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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
五章 異世界人・勇者
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五章7話 ドラゴンの上で

 マギナサフィアとシルバーブル間の砦で飯本を回収した後、俺たちは引き続きチンピラドラゴンに乗って移動しているんだが……。

 なんと言うか……苦労して移動した距離を一日と掛からずに移動していると今までの旅が少し虚しくなってくるな……。


『ソウヤ……身体はなんともねぇのか』


 ん? チンピラドラゴンの声が頭に響く、けど……玲奈たちは何の反応もして無いな。


『そりゃそうだ、てめぇにだけしか聞こえないようにしてるからな。で? 身体は大丈夫なのか?』


 どうして態々俺だけに聞こえるようにしてるんだ?


「まぁ、砦でも、戦闘はして無いからな……」


 はぁ、飛んでるからか喋り難い、チンピラドラゴンが飛行補助の魔法で護ってくれているとは言え、全く影響が無い訳ではないみたいだな。


『あ? 繋がりを作ってるから口に出さなくても十分伝わるぞ』


 それを先に言えよ、しかも俺にしか聞こえないようにしているんだったら、さっきのは一人でしゃべってたって事じゃないかよ、恥かしい。


『それと、風の影響を受けてるのはてめぇだけだ』


 待てよおい、なんでそんな無駄な事を……。


『いや、全く防護して無いのにお前は喋り難い程度にしか感じてねぇんだよなぁ……お前、あれから何度ぐらい大怪我負ったよ?』


 あれからって……エバーラルドを出てからか? 大怪我って言ったら、マギナサフィアの図書館地下ダンジョンで骨折ったぐらいか? その怪我もチンピラドラゴンの肉を食った影響で得た異常な治癒能力のおかげで1時間ほどで直ったんだが……。


『一度だけ……いや、それにしちゃ馴染んでやがる……』


 このチンピラは何が言いたいんだ? んで、話しかけておいて一人で何かブツブツ言ってるし……なんなんだ?


『ソウヤ、とりあえず脱いでみろ』


 黙れ変態、トチ狂った事言ってないでそろそろ俺にも魔法の護りを掛けろよ。


『変態じゃねぇ! 身体に鱗が生えたりしてねぇか調べるだけだ! それに、お前は少し負荷かけてる位の方が丁度良いんだよ、』


 ちょっと待て! 色々気になる事言ってるけどちょっと待て!

 俺、今後鱗が生えて来る可能性があるのか!?


『今更慌ててももう遅せぇよ、俺の肉を食った時点で決まった運命だ』


 馬鹿、そう言う事はもっと前に言っておけよ。じゃぁ、何? 今の俺は身体が人じゃなくなって行ってるって事か? 生死がかかってたからドラゴンの肉を食ったことはまぁ仕方ないけど、生きながらえた代償が人外化って……えぇぇ……。


『言ってただろ、俺の肉は特別だって』


 どう特別なのかは聞いてない。だから能力値的に生命力が上がるだけじゃなくて異常な治癒力も得たんだと思ってたんだよ。まさか、それ以外にも有ったとは……。


『俺は生命竜だ。寿命が無ぇがドラゴンとしての次代を残せねぇ、代わりに俺の肉を食った他種族をドラゴンにできんだよ。息子はあの通りいつの間にか自力で亜竜になってやがるからな……丁度良いと思ってお前に使った、はっはははは』


 笑い事じゃねぇよ! 何勝手に人の身体変えてるんだよ!


『いや、でもおかしいなぁ、竜の力は馴染んで来てるのに身体は人のままみたいなんだよなぁ……』


 そう言ってこっち見ないで前を見て飛べ。余所見運転、いや、飛行は危険だ。

 背中の方は分からないが、俺の身体にドラゴン的な部分は出ていない。しょぼいとは言っても異世界人―勇者―だからな……変な作用でも起こってるんじゃないか?


『まぁ、そういうことにしとくか……だが、怪我なんかで力が行使されれば、お前に人として終わりが速まるってことは教えといてやる』


 はぁ……この人外化は、元の世界に戻ったら治るのか? 下手に病院にかかって騒ぎになるとか御免だぞ。チンピラドラゴンが俺に防護をかけないのは負荷をかけて竜化を早めようって魂胆か?


『俺の知ってる限り、元の世界に戻った異世界人なんざ居ねぇからなぁ……』


 やっぱ、元の世界への帰還方法は寿命の無いような奴でも知らないのか……俺らより前に呼ばれた奴はどうだったんだ?


『だから居ねぇって、前回の勇者共でも帰った奴は居ねぇよ、それ以前の奴等は俺がまだ成竜じゃなかったから頃の事だから知らねぇがな……』


 寿命が無いって聞いて思ったよりも歳をとってないのか……。まぁ、そんな簡単に帰還方法が分かるなら苦労は無いか……。

 

『それにお前らの前の勇者は数年もしないうちに全滅したからな……』


 何だそれ、勇者が全滅する状況とか怖すぎるだろ、ちょっと詳しく聞かせろよ。


『あ~、まぁ、たいした話でもねぇんだが……ただ、魔王と戦って負けたってだけだ』


 魔王に負けたって……たいした話しじゃないか、勇者が負けた状態でその後どうなったんだよ?


