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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
一章 シルバーブル・努力の時
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一章12話 国境越えてエバーラルド王国

 戦争中の今の時勢国境は曖昧だ、シルバーブルの王都を出る時は賄賂とか要るかと思っていたけど、そんなものを払う場所が無い。

 地図を広げ確認したけど国境なんてとっくに過ぎている筈だ。

 もしかして道を間違っているのか? 師匠も居ないし変な道は選ばず街道沿いにやって来たんだけど全く人と出会わなかった。

 これは迷っている可能性を考えた方が良いのか? 念の為もう少し進んでみよう。

 一応地図通りに進んでいる筈だと言う根拠の無い自信を信じて進むと街道の先に武装した集団が見えた。

 まだ小さくしか見えないけど、メタリックな深緑色の鎧の輝きと思われる物が間違ってないなら人の集団だ、皆同じ鎧を纏ってこちらに目を向けている。

 俺に気付いているな、ここで避けるのもなんなのでそのまま進む、痛くも無い腹を探られるのは面倒だからな。


「そこで止まれ! お前は何者だ! 何の目的でここに来た!」


 ようやく声の届く距離まで来ると緑鎧の1人が1歩前に歩み出し俺に声をかける。


「まずお前らが何だ? それとそれが人に物を尋ねる態度か」


 その場に止まって極力小さな声で言う、相手に聞こえないのは承知しているが、ここで止まれと言われたのだから仕方が無い、そう、悪いのはあの態度のでかい緑鎧だ。


「もう一度聞く! お前は何者だ! 何の目的でここに来た!」


 案の定聞こえなかったようだ、聞こえないように言ってるんだから当然だよな。


「俺は蒼也、旅人だ、目的はシルバーブルから出る事……」


 次は普通ぐらいの声で言ってみるけど多分この距離だと聞こえないな。


「ええい! お前は何者だ! 何の目的でここに来た!」


 これずっとループするのか? 俺が折れないといけないのか? 気に入らないけど仕方ないか、延々ループするのも面倒だからな。


「俺は蒼也! 旅人だ! 目的はシルバーブルから出る事……シルバーブル以外の国ならどこでも良かった!」


 声を張り上げ緑鎧に聞こえるように伝える、少しだけ回りの緑鎧と話したかと思うと俺にこっちへ来いと合図を送って来た。

 とりあえず近付いても良いってことだよな。


「また移住者か……豚の国は本当に終わってるな、はは」


 それ今言う必要有るか? まぁ、シルバーブルに何の義理も無いからどう言われ様がどうでもいいが……


「で、こっちは名乗ったぞ、あんたらは何だ? いや、どうでもいいか……じゃぁな」


 話を早々に切り上げて進もうとする俺の前を緑鎧が遮る。


「それ以上勝手に進むなら貴様をシルバーブルの間者として始末する!」

「そうか、じゃぁな」


 踵を返し来た道を戻る、緑鎧共はまだ俺を見ているが、ある程度戻った所で街道から外れ道無き道を進む、鎧共が陣取っているのは街道中なのでこうして道無き道を行き迂回すれば、態々面倒な問答をせずとに済む。


「まぁ、挑発してるから追って来るかもなぁ……」


 鎧共から見える位置で街道から外れ鎧共を迂回して見せ付けるような位置で街道に戻る。


「待てごらぁ!」


 何だその品格の疑われる声は……鬱陶しいから無視しよう。


「待てと言っているだろうが!」


 緑鎧のおっさんが息を切らせて俺の前に回りこんでくる。

 俺はキョロキョロと辺りを見回した後、少し首をかしげ何事も無かったかのようにおっさんの横を通り過ぎる。

 だが、回り込まれてしまった。

 そして鎧のおっさんは無言で剣に手をかける。


「何?」


 仕方ないから話をしてやることにしよう。


「ここを通りたければ出す物が有るだろう、んん」


 うぜぇ、何こいつ、うぜぇ……


「わかった」


 俺は再び街道を外れ鎧のおっさんを迂回してから街道に戻る。


「待てぇぇええ!」


 再び緑鎧のおっさんが息を切らせて俺の前に回りこんでくる。


「んだよ! おっさんの言った場所は通ってねぇだろうが! 何か文句あんのかぁ! あ゛あ゛!」


 急に怒鳴り出した俺の剣幕に怯んだおっさんに更に言葉を重ねる。


「国境も曖昧な今の時期に金取ろうとしてんじゃねぇよ! 何だ今の金出したら通してやるよって態度は! 不審者の検問ってだけなら普通に受けてさっさと通るわ! 賄賂とか無駄なもん払うぐらいなら街道なんざ通らねぇよ! てか金なんてとっくに無くなってるわボケ!」


