↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
五章 異世界人・勇者
65/130

五章1話 豚王の奇行(田嶋颯太)

 魔王軍との戦線に向った戦闘班の奴らの一部が交替で休みを取って戻って来た。その戦闘班の奴から聞いたんだが、魔王軍に獣人が居たらしい。

 豚王は魔王軍は魔物ばかりだって言っていたが、案の定嘘だったな。いや、豚王が獣人も魔物と判断しているだけか? 戦闘班の奴らの中にはやり難いと思っている奴もいるだろうな。

 俺は、いざとなったら豚王とかを暗殺する心算だから獣人ぐらい殺せないとだができれば御免被る。


「書物なんかを調べた感じだと、この世界にはエルフとかドワーフとか妖精なんてファンタジーな種族は一通り居るみたいね」


 朝霧はそういったことも調べていたか、本来そういった事を嬉々として調べるのは俺なんだが、他の事をやるのに忙しくてそれ処じゃないんだよな。異世界召喚ってこんなにめんどくさい物だったか? 夢とか憧れなんかは速攻つぶされた気がする。


「シルバーブルではどれも見た事が無いけど」


 確かに、この国、シルバーブルは他種族が居ない。大方、豚王が他種族を認めてないんだろうけど。 


「でも、獣人って言っても能力が高すぎないか? 相田たちはあれでも勇者だぞ、それを軽くあしらうって、勝てる気がしねぇんだが」


 相田の奴がどれだけ覚醒してると思ってるんだ、セリアも居るし魔王ぐらい軽く葬ると思ってたんだが、あいつ、多分人としてのブレーキが掛かってるな……この世界で俺たちの能力値なら、多分ある意味人外な動きが可能になると思うんだが……俺も含めて皆常識が動きを邪魔してる可能性が有るな。

 まぁ正面からぶつかる必要は無い、隠密状態で刺客から急所を一撃、必殺の一撃があるから、これで大抵は何とかなると自負している。でも、こういった場合って、俺の隠密が効かないって可能性が有るんだよな、こればっかりは験して見ないと分からないが……。


「相田に頑張ってもらうしかないな」


 いざとなったら相田を洗nじゃない、説得してブレーキ、リミッターを外す必要が有るな。その前に自分で実際に人外な動きができるか験しておかないとだが。

 とりあえず城の城壁でも駆け上ってみるか? 能力を使わないで高い能力値による身体能力だけでやってみよう。


「大丈夫だと思うわよ、相田君も随分考え方が変わったみたいだし。セリアさんも居る今なら皆を引っ張って上手くやってくれると思うわよ」


 朝霧もセリアに会ってたのか、相田の奴、セリアを他の奴に見せないように隠れて呼び出したりしてたから、俺や相田のパーティの奴等以外は知らないかと思ってたんだがな。


「まぁ、戦線の方は徐々に前進しているようだし大丈夫だろう。俺たちはこっちの問題を片付けないとな」


 既に戻って来た戦闘班の奴には俺たち捜索班が城を抜け出していることは伝えた。その原因になった豚王の怪しい行動を解析して対処しないとな。最近姿の見えない腹黒姫の方も何か企んでいないか気になる。こっちもこっちでやることは多い。


「城には居るみたいよ」

「ん?」

「お姫様の事、何か面倒な事してないか気にしてるでしょ? 城には居るみたいね、よく自室で悲鳴を上げてるみたいだけど」


 それは多分、色々悪戯的な物を仕込んでおいたのに気が付いて叫んでるんだろう。でも、城には居るのか、相田を標的に何かしようとしてたみたいだから、相田が戦線に出ている今はやることが無くて引き篭もってるのか?


