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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
二章 エバーラルド・冒険者の日々
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二章2話 王都到着

 目の前所か全方位で盗賊の首の飛ぶ光景を見せられた母親は、完全に俺に怯えどう落ち着かせればいいのか皆目検討も付かず途方に暮れていたが、幸い娘の方が正気を取り戻し母親を落ち着かせてくれた。


「本当にありがとうございました」


 正気を取り戻し助けられた事が分かった2人は俺に丁寧に礼を述べた。

 盗賊の死体がゴロゴロ転がっていて環境は悪い部屋だが、盗賊たちが運んで来た商品の中から布や服を取り出し血塗れになった母親が身姿を整える。

 その間に俺は部屋から出て他の各部屋の盗賊たちの集めた金目のものを物色しポーチに詰めていく。

 戻った頃には母親の姿もとりあえず問題無い様に見えるぐらいに整っていた。


「それは外さないのか?」


 着替えは終わり血も拭ったみたいだが、2人共未だにその首には首輪が付けられている。


「この首輪は隷属の首輪と言って昔に異世界から召喚された異世界人が作った魔法道具です。名前の通り着けた者を隷属させる奴隷の首輪です。これを着けられた者の意思では外す事も壊す事もできないようになっているんです」


 異世界人作かよ、なんてもん作ってやがる過去の召喚者……


「外す方法は?」

「着けた本人、つまり主人に当たる者以外には外す事は不可能です」


 おう……首輪使った奴、それって俺がさっき殺した奴だよな。


「いや、何かすまない……」

「いえ、主人不在である以上隷属させる効果は有りませんから、この首輪は私たちがつけている間は唯の首輪です。私も娘もあなたが居なかったらどうなっていたか……感謝しています」


 そう言われても、そんな首輪してたら世間の目が気になって仕方ないんじゃないか?


「何とか壊せないのか?」


 命だけ助けて放り出すのも後味が悪い、俺に何とか出来ないか訊ねて見る。


「そうですね……昔、魔力が膨大過ぎて、魔法道具を使う際壊してしまう魔法使いの方が壊した事が有ると聴いたことが有りますが……」


 魔法道具って武器と違って魔力を込め過ぎないようにリミッターが付いてるんだよな、そのリミッターを貫いて魔力を込め過ぎれば当然のように魔法道具も壊れるか……しかし、リミッターを意識せずにぶっちぎるってどれだけの魔力量なんだ?


「やってみていいか? 失敗しても何も無いよな?」

「はい、でも既に効果を発揮している首輪に魔力を流しても何も起こりませんよ……」


 何も起こらないなら問題無い、無理矢理干渉すると着けている者に危害が加わるって言うなら試す事もできないけどな、俺は武器でだけど魔力を込めすぎて壊す感覚を良く知っているから、とにかくやってみるか。

 もしも何か有った時の為に自分の方から試してくれと言う母親の希望で母親の方の首輪に手をかける。

 先ずは普通に魔法道具を使う時の感覚で魔力を込める感覚、案外直にリミッターらしきものに阻まれ魔力が込められなくなる、ふむ、ここから魔法剣を使う際武器を壊す事前提で限界まで魔力を込める感覚で魔力を込める……お、リミッターを抜けて少しずつ魔力が込められてきたけど直にリミッターを抜けた魔力が霧散する程度だ。

 う~ん、俺は魔法剣使いだから、この首輪が魔法道具だと言う認識がいけないんだ、この首輪を武器、そうだな、手に巻いて殴るナックルだとでも思い込む……おお、急にリミッターを抜けて込められる魔力が上がった。

 この世界の魔法関係ってイメージによる所が大きくないか? 今も首輪を魔法道具としてでなく武器と認識したら普通にリミッターを超えて魔力が込められた。

 まぁ、今回は好都合だ、この感覚で破壊するまで魔力を込める!


 パリン


 母娘が見守る中、魔力を込め過ぎた剣が砕ける時と一緒で皮製の首輪が立てる音とは思えない音で首輪が砕けた。


「やった!」

「あら!」


 娘も母親も砕けた首輪を見て嬉しそうな声を上げる、なんでもないように言ってたけど首輪が外せない事ってやっぱり嫌だったんだよな、上手くいってよかった。


「上手く壊れたけど、身体に異常は無いか?」


 喜んでいるところ悪いが、無理矢理壊して本当に大丈夫だったのかを確認しないとな。


「あ、はい、なんともありません」


 問題無いみたいだ、なら娘の方の首輪も壊して良いんだよな。


 パリン


「ありがとうございます!」


 娘の方の首輪も同じ様にしてぶっ壊した。

 盗賊たちが奪って来た商人の荷物も母親が回収した。これで、もうここに用は無いな。


「とりあえず、王都まで送ればいいか?」


 助けると決めた時からこの母娘の護衛をする事は決めていた。

 報酬は期待できないが、ここで見捨てるなら助けていない。


「あの、一度馬車の方に寄っても……」

「ああ」


 母親の案内で盗賊が商人を襲った場所に戻った。

 頭から矢を生やし絶命している冒険者風の男と斬り殺されている少しでっぷりとした商人らしき男の死体、後は馬の居なくなった馬車がそこに残されていた。

 死体を弔い、たいした物は無かったが馬車に残されていた物を母娘を助けた礼として譲り受けた。残ったものを譲ってしまって大丈夫なのかと思ったが、王都に戻れば構えた店が有りどうとでもなるとの事だ、商人が死んでしまったのでその後の商いをどうするのかは落ち着いてから考えるそうだ。

 後、冒険者の持ち物も回収した。俺の魔法剣に十分絶えられそうな剣に冒険者が使っていた道具類それと冒険者の本人確認にもなる冒険者証、これらを冒険者協会に持って行くと状況に応じて報酬が発生するらしい、しかし、冒険者を殺して奪ったとかなら当然罪に問われる。そういったことも冒険者証に記録されるらしいから無理に冒険者を狙う奴は居ないみたいだが、大量に引っ張ってきた魔物に殺させるとか抜け道っていくらでも考えられるぞ、大丈夫か?

