど、今ここに居る魔物の数は今迄で一番多い。


「これは、増えすぎだろ、早いとこ狩っとかないと大変な事になる……」


 この中に護衛の人が居るのか? もう死んでるんじゃね?


「まだ何とか無事だ! 俺は突っ込む、ソウヤは外から削って行ってくれ!」


 そう言って師匠は剣を抜き魔物の中へ突っ込んで行く。


「バーストグランド!」


 魔法剣、師匠が薙いだ地面はそこから魔物の集まる中心へ向かって大地を爆ぜさせ魔物を吹き飛ばし歪な道を作る、師匠は魔物に囲まれるのも構わずその道を駆け出した。


 師匠の実力はこの修行の旅の間に良く知っている、心配しなくても大丈夫だ、問題は俺の方、囲まれないように立ち回らないと危ない、今は突っ込んで行った師匠に魔物の注目が集まってるから、師匠に言われた通り外から魔物を削っていこう。

 正直この世界の奴等がどうなろうと構わないが、俺に戦う力を与えてくれた師匠が動いている、俺が動くには十分な理由だ。

 見覚えの有る魔物、対処方法は修行で学んだ、見覚えの無い魔物、その場その場で対応しなきゃならないけどどうせ乱戦だ、斬って斬って斬りまくって、全部纏めてぶった斬ってやる!


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