「姫の方も、余計な事して無いならそれでいい。こっちは捜索班の避難も終わったことだし本格的に豚王のほうを探ってみる、朝霧は捜索班の連中が暴走しないように見ててくれ、あいつ等目を離すとすぐにハメを外しやがるから……」


 城に居る頃はもうちょっと大人しかったんだが、隠れ家に移ってから空き放題やってるんだよな、帰還方法を探したり戦闘班への武具の作成なんかの仕事はしっかりやってるんだが、城の監視が外れたせいか異世界を楽しむ余裕が出てきたんだろうな……状況的には好転して無いから勘弁してほしいんだが、ストレスを溜めすぎるのも良く無い、まぁ程々になら構わないだろう。


「分かったわ、でも田嶋君も気をつけてよ。あの王、最近本当に様子がおかしいから、危険だと感じたらすぐに逃げてよ」


 分かってる、俺だってできれば危険な目に合いたくは無いんだ、今まで犠牲無しでやって来ている俺たちの最初の犠牲者になる気は無い、一番懸念していた高深も無事だった事だし、ここで他の犠牲者も出す気は無い。戦闘班は相田頼みだけど、こっちは絶対に犠牲無しで何とかする。


「ああ、でも俺に何か有ったらこの国、少なくても豚王が敵なのは確定だ、戦闘班の奴やマギナサフィアに発った連中は気にしないで、すぐにでも捜索班の奴等を連れて他の国に亡命しろ」

「そうならないことを願うわ」

「こっちだって、そうなる前に対処してみせる」

「気をつけてね」


 朝霧に見送られて俺は隠れ家を抜け出して夕闇の城下に溶け込む。

 街の人たちがおれを気にする事は無い、これまで城の奴等には気付かれないように街に馴染むようにしていたし、服も一般人として違和感の無いものを用意している。まぁ、城の奴等にさえ見られなければ街中で気負う必要は無い。

 何事も無く城の前までやって来た、先程考えた事の実験として城壁を駆け上る。思った以上にすんなりと事が行えた。自らの常識によるリミッターは相当低い位置に設定されているみたいだ。一度リミッターを越える事ができた今なら、やろうと思えば城壁を飛び越えるぐらいできる気がする。

 まぁ、兎に角今は豚王のことを調べよう、隠密を全開にする。これだけで俺に気付く者は誰も居ない、城の警備は相変わらずザルだ。でもセリアに気付かれてから過信は良くないと考え直している、隠密常態でも関係なく物陰に隠れながら物音を殺して城内を進む。

 豚王の自室まではこれまで通り問題無く辿り着けた。これまで大丈夫だったんだから新たな要素が加わらない限り大丈夫なのは同じだよな、俺の方でもこれまでよりも慎重に行動しているんだから余計にだ。

 物音を立てないように僅かに扉を開けアイテムボックスから小さな鏡を取り出して部屋の中を除き見る。

 部屋の中には誰も居ない、ここに豚王が居ないってことは……隠し部屋か?

 出かけてる可能性は低い、最近益々肥大化して来たあの脂肪は外出には向かない上に豚王自身も自分の領域を出ることを嫌っているから自室、玉座の間、隠し部屋のいずれかにしか居ない筈だ。

 前にも見たが、以前蝋で固めて使えなくした隠し部屋は、何時の間にか無理矢理こじ開けられている。そこを豚王の自室と同じ要領で中を覗くと数日前に見た時より明らかに肥大化した脂肪の塊が激しく振動していた。

 ひたすらに見苦しい脂肪の塊が打ち震えているだけに見えるその光景は、脱ぎ散らかされた豚王の服と引き裂かれたメイド服の存在で脂肪の塊、豚王が何をやっているのかが理解できてしまう。

 何だこれ……獣の営みだってもうちょいマシだぞ……。

 隠し部屋に入った兵やメイドが戻って来ないってのは気が付いてたが、豚王の激しい動きに対してメイドと思われる方はまったく無反応だ。その意味は、豚王の物が粗末なんて理由じゃなく、既に騒ぐ事もできない状態になってしまっているって事、つまり、メイドの方は既に事切れているって事だろう。

