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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
一章 シルバーブル・努力の時
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一章9話 魔物の変異種

 さて、突然だが師匠から聞いた魔物の変異種についてもう一度おさらいしてみよう。

 魔物の中には突如能力的に強力な固体が現れる事がある。前に戦った蜂の中に居た女王蜂も群れのボスと言う訳ではなくその変異種だった。

 早々出会うことは無いのだが、最近は魔王の影響で魔物の大量発生や、変異種の出現がやたらと多いらしい。

 変異種といっても、先程戦った魔物のように巨大化するものや、蜂のように特殊な攻撃方法を持つものと様々だ、それでも元の魔物を大きく逸脱したりはしない。

 どうしてこんな話を始めたかと言うと、その変異種が4体も俺の周りに居るからだ。


「調子に乗りすぎた」


 現実逃避している場合じゃない、前に突っ込みすぎて完全に魔物に囲まれてしまった。

 俺を取り囲むのは4種の魔物、どう見てもゴブリン、二足歩行の大トカゲ、青い大蟷螂、ピンクの羊だ。それぞれ筋骨隆々のゴブリン、赤色の大トカゲ、両刃の鎌を持つ大蟷螂、ほぼピンクの毛玉という変異種が指揮をとっているようだ。変異種は群れのボスではないが、その魔物の種族の中ではダントツの強さを誇る、そうなると自然に道は限られてくる、孤高になるか群れを従えるかだ。


「で、従えた奴が群れ引き連れて4っつも同時にやって来たと……これ詰んでる?」


 やばいな、なんかテンション上がって突っ込みすぎた。戻ろうにも魔物の群れを突っ切らなきゃいけないし……どうせ突っ切るなら師匠と合流するか。


「よし、やってやる」


 どこまで進めばいいか分からないけどとにかく突き進む、とりあえず前に居るゴブリンの群れを蹴散らす!

 群れって言ってもゴブリンだ、今の俺なら一薙ぎで数匹斬り殺せる、しかもゴブリンは俺の探していた魔物でもある、こいつらは群れて質は悪いが武器や防具も使う。となれば、斬り殺したゴブリンの武器は有効に使わせてもらおう。投げる投げる、ゴブリン以外の奴らも殲滅するつもりで適当に投げまくる。


「はは、やればできるもんだな!」


 ゴブリン共を粗方片付けゴブリンの変異種に対峙する。

 大丈夫だ、体は軽いしボロいが投げる武器も補充できた、もうどんどん進んでやる。


「GOBUUUU」

「うるせぇ!!」


 ボロいが巨大な斧を振り上げ俺に振り下ろそうと気合を籠めて叫ぶゴブリンの変異種、だが遅い。その巨大な斧はゴブリンで筋骨隆々程度では扱いきれていなかった。

 振り下ろされる前に腕を斬り離すと支えを失った斧はゴブリンの変異種を押しつぶした。


「斧使いたいからさっさと死んどけ……」


 バタバタと斧の下で暴れるゴブリンの変異種の頭を剣でブッ刺して絶命させる。

 ゴブリンの変異種が動かないのを確認し斧を持ち上げ……重! 思ったよりも重かった。適当に投げるのは無理だな、なら、ジャイアントスイングの要領で回して、ある程度遠心力を付けて……投げる!

 回している間に周囲の魔物を斬り殺す。投げた斧は数メートル先まで魔物をひき潰しながら進んで地面に突き刺さる。


「いけるな、この調子で師匠を捜そう!」


 他の変異種? そんなもんとっくにゴブリンの武器投げて殺した!

