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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
二章 エバーラルド・冒険者の日々
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二章1話 1人の旅路

 エバーラルドでの旅は順調だ、国境付近で会った様なアホにも出会っていないし、能力値の強化部位を持つ魔物も何匹か狩ることが出来た。このまま順調に行けば後数日で冒険者協会の有る王都に到着できるだろう。

 師匠との旅の影響で、不必要に魔物に挑む癖が付いてしまっているが、良い訓練になるのでその程度の寄り道は問題ない、偶に盗賊やってる奴らと遭遇して殲滅し武器を没収しているが魔法剣の連続使用に耐えられる物は今の所手に入っていない、それよりも盗賊とは言え人を殺す事をなんとも思っていない自分に今更ながら気が付いた。

 最初に盗賊に会った時は魔物の襲撃も重なっていて考えている余裕が無かった上に、何とか倒した後も魔物の変異種に襲われたり師匠に助けられたりと、バタバタしていてそれどころではなかった。

 その後も師匠の修行についていくのに必死で深く考えていなかった。むしろ魔法剣の練習用の武器を手に入れるための魔物ぐらいに思っていた。

 そう考えると俺は自然とこの世界に馴染んでしまっているんじゃなかろうか?

 深く考えないでおこう、今まで散々殺ってきておいて今更だ。


「そろそろ野営の準備をしたほうがいいかな……」


 師匠と旅していたときは師匠に教えを乞う立場上師匠の指示に従って野営などのタイミングを決めていたが、今は一人旅である以上その辺りも自分で考えないといけない、前に野営の準備を始めるのが遅くなりすぎて、真っ暗の中、良い野営場所を捜すだけで苦労した覚えがある。

 魔法剣・ソードフィールド、4本の剣を四方の地面に突き刺し、囲んだ内側に魔物除けの結界を展開する攻撃系の効果が多い魔法剣の中では珍しく便利系の魔法剣だ。これがあるから俺が警戒するのは人の目だ、師匠と交替で見張りをできた頃とは違うので、寝込みを盗賊の類に襲われないようになるべく人目につかない場所が今の俺の野営場所として好ましい。

 適度に遮蔽物のある良さそうな場所を見つけ、魔法道具である道具袋(ポーチ)から魔法剣の行使に一度だけ耐えられる剣を4本取り出しソードフィールドを展開する。これで魔物からは結界内部の俺が認識できないし結界を避けるようになる。

 1人では特にすることも無いのでさっさと飯の準備に取り掛かる、ポーチから調理に必要な道具、食器、水、食材と今日狩った魔物の能力値強化部位を次々取り出す。このポーチは田嶋に貰った見た目以上に物が入る魔法道具だが、入り過ぎだ。旅の道中結構色んな物を放り込んでいるが未だに容量の限界が見えない、俺としては有り難いが、一度適当に物を入れまくって最大容量を調べておいた方が良いだろうか?

 まぁとりあえず調理だ、切る焼く煮る、元の世界でも料理なんか数えるほどしかしていない俺にはその程度が限界だ。

 魔物の能力値強化部位は今回肉ばかりなので串に刺し串焼きにする、他の肉と野菜を使いスープも作ろう、後は前に立ち寄った村で買ったパン、これで今晩の飯の完成だ。はぁ、米が食いたい。

 俺はこの世界に召喚されてから今日まで米を見たことが無い、もしかしてこの世界には米が無いのだろうか? 無いなら無いで我慢するしかない、早く元の世界に帰る方法を探すだけだ。さてさて、エバーラルドでは有益な情報は有るだろうか?

 食事を終えてしまえば特にやる事は無い、精々剣の手入れぐらいだが今の所使える剣は田嶋に貰った剣ぐらいだから手入れも直に終わる。となれば本格的にやることなんて無くなる。

 早々に寝てしまおう、ソードフィールドのおかげで魔物を警戒する必要が無いのでポーチから毛布を取り出して適当な木にもたれ掛かり眠る、魔物以外はソードフィールドを抜けられるので盗賊などに襲われれば危険だが何者かが近付いて来れば眠っている最中でも気付くぐらいに俺も人間離れして来ている。