 相手の反応が無い、そんな事お構い無しに豚王の蛮行は続き、豚王が何度か痙攣した後にようやくその動きを止めた。

 なんで俺はこんな光景をずっと観察してるんだ? こういった行為が俺たちに向けば問題だが豚王が自分の国で馬鹿やって国力を殺ぐ位どうでもいい、俺たちはいざとなったら逃げれば良いんだからな。こんな光景を何時までも見ている必要なんてな……。


「な! っつ!」


 止まったからようやく終わったと思ったんだが、豚王の起した次の行動に思わず声を出してしまい慌てて自分の口を塞ぐ。幸い豚王はその行為に夢中でこっちの声には気が付いていないみたいだが、俺の方もそれ処では無い。

 豚王の奴、散々弄んだメイドの遺体に齧り付きやがった。どんな強靭な歯をしているのか知らないが、その肉を噛み千切り咀嚼して飲み込む。

 何だこれ、本当に何だこれ! メイドに夜の相手をさせようとして抵抗されたから、殺してから弄んでいただけじゃないのか!?

 豚王の行動は俺の眼から見ても随分と慣れた物に見える。という事は、この行為は今まで何度も繰り返されて来たって事だ。それこそ、この隠し部屋が再度使われるようになってから、俺が知る限りでも呼び出されて帰ってこなかった兵やメイドは皆豚王の腹の中に納まったって事になる。

 豚王は俺が見ているのにも気付かずに食事を続ける、肉所か骨まで噛み砕くその歯は一体どうなっているんだ? 見ていて吐き気を催す光景だが、ここまで見たんだ、少しでも何か情報を掴める様にその光景を見続ける。

 やがて、メイドが豚王の腹に収まりきると、豚王の身体が発光し始める。そして、メイドを弄んで痙攣していた時以上に見るに耐えないだらしない表情で悦って居る豚王の額に、拳程の大きさの緑色の宝石のようなものが浮かび出てくる。その宝石は豚王の身体と同じ様に発光したかと思うと、発した全ての光を収集してから再び豚王の額に沈んで行った。

 あの宝石って、前に怪しい商人が豚王に献上した魔法具だよな。どんな効果が有るのか知らないけど、明らかに豚王の蛮行の原因になっている感じがする……と、よく分からん発光反応も収まって豚王が自分の服に手をかけだした。俺の方もそろそろ退散しないとな。

 俺は豚王に気付かれないうちに部屋を抜け出して、来た時と同じ様に隠密状態を保ったまま慎重に城を抜け出した。

 今回の収穫……やっぱり豚王はクズだった。怪しい商人の持って来た魔法具が原因なのか同かは分からないけど、あの行動は絶対にヤバイ。あれが俺たちに向いたらと思うとぞっとする。あの魔法具の効果が分からない以上、皆には絶対に豚王に呼び出されても一人では豚王と接触しないように言っとかないとな。

 魔法具か……道具錬成師の新見なら鑑定できるか? いや、あの感じだと普段あの魔法具は豚王の額の中に埋まっている、となると能力で鑑定できても物理的に鑑定できない。あの瞬間にしか魔法具が出てこないとなると、新見に一緒に侵入してもらって豚王の食事が終わるのを待つ必要がある、それだと新見に今の光景を見せることになるんだよなぁ……女の子にあれを見せるのは俺でも気が引ける、どうしたものかなぁ。

 城を抜け出し、もう一度宵闇の広がる城下に溶け込む。


「まぁ、テンプレとかパターンに当てはめるとあれがどんな魔法具なのかは、なんとなく想像はできるんだけど……」


 タイミングが悪い、戦闘班が魔王軍と対峙している今、内側に強敵が出現した事になる。それも、できるだけ早く対処しないと、どんどん強くなっていっちまう。

 今のままだと現存の戦力じゃ対処できなくなる、いっその事俺がさくっと暗殺するか?

 兎に角早い内に手を打たないとなんねぇな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。