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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
四章 セントコーラル・急ぎ足な帰路
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間章四章1話 隠れ家(田嶋颯太)

「ソウスケは召喚された際に私がその身に宿った……だから、精霊の命を取り込んでなどいないのです」


 俺たちと相田との差を、相田の聖剣エクセリアの精霊セリアが自慢するように語る。

 時は深夜、見張りの兵など俺の隠密の前では何の障害にもならないので、いつも通り色々調べ回っていたのだが、隠密状態の俺に声をかける者が居た。それが、相田が眠りについている為、暇していたセリアだ。なんと言うか、初めて隠密を看破されて能力を過信し過ぎるのは問題だと思い知らされた。

 それにしても、相田は俺たちと違って召喚された時に力を得る際、精霊を殺していないんだな。

 前に美波が言っていた召喚された人数と、あの召喚陣のある部屋で死んだ精霊の数が合わないのは高深に力が無いんじゃなくて、セリアが宿っている相田の力が精霊の犠牲無しに得られた特別な物だってことか。


「どこまで勇者なんだよ、まぁいい、相田のことよりも、今の話から高深にも俺たちと同様に精霊を犠牲にした力が有る事が分かったのが重要だ」


 セリアに始めて会った時はまた相田が勇者してるのかと思ってスルーしてたけど、今晩改めてセリアと話せてよかったな、聞かされたのは相田の自慢話みたいなものだったけど重要なことに気が付くことができた。


「そのタカミという方は誰なのですか? そのように呼ばれている方は城には居ないようですけど」


 あれ? セリアって相田に宿ってるんだよな? だったら高深が居た頃の事も知ってるんじゃないのか?


「その頃はソウスケの中で眠っていましたから」


 相田が聖剣を使いだした頃からの事しか知らないと言う事らしい。それなら、早々に城を抜け出した高深の事は知らないか。


「俺たちと同じ、呼び出された異世界人の一人だ。あまりにも能力が低かったから外に逃がした」

「追い出したのですか?」


 あぁ、役立たずだからお前なんか勇者じゃないって追い出す話しも有るな。そういった話の主人公は大抵チートになるからそれを狙って外に出したってのは有るけど、追い出したって言うのは人聞きが悪いな。


「過去に呼び出された異世界人に、その能力が理由で捨てられた者が居ましたけど……そのタカミが敵にならないと良いですね……」

「大丈夫だろ、今は伊勢たちと一緒みたいだからな」


 先日、伊勢の能力による二度目の連絡が来たけど、おかしな所は無かったからなぁ、ま、大丈夫だろう。

 それに、あいつはシルバーブルの敵にはなっても俺たち異世界人の敵にはならねぇよ。ま、この国の敵になる時は俺たちも一緒だろうけどな。


「イセですか、確か小さなニンジャ……」


 あんまりちっこいって言ってやるな、本人は意外と気にしてるみたいだから。


「美波も一緒だぞ」

「……あの、精霊使いですか」


 あ、なんか嫌そうだな。聖剣の精霊としては、精霊使いは嫌悪の対象か? 美波は精霊に強制してない筈だから、そんな嫌うもんでもないと思うけどなぁ。


「まぁ、お前の主は相田なんだから、美波に如何こうできるもんでも無いだろ? 美波にも精霊の意思を無視する気は無いだろうし、そう嫌ってやるな」

「別に嫌っては居ません、あの老精霊が逝ってしまったのが残念なだけです」


 老精霊? 美波の能力の元になった精霊のことを言っているのか……セリアの言い方からだと、相当な力を持った精霊だったんだろうな。


「ところで、最近城に残っている勇者たちが減って来ているようですが、何をやっているのですか?」


 お? 豚王が怪しい商人から手に入れたアイテムがやばそうだからこそこそと動いていたんだが……。


「セリアは気付いていたのか」


 戦闘班の奴には、特に相田は騒ぎを起こしそうだから気付かれないように動いてたんだけどなぁ。もちろん、捜索班全員の安全が確保できたら戦闘班の奴らにも知らせて、戦線からの帰還時にでもこっちに合流させれば良いと思ってたんだけど、どうするかな。


「別に、そちらで上手くやっていただければ構いませんよ。あの王がどうであろうと、ソウスケは平和に暮らす人々の為に戦うのを止めませんから、余計な心配をさせたくありません」