 俺以外の召喚された者は召喚された時点でこんなこともできるようになっていたんだろうなぁ……

 羨ましい限りだが、元の世界に帰れば何の意味もないことだ、割り切って今は身体を休めよう。


 翌日、何事も無く朝を迎えた。野営場所にさえ気をつけていれば早々襲われる事も無いのでいつも通りだ。

 毛布をポーチに片付けて昨日の串焼きの残りで朝食を済ませ、出発の準備を終える。

 四方に刺した剣を引き抜くと剣は砕けて使い物にならなくなった。そろそろソードフィールド用に剣を用意しないとな、毎日4本砕けていたのでもうボロい剣が殆ど無い状態だ。

 エバーラルドの王都で冒険者になって稼げたら魔法剣に耐えられる剣を何本か用意しないとな。

 忘れ物が無いかを確認し出発、道中現れる魔物は問題無く仕留める、能力値の強化部位を持つ魔物は積極的に狩って糧とするのは当然として、それ以外の魔物も無理の無い程度に戦い経験とする。

 この国に入ってから変異種の魔物に遭遇していないから、師匠から得た知識だけで魔物に対応でき危険な状態にはなっていない、でも一度大怪我を負って死に掛けているんだ、いくら魔物の強化部位や修行で能力値が上がっているといっても人の身体は脆い、思わぬ一撃が致命傷になることも十分考えられる、気を抜かずに行こう。


 今日からは街道沿いを進むようにした。魔物との遭遇率は下がるけどその分安全だし、街道沿いの方が盗賊なんかの出現率は上がり剣を補充できる可能性がある、昨日のソードフィールドに使った剣で残りが心許無いので王都に着く前に少し補充できればいいな程度に思っていた……


「で、速攻で出てくるとか、何時の間に俺はトラブル体質になったんだ?」


 お決まりの台詞で脅しをかける盗賊たちをどう始末しようか考える、やはりこの世界に来て感覚が麻痺しているのか、平然と人を殺す方法を考えている俺に少しだけ戸惑う。

 数の有利からか盗賊たちは余裕を見せ笑っているが、十数人程度の数あの魔物の群れに比べたら何の脅威も感じない、この程度の数で怯むような修行と経験はしていないつもりだ。

 徐に一番手近に居る盗賊の首を斬り飛ばす。

 ホント、何で盗賊たちって反撃される事を想定していないんだろうな? 対峙した状態からこんなに簡単に先手を取れるなんて魔物相手じゃ考えられないぞ、そして反撃されたらされたで動揺、激怒して無造作に襲ってくる、思考の伴わない攻撃なんて対処するのは容易い、冷静に状況を見て順に盗賊たちを切り伏せていく、残り数人になったところでようやく逃走を図る盗賊たちを……


「逃がさねぇよ!」


 背後から確実に仕留めて殲滅する。


「そう言えば盗賊の巣に乗り込んでお宝ごっそり奪うとかってやったことなかったな」


 盗賊の死体から武器を回収しながらふと考える、もう直エバーラルド王都だ、王都に着いたら冒険者登録をしてとりあえず金を稼ぎたいが、登録にも登録料金が要る、その金は暫く王都でバイトでもして稼ごうと思っていたが良く考えたら王都での宿泊にも金が掛かるんだよな、今の俺の持ち金は本当に心許無い、この状態から登録料を溜めるのには結構な時間が掛かりそうだ……


「ちょっと探してみるか……」


 此処に盗賊が現れたという事は盗賊のアジトが何処かに有るかもしれない、王都での行動を効率良く進める為に盗賊のアジトを探してみよう、この程度の奴らなら多少数が多くても問題無いし殺しても全く良心が痛まない。おお、意外と良い案なんじゃないか?

 俺は盗賊のアジトを探してさ迷い歩く、出来るだけ人目に着かない場所でアジトにできそうな物がある場所を捜して廻るが中々見付からない、そう簡単に見付かるようなら既に討伐されているか……

 仕方無いので諦めかけたその時、盗賊と思われる男共が首輪の着いた女性2人を囲いつつ移動する姿を発見した。男共が女性の胸や尻に触れ卑下た笑い声を上げるので良く目立つ……