 斧を投げる、斧の場所まで魔物を斬り殺しながら進む、また斧を投げると繰り返してどんどん進んでいく。

 何度も繰り返していると段々慣れてきたのか斧の飛距離が延びだした。

 お、10メートルを越えたな、その分ひき潰した魔物も多くなる、俺の進む速度は斧の飛距離が伸びると共に早くなっていく。

 ちらほらと変異種らしき魔物を見かけるが今は進む事を優先し、進路上に居ない限り無視して進む。


「うらあああ!!」


 斧の飛距離が20メートルに達した頃……ようやく師匠を発見した。


「うお! 何だ! ッて斧ぉ!」


 ガッっと音がして俺の投げた斧が跳ね返ってくる。


「嘘ぉ!」


 何とか横に飛んで避ける事ができたけど、迫って来る威圧感が凄い、今まで自分が投げていた物だけどこんなやばかったのか。


「ソウヤ、危ないじゃないか!」

「こっちも危なかったですよ!」


 俺と別れてから今まで魔物に囲まれて居たにも関わらず師匠はいつも通りだ。


「っと、のんびり話してる場合じゃない、逃げるぞ」


 言って俺が来た方向へ走り出す師匠の後を勢いで付いていく。その際、ちらりと後方を見ると何かでかいゼリーが波打ちながら追って来ていた。


「うわ、師匠あれも変異種ですか?」

「スライムだ! 変異してでかくなって物理攻撃が効かなくなってやがる!」


 スライムってよく聞く魔物だけどこの世界のスライムは雑魚だ、普通に歩いていて気付かずに踏み殺すぐらい雑魚だ。


「あれがスライム!? しかも物理攻撃無効って……師匠、魔法剣で倒せますよね?」

「無理だ、あのスライムの中を見ろ」


 スライムの中?

 言われて良く見てみると青くて透明のスライムの中には全裸の男が2人入っている、何だあの露出狂は?


「嫌そうな顔するな、多分あれが護衛の奴らだ」


 護衛の奴らって、露出狂だったのか……


「変異して巨大化して物理に強くなって、取り込んだ物を溶かせるように成ったんだろう」


 物を溶かす? でもあの露出狂は溶けてないぞ。


「物は溶かすが、生き物は溶かせないってことだ、だからあの護衛たちはまだ生きている」

「じゃあ、気軽に高威力の魔法剣は使えませんね、何とか助けられるんですか?」


 今は生きていてもこのまま放っておいたら死ぬよな、窒息死とかで……


「威力を絞った魔法剣でスライムの核を攻撃しようとしたんだが、もう少しの所で届かなくてな、それでもう一発撃とうと剣に魔力を込めてたんだが、その間に再生しやがった」


 おう……更に再生能力持ちかよ、魔法剣は連射性能に問題有だな。

 護衛たちに被害は出さないようにして、核、スライムの心臓を破壊しないと倒せない、さて、どうすんだ?

 

「ソウヤ、いつも魔法剣の練習してるボロい剣よりマシな剣有ったよな?」


 さっき使い終わった時にポーチにしまったから予備の剣は確かに有る。


「有りますよ、投げるんですか? 物理攻撃は効かないんじゃないんですか?」


 とりあえずマシな剣をポーチから取り出して代わりにいつもの愛用の剣をしまう。

 合流するまで大変だった道程が今は師匠と一緒だから物凄く楽だ、時折師匠が盛大に魔法剣をぶっ放すから相手にしないといけない魔物の数も減っている。


「その剣位なら多分成功する、俺の後に続いて魔法剣を撃て、それで核まで届く筈だ」

「いや、無理ですよ。ずっと失敗し続けてるの見てるでしょう」

「ボロい剣で練習していたらそりゃ失敗するだろう、元々長く使っていない武器じゃ魔力が込め難いんだ、でもそれぐらいの剣なら一度ぐらいは成功する、俺が保障するからとにかくやってみろ」


 使った後必ず壊れるだろうけどな、と付け足して魔法剣の準備を始めた師匠の言葉を信じて俺も剣に魔力を込めていく、愛用の剣でぶっつけ本番をする訳にもいかないから予備の剣が壊れるのは仕方ないと割り切ろう。