 セリアも取り巻き連中と一緒で相田中心に物事を考えてるな、相田をいさめる事もあるみたいだから他の取り巻き連中とは違うみたいだけど、少し相田が心配になって来たな。


「時期が来たら、セリアが相田たちに教えてやってくれ、場所は……」


 とりあえず、相田の方はどうにかなるだろう、あいつの主人公補正は今までマイナス方向には働いていないから、今後も大丈夫だろう。

 勇者たちの隠れ家として用意した場所をセリアに教えて、後の相田の方は任せておこう。

 丸投げ思考だがセリアならどうにか相田を上手く誘導してくれる筈だ。


「明日にはブロズ荒野に向けて出発だろ? 魔王軍との戦いの方は上手くやってくれ」


 俺は魔王軍との戦いの方には参加しない、そっちは相田が中心に何とかやってくれるだろうから、戦闘班が居なくなった後の捜索班を豚王に利用されない為に工作しないとな。


「ソウスケなら大丈夫です。暴走しそうになっても私が居ます」


 まぁ、セリアは相田中心の思考かも知れないけど、ちゃんと相田が間違ったり暴走したりしたら諌めているから、セリアの言葉を信じるとしよう。







「は~、よくこんな場所用意したな~」


 捜索班に所属する星月(ホシヅキ)(ケイ)が目を輝かせながら、案内した隠れ家にある工房に駆け寄っていった。


「資金は城から適当なものを売って調達した!」

「はは、悪党っす! 悪党が居るっす!」


 新浜(ニイハマ)、そう褒めるなよ。この工房は鍛治師の星月、武器や防具の錬成師、波止場(ハトバ)や新浜の為に用意したんだ。遠慮なく使ってくれ。伊勢の方も飛び道具の在庫が無くなってるかも知れないからどうにか届けてやりたいんだが、ヤマトたちに渡したら届けてくれるか?

 捜索班の活躍で王城で調べられる事はほぼ無くなった。それで、何人かは戦闘も可能な者と一緒に高深たちの連絡にあったマギナサフィアの図書館地下ダンジョンを調べに行ってもらった。残ったメンバーは、城から少しずつ避難をしてもらい、今日最後の数人を連れ出し終わった所だ。

 俺や朝霧(アサギリ)は、また城に戻り捜索班が居ない事に気づかれないように工作しないといけない。戦線から休息に戻って来た戦闘班は城に残っているが、豚王は最近、自室の隠し部屋で何かに夢中になってるみたいだから大丈夫だろう。

 あの部屋は前に俺が入り口を蝋で固めたはずなんだけど、いつの間にか直っていたな。

 あの部屋にメイドや見習い騎士が呼ばれた後戻って来ないから、中を確認するのが怖くて調べていないが、男女お構い無しに喰い散らかしてる豚王に恐怖を感じる。しかも戻って来ないって事はやった後、殺してそうだよな。避難して正解だな。


「あの豚、さっさと殺した方が良いんじゃない?」


 おう、朝霧が過激な事を言ってくるとは思わなかった。その表情は嫌悪感に満ちている、豚王関係を占って悪い結果でも出たか?


「あの豚、気でも狂っているの? 何を考えてるのか全く分からないわ……」

「何か出たのか?」


 クラスメイト関係の占いの結果は、プライバシーがどうだとかであまり話してくれないが、豚王に関してはそんな配慮要らないだろう。


「ごちゃごちゃしすぎていて、何も分からないの……」


 豚王に関して占っても何も分からないってことか……考えられるのは怪しい商人から譲られた魔道具か? 勇者の能力を上回るって厄介な道具だな。

 道具、そうだ、あれも有ったな。


「朝霧、道具系の鑑定能力持ってる奴って居たか?」


 田中の解析が一番確実なんだけど、あいつは今魔王軍との戦いに出てるからな。


新見(ニイミ)美那湖(ミナコ)、道具の錬成師ね、捜索班でマギナサフィアに向ったメンバーに入ってないからここに居るんじゃない」


 ぱっと出てくるのが凄いな、俺も結構クラスメイトの称号と能力を覚えている方だけど完璧には程遠い、聞いてすぐに出てくる朝霧は凄いな。


「サンキュー、ちょっと見て貰って来る……

 新見! ちょっと良いか!」


 以前レベルが上がったことで覚えた、暗器を隠しておく為のアイテムボックスの能力から腹黒姫の部屋で偽物とすり替えまくった首輪を全部取り出してみてもらう。


「うわぁ、なんでこんなに首輪持ってるの? 引くわ~」


 いや、俺のもんじゃないから、俺から距離を取ろうとするな、地味に凹む。


「うわぁ、これが前に聞いた隷属の首輪ね。田嶋……私たちに使ったら殺すわよ」


 使わねぇよ! むしろ使われないように頑張ったのにその扱いは酷いな!


「結構有るわねぇ」


 回収して来た首輪の中で隷属の首輪は5つか。


「他は、普通の首輪みたいねぇ」


 特殊な効果の無い普通の首輪か?


「あ、結構良い値段がついてる」


 お、マジか。売って俺たちの活動資金にするしかないな。


「でも、こっちは売るわけにはいかないよな」


 5つもある隷属の首輪はどうするか、とりあえずは他の奴が悪用できないように再びアイテムボックスにしまっておこう。


「田嶋~早速工房を使って頼まれてた暗器作ってやったぞ~」


 さっき工房に駆け寄ってはしゃいでいた星月が、手裏剣やクナイや鍵爪なんかを持って来る。これ、暗器なんだろうが、おもいっきり伊勢用じゃねぇか。俺も使おうと思えば使えないことは無いんだがなぁ。

