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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
四章 セントコーラル・急ぎ足な帰路
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四章10話 聖女とか

「おう、お前らにお客さんだ」


 シルカ泥棒件が片付いて2日後の朝、冒険者協会に顔を出した俺たちを受付のおっさんが待っていた。


「やぁ、君たち……セインクマ様を救出して、おまけに抜け出したセインクマ様に戻るように説得してくれた事のお礼に来たよ……」


 おっさんに呼ばれて協会の奥から出て来たのは、妙に大人しいキラ騎士だった。ってか、一寸老けてないか? いったいこの2日間の間に何が有った?


「おまえ、大丈夫か?」


 内心では来たかと思いつつ、キラ騎士の様子が気になり訊ねるが、キラ騎士はため息を吐いて気にしなくていいと言うだけだった。


「兎に角、聖女様が君たちにお礼を言いたいそうだから、大聖堂まで案内するよ」


 大聖堂って、あの結界内なのか? クマが上手くやってくれていればそうなんだろうけど……。


「まぁ、行って見れば分かるわよ」


 そうだな、行って見るか……。

 どうやら大聖堂とやらは結界内に有る様だ。以前聖地を見に行こうとした時の神殿みたいな建物を、キラ騎士の案内であっさりと抜け、結界内に入ることに成功した。

 以前結界外からは見えなかった場所に大きな建物が有り、それが大聖堂だった。


「「GAU~」」


 大聖堂に入ると、真っ先にセインクマとセインクマが連れて来た雌のキティベアが走って来た……。

 

「って、ちょっと! そのまま突っ込んで来るな! 止まれ!」

「「GAU~~~」」


 全くこっちの話を聞きゃしない、勢いをそのままに俺を押し倒しポーチを……。


「舐めるな! 蜂蜜なら出してやるから!」


 ポーチから約束の蜂蜜を取り出してセインクマに渡す。雌のキティベアも蜂蜜の味を覚えたようで、セインクマと一緒に蜂蜜に夢中になっている。

 で、聖堂の奥からこっちに近付いてくる男は?


「よく来てくれたね、ここからは僕が案内するよ。ニールは通常業務に戻ってくれ」


 キラ騎士―ニールと言うらしい―以上に顔立ちの整った奴だ。キラ騎士に指示を出しているってことは、キラ騎士の上司か?


「来た、多分王子……」


 へ? 冬子は何を言ってるんだ?

 俺たちの案内をすると言った男には聞こえないように言ってるんだろうけど、聞こえた俺としては訳が分からないぞ。


「この国、王城が……結界、内に、有る……」


 へぇ、そうなのか……前に見に来た時はそんな物見当たらなかったと思うんだが……ここ、大聖堂もそうか……俺が見て無かっただけだな。

 ん? それが、どうして案内の男が王子だってことに繋がるんだ?


「田嶋君風に言って、テンプレ……」


 お約束って奴ね、良く分からないけど、ここで国の王子が出てくるって厄介事の気配しかしない……そう思うのは、俺の知っている王子がエバーラルドのフリードだけだからだろうか? あいつには殺されかけたから良い印象が無いんだよなぁ……。


「僕はティル、ティル・ライトネス・セインティア、よろしく」


 おお……名前からして冬子の言った事があたったっぽいな、セインティアはこの国の王族の姓だ。ってことは厄介事の気配しかしないんだけど……唯の冒険者に持って来る厄介事って何だ?

 王子ティルの案内で大聖堂の中を行く、王子が出て来た奥に向うものだとばかり思ったのだが、王子は別の方向に歩いて行き、外に出てしまった。

 ここは……庭園?

 聖堂の裏手だろうか、人の手が加えられ整えられた草木が庭を彩る。結界内と言う安全な場所だからか、落ち着いた雰囲気でリラックスできそうな感じだ。その辺の芝生で昼寝でもすれば気持ち良さそうだな……。


「あ、来ましたね……ソウヤ!」


 ん? 俺の名前を呼ぶこの声って……。

 ティル王子に案内されて向った場所にはテーブルと椅子、高級そうなティーセットが用意されていて、そこに3人の男女が座って待っていた。その内1人は知り合いだ。


「なんで、お前がここに居るんだ?」

「お前って……一国の姫に向って相変わらずね」


 俺の対応に呆れた声を出すリミュール、俺は前から態度を変えていない筈だが?


「BUGO!」


 よお、竜豚、お前も来てたのか……。因みにこいつ―竜豚人(ドラゴオーク)―は3人に数えていない。

 てな訳で、リミュール以外の奴なんだが……。

 1人は男、メガネをかけ、仕事と生活に疲れたサラリーマンって顔の白衣を纏ったおっさん。


「リミュール様の知り合いらしいので間違い無いとは思いますが……聖女様、彼らで間違い無いのですか?」


 おっさんは隣で微笑む女性に問いかける。

 男1女2の3人の内の最後、リミュールは違うから彼女が聖女様なんだろう。

 なんと言うか、キラ騎士が落ち込んでいた理由が分かった。

 白い法衣と言うのだろうか、袖口などに少しだけ金糸のあしらわれた法衣に身を包む彼女は肌も白く、腰まで届く長い髪も白く、全身真っ白だ。ニコニコと微笑む瞳の色は殆んど閉じている状態な為判別し辛いが、多分茶っぽい色だな。

 そんな全身真っ白の婆さんだ、疚しい考えを持っていたキラ騎士が落ち込むのも無理は無い。

 そう言えば、聖堂に入ってすぐの壁に婆さんと同じ格好の黒髪の少女の肖像画が有ったな……丁度、婆さんを若くして髪を黒髪にしたらああなる感じだ……昔の肖像画なんだろうな、ってことは、キラ騎士はあの肖像画を見て聖女の歳を勘違いしていたか……哀れな。


「ええ、間違いありませんよ。でも、先に彼らに自己紹介をしないと」

「ああ、そうだな。冒険者たちよ、よく来てくれた、私は……」


 唐突に玲奈が俺の腕に抱きついてくる。


「む!」


 なぜか逆の腕にリミュールが抱きついてくる。


「……紹介しても良いか?」


 この状況で!? ちょっと待ってもらえないか! これどうしたらいいんだよ!?