 この前の負傷の治療費でスッカラカンになってからまともに稼いでいない、完全にサバイバル生活してるからなぁ、師匠に結界魔法剣・ソードフィールドを教わっておいて良かった、魔物を気にせず野営できるって素晴らしい!


「な、な、な」

「どうしても通さないって言うなら街道以外を通って行くから構わないが……あんたらの事はクズだって言い触らすからな、覚悟しておけ」


 結局俺は緑鎧の集団の中を堂々と突っ切り街道を戻り道無き道を進んだ、今回はきっちり鎧共から見えない場所を選んだから、魔物に遭遇した事以外は何も問題なかった。

 暫く師匠って言う保護者みたいな人と一緒に居たからか俺の緊張感ってやつが抜けているような気がする、以前の俺なら緑鎧のおっさんに喧嘩売るような態度を取っていただろうか? 多分取っていない、もうちょっと慎重に事を運んでいた筈だ、これを期に気を引き締めなおした方が良いな。

 でも、師匠のおかげで自分が強くなれている実感があり余裕ができているのも事実だ。


「まぁ、気張りすぎず、余計な波風立てない様にしていこう、緊張しすぎても疲れるだけだしな」


 もう大丈夫だろうと街道に戻り街を目指す。後から緑鎧が追って来る事は無い、本当にあの鎧共無駄な事してるよな、街道を外れれば魔物との遭遇率が上がるが、こんな世界で戦えない奴が適当に歩いてるとも思えないから街道を行く人たちの中には誰かしら戦える者が居るだろう、だから皆俺みたいにあの鎧共を避ければいい、うん、本当にあの鎧共は無駄だ。生きている価値すら無いな。

 結局金が欲しかっただけみたいだし……あれがエバーラルドの国民性だと面倒だな、早々に他国へ移動した方が良いか?

 どの道俺には金が無い。バイトを探しながら各町を経由して冒険者登録の為に冒険者協会の有る王都に向かおう。支部じゃ登録してくれないらしいからな。

 あ~、でもあの鎧たちが居た事でやっと国境を越えたって気がしてきた。

 戦争のせいで国境が曖昧になっているからいまいち実感が湧かなかったんだけど、ついに俺はシルバーブルから出ることができたんだな、十数日の行程をどれだけ時間かけてるんだよ、まぁ師匠との修行のおかげなんだけど、それで強くなれたから文句を言う気は全く無いんだけどね……

 俺が師匠から教わったことは多い。

 冒険者・旅人として必要な知識。戦い方や魔物についての知識と能力値強化に必要な魔物とその部位について。他にも様々なこの世界の豆知識。

 そして、魔法剣……他のクラスメイトと違い特殊能力の無かった俺には本当にありがたい技術だった。

 一度武器に魔力を込めるという必要行程上、連発には向かないが、解決策は先の魔物の群れとの戦闘で見出した。今の手持ちの武器じゃ魔力を込められないか、一度魔法剣を使えば壊れるようなものばかりなので実行しようとするなら金が必要になるが、それも冒険者になって稼げばいい。

 でも、先ずは進まないとな、地図で確認すれば一番近い町は徒歩だと野営も込みで2日位かかる、金が無い関係上その町に夜に着くのは避けたいから、魔物を狩って売れそうな物を集めながら進もう、冒険者じゃないとそういった物を売る時に買い叩かれやすいみたいだけど当面の生活費が稼げたら後はバイトを探して何とかする。要はとっとと王都に行って冒険者登録をすればいいんだ。


「よし、んじゃ、とっとと行くか!」


 今で城を出てから1ヵ月ちょい、田嶋たちはどうしてるんだろうな……


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