『何故か魔王が大人しくなったんだ、世間には勇者と相打ったって言われてやがるな』


 何故大人しくなったのか分からなくても、世間にはそう広めるしかなかったんだろうな。過去の勇者を倒す程の魔王とどう戦えと言うのか……大人しくしているなら放置するしかなかったんだろうな。


『んで、随分と時間がたっちまって、魔王の国と睨み合っている筈のシルバーブルの奴等さえ昔の魔王の存在を忘れた。だが、幸か不幸か勇者召喚の術式は残ってたみてーだな。再び魔王と敵対した状態になり、慌ててお前らを呼んだってところか?』


 改めて思うが、あの国は本当にどうしょうも無いな。大事な事忘れた上に大人しくしていた魔王との戦端を開いてるんだろ? 馬鹿過ぎる……。と言うか、魔王国との戦いの原因って何だ? そう言えば聞いてなかった気がするな、ただ魔王を倒して欲しい、周辺国は協力してくれないとしか言われていないよな。周辺国に関しては自業自得だったが……魔王国との戦端の理由もどうせ豚王側が悪いんだろう。


『まぁ、元凶はあの豚人(オーク)もどきだろうなぁ。ま、あれの王政も、今回の三国同時進撃で終わらぁ』


 聖女の婆さんの神託通りに行くなら、そうなんだろうな。豚王が魔王との戦争の原因なら、豚王をぶっ殺したから矛を収めてくれって言っても聞いてくれないか?


『前の魔王なら……可能だったかもな。今代の魔王がどういった奴なのか暫く眠っていた俺じゃ分からねぇからなんとも言えねぇなぁ……』


 俺たちが本当に自由に動き回るには魔王との戦争が邪魔なんだよな……異世界の魔王なんか放っておけって言いたいが、相田なんかは放っておけないんだろうな。

 その辺は俺の考えることじゃないか、どの道、今考えても意味無いな……とりあえずはシルバーブルを落としてしまうことを考えれば良いだろう。


『まぁ、適当に頑張れ。おら、見えて来たぞ』


 本当だ、シルバーブルノ城が見えて来た。

 俺たちは各戦線の現状を豚王に伝えて降伏を促す役割なんだが……交渉は主にリミュールが行うだろう。こっちは基本見ているだけで、豚王が抵抗して来たらリミュールの護衛をしながら無力化って所だ。飯本が居るから守りに関しては心配要らないと思うんだが。


『あの結界は熱や冷気は遮断しねぇぞ~』


 砦でもそう言っていたな。でも、豚王がそれを知っているとは思えないからその辺は大丈夫だろう。


『昇華してるなら別なんだろうがなぁ……』


 昇華? レベルアップのことか?


『そう、それだ。結界能力もレベルが上がってるならその辺も補えるようになってるんじゃねぇか? 最も、過去の勇者でもその(レベル)には達していなかったから魔王に負けた訳だがなぁ』


 暫く砦で護りを担っていた飯本のレベルがそこまで上がっているとは思えないか。


「蒼也!」


 城にだいぶ近付いた所で玲奈が俺の腕を引き大声を上げる。それと同時にチンピラドラゴンとの繋がりってやつが途切れたような感覚が有った。


「影犬が戻って来た!」


 影犬? 玲奈が言う犬って事は、玲奈が伝令に出した黒い犬の事か? それが戻って来たって……今飛行中だぞ、どうやって戻って来たんだ?


「向こうで、やられた……ずっと、帰って来ないから、クラスの誰かが預かってたんだと思うけど……」

「田嶋たちの誰かが、殺ったって訳では、ないよな?」


 くそ、チンピラドラゴン! 本当に話し難いから俺にも防護をかけろよ!


『チッ……』


 繋がりの切れた筈のチンピラドラゴンが俺の考えを察知して、舌打ちしながらも防護をかけてくれる。よし、これで話し易くなった。


「誰かに何か有ったって事?」


 一体誰に何が有った……。とりあえずチンピラドラゴンに急ぐように頼む。


『こりゃ、穏やかじゃねぇな……城の方を見ろ』


 おぉ……ふぁいあー。

 城の屋根やら壁やらを吹飛ばして盛大に火柱が上がってやがる。でも吹飛ばした物は城下に被害を出していない、炎の威力が高すぎて全部塵にしてしまっているんだな。


「俺たちが行く前に誰かが暴れだしたか? 炎って事は寺坂か?」


 あのヤクザもどきならやりかねないけど……。


「でも、戦闘組みの殆んどは魔王との戦いに出ている筈よ」


 じゃぁ捜索組みの奴か? いや、俺たち以外って可能性も有るんだよな。でもあんな規模の攻撃……できるな、精霊砲なんかあれぐらいの威力は出ていた筈だ。


「捜索組みの皆が巻き込まれて無いと良いけど……」


 玲奈の犬が消された直後だぞ、関係無いとは考えられない、間違い無く誰か近くに居るだろう。


「兎に角急いでくれ!」

『ったく、しゃーねぇな!』


 とにかく行ってみるしかないな……。


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