「どうぞ」


 冬子ー! 勝手に話を進めるな! この状況見えてるだろう!?

 ちょっと! 玲奈とリミュール、なんか分かんないが俺を挟んで睨み合うなよ!


「いいのか?」

「はい」


 いい笑顔だな、おい! チラチラこっち見てニヤニヤするな!


「私はマギナサフィアの筆頭外交官メイギス、よろしく」


 マギナサフィアの関係者か、それも政治に関わる系の奴だな。


「私はリミュール、リミュール・ヴェルデ・エバーグリーン! エバーラルドの第二王女よ!」


 それは知ってる、いい加減離れような……はぁ、離れる気無いんだな。


「あらあら、仲良しさんね。私はアイネ・サイキ、ここで聖女の役目を任されているのよ」


 やっぱりこの婆さんが聖女なんだな……。しかし、その名前は……。


「サイキ、アイネ?」


 玲奈もそう思うよな? でも師匠みたいに日本人風の名前が居るのは、過去にも日本人の異世界人が呼ばれているから不思議じゃない。


「そうよ、私は15歳の時に偶然この世界に召喚されて、先代の聖女に拾われた日本人よ」


 そう言って婆さんは「斉木(サイキ)愛音(アイネ)」と日本語で空に書いて見せた。


「貴方たちと一緒ね……」


 この婆さん、俺たちのこと気付いてる? 何を指して一緒だと言った? 名前が日本風だってことか? なら玲奈は違う……十分こっちの名前で通用する名前だ。 やっぱり、俺たちが異世界人だって気づいているって事か……。


冒険者(・・・)、ソウヤだ……」

「警戒しなくても大丈夫よソウヤ、貴方がシルバーブルで召喚された勇者だなんて事は、前に会った時には気付いていたもの」


 マジか? 俺そんなに分かりやすいことやってたか?


「蒼也……」

「蒼也君……」


 いや、そんな呆れた目で見ないでくれ、俺のせいじゃない筈だ、多分リミュールが鋭いんだ!


「レイナ・イセ……」

「トウコ・ミナミです」


 俺の方は置いといて話しは進む。

 なんでこうなってるんだ?


「俺たちはセインクマの件でお礼をしてくれるって話しで来たんだけど?」


 なんで、エバーラルドの姫、マギナサフィアの偉いさん、セントコーラルの王子と聖女、こんな奴らが集まっている場所に立たされてるんだ?


「取り合えず座って話しましょう、ソウヤはこっちね」


 あっという間にリミュールの隣に座らされる。リミュールが俺の右側、もう片側には玲奈が座る。相変わらず玲奈とリミュールに挟まれているこの状況、さっきから全く状況が動いてない気がするのは気のせいだと思いたい。

 玲奈の横に冬子が座り、リミュールの横にメイギス、聖女、ティルと順に座り丸テーブルはいっぱいになった。

 竜豚はいつの間にかやって来たセインクマと組み手を始めた。面倒な状況は冬子に任せて俺もあっちに混ざりたい……。


「セインちゃんを助けてくれてありがとう、お礼は聖地の精霊様の所までの案内でいいかしら?」


 こっちの目的まで筒抜けか!? この婆さん見た目は優しそうな婆ちゃんなのに、長年聖女なんてやってるってだけ有って結構な曲者なのか!?


「はい、それでお願いします」


 冬子はどうして平然と答えてるんだ? 俺の方がおかしいのか?


「蒼也君焦り過ぎよ、ここ異世界よ、どうせ予言とかそういうのがあるんでしょ」


 それにしても冷静過ぎだ! 玲奈は……駄目だ、まだリミュールと視線でバトルしている。はぁ、俺も竜豚たちに混ざって訓練したい、ってのは逃避か……。


「私が受けたのは神託ね、本当にこの世界に神が居るのかは分からないわ……でも、貴方たちが私たちの願いを叶える存在であることは間違いないわ」


 聖女がそれで良いのか? まぁ婆さんも異世界人だ、この世界の神に対する信仰心とかが曖昧なのは仕方ないか。


「それでは、私たちのことは全て分かっていると?」

「そう考えてもらって構わない、その上で、君たちに頼みたいことが有る」


 って、メイギスがのたまう、シルバーブルと戦争中の各国の偉いさんが集まっているこんな状況に招かれて、ただお礼されるだけで終わるとは思ってなかったけどな。


「一応聞きますよ、受けるかどうかは別ですけどね……」


 冬子が話を進めてくれる……玲奈とリミュールはそろそろ落ち着けよ。なんで初対面でそんなに仲悪いんだ!?


「単刀直入に言おう、シルバーブルとの無駄な戦争を終わらせる為に協力して欲しい」


 分かりやすいな……。

 そして、リミュールは居る意味が有ったのか?


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[気になる点] 主人公ちょいちょい 頭がおかしくなるけど お偉いさんとの自己紹介の時に抱きついてくる知り合いに なにも言えない なにも言わない は頭おかしすぎ これに限らず女性関係に疎いとかなレベル…
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