「……どっかから攫って来たか? この後あの2人がどうなるかなんてのは俺でも分かるな」


 でも、俺まだ高校生なんだよな、18禁展開は認めねぇ……


「はは、散々グロ画像量産しといてなんだけどな」


 まぁ、俺に目を付けられたのが運の尽きだと思って盗賊共にはこの世から退場してもらおう。

 あの様子ならつけて行けばアジトまで案内してくれるだろう、一網打尽だ。

 にしてもあの女性二人はどうして抵抗しないんだ? まあいい、とりあえずつけよう。


「こんな所に洞穴が有るのか……」


 盗賊たちの後をつけて大きな岩にぽっかりと空いた洞穴を見つけた。

 いったいどうやってこんな岩に穴を空けたのかとか疑問は有るが盗賊たちはとっとと女性を連れて穴に入っていってしまったので俺も急いで後を追う、せっかくつけて来たんだ事が始まる前に片付けないとな。

 洞穴の中は魔法道具の明かりで不住無く行動できるようになっていた。この発光する魔法道具も何処からか奪ってきたんだろうな、いくらぐらいになるだろう?

 幾つか分かれ道があるが先に女性たちの安全を確保しないと金品回収も落ち着いてできない。


「お頭~今日襲った商人がいいもん持ってましたぜ~」


 いいもんって2人の女性の事か? 持ってたって、物扱いかよ……まぁ奪ったらしい物も持って来ているようだからそれのことかもしれないが……


「おぉう、えらく良い女じゃねぇか」


 違ったな。

 盗賊に連れられて来た2人の女性、恐怖からか真っ青になっているが確かに顔立ちは多分整っているだろう、異世界ならではの赤い原色の長髪だが、俺たちが元の世界で髪を染めるような違和感も無くよく似合っている。片方がグラマラスで片方がスレンダー、身体つきに関しては人それぞれ好みが分かれるところか。


「商人の妻と娘なんですがね、奪った商品の中に丁度奴隷用の首輪もあったんで有効活用させてもらってるんでさぁ」


 移動中の商人一家が被害者か……護衛は居なかったのか?


「良くやった! オレは中古に興味はねぇからそっちの女はお前らで好きにしろ」


 盗賊の頭がグラマラスな方、母親の方か? 彼女を指し下っ端共に言う。

 盗賊共は歓声を上げ早速母親をどこかへ連れて行こうとするが、俺がそれをさせない。


「娘の方はオレg……」


 盗賊の頭は娘さんに手を伸ばした体勢で後ろに倒れ頭から剣を生やしていた。


「このロリコンが……」


 まぁ、俺の投擲したボロ剣が命中しただけだ。女性に当たる心配はしていない、これまで散々武器を投げて来たんだ……殆ど動かない的に対して外すなんてもうありえない。

 他の盗賊たちが状況を理解する前にその首を一つ一つ斬り飛ばしていく、騒ぐ前に斬る。


「きゃぁあああああ!」


 おっと、予想外の所、捕まっていた母親から悲鳴が上がった。自分を囲んでいた奴らが突然首を刎ねられ血をぶちまけてきたらそりゃ驚くか、俺のせいで全身血塗れになってしまった母親を落ち着かせたいが、騒ぎを聞きつけ他の盗賊が集まって来る、この部屋の盗賊は片付けたからそっちの迎撃にうつらないと……


「お頭ぁ!」


 部屋に飛び込んで来た盗賊を袈裟斬りにして通路に蹴り飛ばす。後続の盗賊たちが通路から部屋に入るタイミングを外し入り口に固まっているので魔法剣を撃つ。


「アクアスパイラル!」


 突き出した剣から水流が放たれる、たかが水だが盗賊たちを圧殺するぐらいの威力は持たせている。

 水流に呑まれもみくちゃにされながら吹き飛ばされ通路の壁にぶつかり水につぶされる盗賊で通路は死にきれていない盗賊の呻き声で阿鼻叫喚の地獄絵図だ、ここを通って帰るのか、なんか嫌だな……自分でやったこととは言ええげつない。どうせもう助からないだろうし止め刺しとこう……

 虫の息の盗賊も既に息絶えている盗賊も平等に首を飛ばし確実に息の根を止める、その間追加の盗賊は現れなかったからもう居ないか逃げたのだろう。

 さて、お宝拝見と行きますか!


「ひっ!」


 あ、商人母娘のこと忘れてた。振り向いた俺を怯えた表情で見る血塗れの母親と、状況に着いて来れていないのか呆然としている娘を見てどう対処すればいいのか考える。

 いきなり殺戮劇を繰り広げた為仕方ないとはいえ、怯えられているみたいだから落ち着かせるところから始めるか……

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