 てか、俺の場合アイテムボックスが有るんだからどんな武器でも暗器にできるよな。


「とりあえずそれは伊勢が戻って来たら渡してやれ」

「そうか? まぁ、いいけど。

 なら、次は何作るかな~、五月蝿い戦闘組みの奴等も居ないし好きに作っても良いよな?」

「好きにすれば良いけど、素材代とか考えてやれよ、俺らの活動資金はそんなに多くないからな」


 戦闘向けの称号持ちの多い男子の中で星月は珍しく鍛治師だ。能力はそれぞれのジャンルの物しか作成できない武器錬成士、防具錬成士を合わせたようなもので、武器防具装飾品と作れる物は多岐に亘る。

 星月の奴、城の中では戦闘班の武器防具を作ったり、豚王や騎士団長に頼まれた武器を作るのに忙しくて、殆んど自分の作りたい物が作れないで居たからストレスが溜まったるみたいだ。

 異世界に来てから聞いたんだが、星月は自称武器マニアのようだ。何所で学んだか知らないけど、能力に頼らなくても刀が打てるぐらいには入れ込んでいるようだった。


「やっぱ妖刀ぐらい作らないとな~、それと魔剣な! 神剣とか作れれば世界のパワーバランスを面白くできそうだけど、魔剣も最近レベルが上がってようやく作れるようになったぐらいだしな~、神剣への道は遠いぜ~」


 こいつ魔剣も作れるのかよ、豚王共に知られなくて良かったな。


「魔剣なんて作れるのか? この世界の魔剣ってダンジョン製、ダンジョンで拾って来るぐらいしかないって聞いてたけど?」

「おう、さすが勇者の能力だな~。能力に魔剣作成が出た時は田嶋のやってくれたレベリングに感謝したぜ~」


 下手したら、生産能力持ちはレベル1のまま色んな物を作らされていただけだっただろうからな。


「星月が魔剣作成の能力が出てるって事は、他の奴もか?」

「波止場は錬成した武器に属性を付けられる。まぁ、俺も作成の途中でそういう行程を挟めばできるけどな~」

「新浜は?」

「あいつも一緒~、属性つきの防具だな~。同じく俺もできる」


 星月の能力を2人で分けた感じか、でも劣化版って感じになるのか?


「効果は私たちのほうが上っすよ!」


 新浜、俺の考えに抗議して来るな。


「そうなんだよ~、俺が自分で全工程をやるより協力して貰った方が良い物ができるんだよな~」


 星月は複雑そうな顔をして言う、自分で全部やりたいけど、高品質な物を作るなら協力して貰った方が良いって考えか。


「あ、もしかして新見の奴、魔法道具まで作れるのか?」

「レベルが上がって魔法道具作成と込められた術式の解析能力が出たからできるわ、オリジナルだと術式は自分で考えないといけないから能力で簡単にって訳にはいかないけど、今有る魔法道具に込められた術式を解析で読み解いて、そのまま同様の物を作ることはできるわ」

「げ、それって隷属の首輪も複製できるって事なんじゃ……」

「ふふん、さっきの首輪も解析済み」


 よし、新見はあまり刺激しないようにしよう、下手に暴走されたらクラスメイトとして殺り難い。


「まぁ、自重しろよ。

 そんで、星月、暗器はもういいから、幾つか適当に武器をくれ」

「ん~、適当って言われてもな~」

「鋭く、鋭利ならなんでも良い、アイテムボックスに隠して暗器の代わりにするからそういった系統で選んでくれれば良い」

「んじゃ~、ダガー、レイピア、投擲剣、針、小太刀、円月輪、長鞭剣、連結刃……」


 こいつ、意外と色々作ってるじゃねぇか。

 城で他の武器に使う素材を誤魔化してやってたな。


「まぁ、何所で使えるか分からないが、一応貰っておく」

「お~、他にも作っておくから、どんどん使って感想よろしく~」


 楽しんでるなぁ、まぁ、暗くなられるよりマシだけど。

 未だに引き篭もってる奴は朝霧の尽力のおかげで居ないけど、はっちゃけ過ぎてるのも問題だよな。


「そうだ、魔剣が作れるなら1つ高深用に最高の業物を用意してくれ」


 伊勢たちと合流したって話しだから精霊の件が片付いたら一緒に戻ってくるだろう。一人で何所かに行こうとしても伊勢が許さないだろうからな。

 高深にどんな能力があるのかも調べたいし、俺の渡した剣も折れたみたいだしな。


「ん~、あいつ生きてるのか?」

「生きてるよ、今伊勢たちと一緒に居る筈だ」

「そうなのか~、まぁ、分かったぜ。どんなのが良いんだ? 剣? 刀? 槍? 斧?」

「普通に剣だな、あいつは自分の能力が無いと思って鍛えてるだろうから、魔法使いに当たると苦労してそうだな、魔法に対抗できそうな能力付きで頼む」

「了~解~、最高の物を作るとなると……波止場~手伝って~」


 早速取り掛かってくれるようだ、高深が今どんな武器を使っているか分からないが、無駄にはならないだろう。


「必要な材料があったら調達するから言ってくれ」

「お~う、そん時は頼む~」


 よし、他の面々もそれぞれ自分たちにできることを始めている、こっちはこれでいいな。

 俺はとりあえず首輪とかを売りに行くか……。


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