「お、本当だ……壊れない」


 剣に魔力を込めた感覚を始めて知った。ここからイメージで魔法剣を放つ、イメージは師匠が先に放つ魔法剣をそのまま再現するイメージが分かりやすいだろう。


「行くぞ、ソウヤ!」

「はい!」


 師匠が振り返り、まだ少し後方に居るスライムの核に向けて剣を突き出す。


「ピアッシングエッジ!」


 師匠の剣の刃を魔力が包む、その魔力が突きに合わせて刃の延長線上に魔力の刃となって鋭く伸びる。

 魔力の刃はスライムの体を吹き飛ばしながら核へ迫りあと少しというところで消滅した。


「KYUROOOOOOO!!」


 どこから声を出しているのか分からないが、スライムの叫び声が響く中俺は追撃の魔法剣を放つ。


「ピアッシングエッジ!」


 師匠と同じように剣から伸びた魔力の刃が再生しかけていたスライムの体を吹き飛ばし核を貫いた。

 同時にパキンという音と共に予備の剣が砕け散る。


 スライムの方はゴポっという音がしたかと思うとそのゼリー状だった身体が液化して地面に広がった。

 残ったのは濡れた地面と横たわる全裸の護衛たち。


「よし、護衛を回収! そのまま野営地まで逃げるぞ!」


 えー、正直全裸の男なんて触りたくないんだけど、師匠がさっさと一人担いで進みだした。置いて行かれる訳にもいかないから仕方なくもう一人の方を担ぐ、うわぁ……スライムの体液でべとべとして気持ち悪い……


「今ので感覚はつかめただろう? ここからはどんどん魔法剣も使っていけ」


 そうだ、一度使ったことで魔法剣の感覚を掴む事ができた。おそらく武器さえ選べばこれからも使えるだろう、俺はポーチから愛用の剣を取り出す。今、壊さず魔法剣が使える武器はおそらくこれだけだ。


「長く使っている武器は魔力を通し易いでしたっけ?」

「ああ、その剣なら全魔力を込めない限り大丈夫だろう」


 使える手が増えたんだ、使うしかない。


「師匠交互に行きましょう俺が撃って魔力を込め直している間に師匠が撃つ、師匠が魔力を込め直してる間に俺が撃つ、これで隙が減らせるはずです。後は駆け抜けましょう……」

「よし、それで行こう」


 師匠の同意も得られたので早速前の魔物に向けて魔法剣をぶっ放す。


「マナスラッシュ!」


 今最も使い易い魔力の斬撃を飛ばすだけの魔法剣だが、前方の魔物は面白いように吹っ飛んでいく。


「それじゃあ、色々見せてやろう……アイシクルスティンガー!」


 先程スライムに攻撃した時の突きは魔力の刃だったが今回師匠が突き出した剣の先からは氷柱が生まれ魔物を貫いていく。


「マナスラッシュ!」


 俺の方は無難に魔力の残撃を飛ばすだけにしておく。

 今は見て覚えておこう、一度見ているとイメージがしやすいので助かる。


「次は、ライトニングボルト!」


 腰溜めに剣を構えたかと思うと次の瞬間剣は雷光を纏い瞬速の剣戟となって魔物を討ち払う。


 俺と師匠の魔法剣は魔物の群れを殲滅する勢いで呻り、吹き飛ぶ魔物を尻目に俺たちは駆け抜ける、斧を投げながら1人で進んだ行きとは全然違う、凄く簡単に進める。師匠がいるだけでこんなにも違うんだな……俺は凄い人に師事できたんじゃないだろうか?


 師匠との旅もこの国に居る間だけだ、今の内に大いに学んでおいた方が良いな、俺も師匠の放った魔法剣を真似てみる。


「アイシクルスティンガー!」


 師匠の魔法剣には劣るけど上手く発動できた。


「ストームブレイド!」


 師匠は次々と異なる魔法剣を見せてくれる、今回だけで俺の手数は一気に増えた。

 魔物の群れの相手をするのはきついけど、良い経験になったな。


「おっと、まだ終わってないな気を抜かないようにしないと、ライトニングボルト!」


 もう少しで魔物の群れを抜ける……

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詠唱は要らないって事だけど技名を言えば勝手に効果変えてくれるのか
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