 しかし、ちゃんと護衛も居たんだな、不意打ちのヘッドショットで殺られてしまったようだが……いくら強くなろうが一撃で死に到る事も有るんだと肝に銘じておこう。

 結局、馬が居ない為馬車は置いて行くことになった。

 ここから王都エバーラルドまでは後数日、女性2人と一緒な為当初の予定よりは日が掛かるかもしれないがのんびり行こう……もしかしたら王都に向かう馬車が後から来るかもしれない、その時は母娘を王都に送ってもらおう。

 俺は、修行もかねて自分で歩いていくけどな。


「あらあら、こんな便利な魔法が有るんですね」


 数日かかると言う事は当然野営の必要がある、母娘も一緒なので人目に付かないだけの場所で野営する訳にもいかないので街道沿いでだ、見張りは母親と交替ですればいいから問題無い。

 母娘は俺の展開した魔法剣、ソードフィールドを珍しそうに見ている。これ、魔法剣は知っていれば魔力と武器だけで誰にでも使える技術だが、能力値の低い俺の唯一のアドバンテージだ、師匠に秘匿しろとは言われていないが、詳細を安易に話す心算はない。

 軽く魔物除けの結界で人や普通の動物には効果が無い事を話し夜の見張りに付いて話し合って決める。

 ポーチから出した食料や馬車に残っていた物で晩飯を済ませると娘の方は馬車から回収してきた毛布に包まり直に眠りに付いた。無理も無いだろう、盗賊に襲われて隷属の首輪までつけられた。その後助かりはしたが、今までずっと歩きっぱなし……普通の少女が精神的にも肉体的にも疲れない訳が無い。

 母親の方も疲れているだろうから先に休んでくれと促し眠ってもらった。

 幸いこの日は何事も無く夜を越えられた。


「本当にすみません!」


 翌日の早朝、朝日が完全に顔を出しきった頃、母親がぺこぺこと俺に頭を下げてくる。


「いや、大丈夫だ、起こさなかったのは俺だからな」


 当初決めた見張りを交替する時間は完全に過ぎてしまっているが、俺が交替の時間になっても母親を起こさなかったからだ、疲れているようなので今日ぐらいはしっかり休ませて、とっとと王都に着いてしまおうと思っただけなんだが、逆に気を使わせてしまっているな。


「次はちゃんと起こしてください! いえ、次は私が先に見張りをします!」


 それだと今度は母親が俺と同じ事をしそうだ、最近は周囲に気をつけながら寝ることが普通になってるから何か有ったら起きられるし、決まった時間に目を覚ますのも何とかなるからそんな事態にはならないだろうが、交替の時間になればしっかりと起こす事を約束しておく。

 なんとか母親を納得させて歩みを再開させた。変に気を使いすぎるのも良くないと憶えておこう。


 旅路は少しゆっくりながらも軽い魔物の襲撃のみで順調に進んだ、母娘が居るので俺が修行の為に魔物を乱獲して走り回ることも無いので本当に順調だ。


「今このあたりですから、もう明日には王都に到着しますね」


 王都に着くまで後どれぐらいか地図を見ながら聞くと母親は地図を覗き込みながら答える。

 もう直か、比較的順調だったとはいえ商人の母娘がよく文句も言わずに歩いて来れたな。父親が死んでしまった後だというのにこの母娘は良く頑張っていると思うのは俺が異世界人だからだろうか? この世界はこんな事よくある事なんだろうか? どうにせよこの母娘が悲しい訳も無いのだろうから気丈に頑張っているんだろう。

 明日には着くか……きっちり護衛しないとな。


「ありがとうございました!」

「本当にありがとうございました。もしこの街で何か困った事があればレーヴェン商会をお尋ね下さい、私たちに出来ることでしたら力になります……」


 翌日、予定通りに王都に到着した俺は母娘のこれまでの事情説明のおかげで正門をあっさりと抜け王都エバーラルドに入る事が出来ていた。今現在ただの旅人である俺は本来なら色々と審査が必要なようだが、母娘のおかげで凄い助かった。これだけでもお礼としては十分なのに亡き夫に替わり商売を続ける事を旅の間に決めた母親はまだ恩を返すと言ってくる、多分頼る事はないと思うがその時はよろしく頼むと返して母娘と別れる。


 よし、ついにエバーラルド王都に到着したな、ずいぶん長く掛かった気もするがあっという間だった気もする、ここには冒険者協会の本部がある筈だから、これでやっと俺も冒険者として仕事ができるようになるわけだ、登録料は盗賊の溜め込んだ金でどうにでもなるから早速冒険者協会に行ってみるか!


「あ~そうだ、冒険者協会の場所を聞いておけば良かったな……」


 でも、まぁいいか、そう焦る事もない、ゆっくりと街を探索しながら冒険者協会を探すとしよう。


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