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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
一章 シルバーブル・努力の時
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一章3話 馬車で移動中

短……

 道中、見張りの時間以外は暇なので馬車に乗り合わせた冒険者から話を聞く、どうやらこの冒険者たちも国がいよいよヤバイ状態だと言う事で他国へ移動するところのようだ。

 冒険者たちは国に所属している訳ではないから、国のクズっぷりが目立つようなら早々にその国を見限り他国へ移動する。冒険者たちに仕事を斡旋する冒険者協会は各地に存在する、その協会も過去の勇者が創設した物のようで国に属しては居ない、よって戦争等に参加するかは各冒険者の判断に委ねられる、国に強制権等存在しない。そのあたりは気楽でいいな。もとより貧弱な能力値で参加しようなんて思っていないが……

 俺が冒険者登録するには最初に登録料を払う必要がある、これに関しては今手元にある金で何とかなるようだ。


「にしても、冒険者にもなっていない餓鬼がそれだけ小型の魔法のカバン(マジックポーチ)を持っているって、坊主は良い所の坊ちゃんか?」


 どうやら田嶋に貰ったポーチは相当高価な物のようだ、不審に思われないように冒険者っぽい服を買って着、学生服はポーチの中に突っ込んでいたのだが俺みたいなのがポーチを持っているだけで十分不審なようだ。色々と意味が無い。


「これは、友人からの餞別なんですよ、旅に出る俺の為に無理して用意してくれたみたいで……」


 そういう事にしておこう、あいつなら実際に無茶していそうだしな。


「そうか! 良い友人を持ったな!」


 何故かやたらと機嫌が良くなった冒険者はその後も色々と話をしてくれた。

 これは都合がいいと俺も調子に乗って色々質問を重ねる。


「へぇ、この馬車は今エバーラルド王国へ向かっているのか……」


 この国がシルバーブル王国だったっけ? 北が魔王の国であと東西南に1国ずつ3国に囲まれている、その国の内西に位置するのがエバーラルド王国ということになるようだ。


「どこに行くかも知らないでこの馬車に乗ったのか!?」

「いや、他国へ行くってことは知ってましたよ」


 この国じゃなかったらどこでもよかったからな。


「いいか、エバーラルドは国土の3分の1が竜の住まうドラグレッド山脈っていう竜の国だ。なんでも王族は竜の血を引いているって話だな」

「竜に乗って戦う騎士とか居ますか?」

「オレらが生まれるよりもずっと昔は居たらしいが、昔の魔王と勇者の戦いに参加した竜や竜騎士が事如くやられ数を激減させて以降竜騎士に成れた者は居ないって話だ、竜も慎重になったんだろうな」


 昔は居たのか、まあ、今そんなもん出たら逃げるぞ、俺がやるのは冒険者登録と生活費・旅費稼ぎ、元の世界への帰還方法の探索だからな。


「まあ、冒険者になるならもう少し慎重に行動したほうがいいぞ、じゃなけりゃ直に命を落とすことになる、オレらは物事を甘く見て逝っちまった奴等を何度も見てきたからな……」


 そうだな、能力値的にも楽観して良い訳がない、今後はもっと気をつけよう。

 その後も野営の仕方、食べられる植物の見分け方など様々な事を冒険者たちから学び、充実した旅路が続く、ときおり魔物に遭遇するが、冒険者たちが先行して魔物と戦い、俺は馬車の近くで冒険者たちが討ち漏らした魔物の相手をするぐらいで事足りた。


「それで、シルバーブル王国の南にある国がマギナサフィアだ」


 せっかくなので他の周辺国の事も聞いてみることにした。


「魔道に秀でた者が多く集まって出来た国だから魔法使いが多い、冒険者視点から言えば、あの国の魔法道具は高性能な物が多いから何か欲しい魔法道具が有って金に余裕が有るならマギナサフィアで買うのがいいだろうな、後王都には大きな図書館があるな、結構な蔵書だから調べ物が有るなら行ってみてもいいんじゃないか?」


 なるほど、エバーラルドで何の情報も得られなかったら次はマギナサフィアに行ってみよう。

 そして東に位置するのが神聖国セントコーラル、宗教国家だ神託を賜る事ができる巫女が居るとか眉唾な話があるそうだ。あと古の勇者が使った聖剣が保管されているらしい、この国は特に行く意味がないんじゃないか? でも昔の勇者の話に何か帰還のヒントが有るかもしれない、とりあえず保留だな。



 冒険者から武器の手入れの仕方を学ぶ、これまでの戦闘の後、俺がろくに武器の手入れをしていなかったのでワザワザ気を利かせてくれたようだ、俺が乗り合わせた冒険者は良いやつばかりで泣けてくるね。


「坊主の剣はシルバーブルの国軍が使ってるのと同じやつか?」


 田嶋が調達して来た物なので詳しくは分からないがおそらくそうだろう、召喚された直後俺の後ろを付いて来た兵士や訓練所で見かけた兵士が同じ剣を持っていたのを見かけた。田嶋は安物と言っていたけど多分そこそこ良い品だ。


「多分同じ型だと思いますよ、安物ですけどね」


 今は俺自身の能力が武器に追いついていないから関係無いが、その内どこかで自分に合った武器を調達した方が良いかな? それよりこの剣が手に馴染むのが先か? どうするにしろ長く使えるに越した事はない、せっかくやり方を教わったのだし、これからはしっかりと手入れしよう。


「鎧とか買った方が良いのかな?」

「戦闘を見る限りじゃまだ剣を振るのに精一杯って感じだから金属製の物は避けた方が良いな、重くて動けないんじゃ意味が無い」


 これも保留かな、俺の能力値じゃ一撃でも喰らえば危ない、全部避けるつもりなら身軽な方がいい。

 能力値だけが全てじゃないはずだ、でも今のまま修練を続けているだけで相田たちのように戦えるようになるんだろうか? まあ、やるしかないんだよな。さっさと帰還方法が見付かるのが最良なんだけど、そう簡単にいくとも思えないし、頑張るしかないか……


 馬車は進む、途中幾つかの町で休みエバーラルドを目指す。

 道中は順調だ、馬車で俺が勝手に訓練していても誰も注意しない、むしろ冒険者たちがアドバイスしてくれるほどだ、この一行の中で俺が一番若いってのもあるんだろうけど良い人たちだよな。

 時折魔物と遭遇しても俺が相手にするのはほぼ1体だけだ、他は冒険者たちが何とかしてくれる、多分俺の為に1体だけこっちに回してくれているんだろう、おかげで常に1対1での戦いができて魔物の動きにもだいぶ慣れる事ができた。


「飲み込みが良いな、もう1対1ではこっちが心配する必要ねぇよ」


 冒険者からも褒められ少しは自信が付いた。

 他の召喚者と比べるとおもいっきり劣る俺だけど、何とかやれるんじゃないかと思えるようになってくる。この調子で頑張ろう。


 シルバーブルとエバーラルドの現在の国境まで後10日……

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