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ソール・マーニ・サーガ  作者: 鹿ノ子
第一章 闇と月
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沈みかけた月の下では

 ぽつぽつと等間隔に明かりが灯された通路で二つの靴音が響く。

 エーリヴァーガルの中心に建つ塔と訓練場を結ぶ通路をウルドが塔に向かって歩いていくのをラーズが一歩下がった位置でそれに続いていた。

 通路にはウルド達以外に歩く姿はない。

 

 闇の中ですらその存在感を放つ、エーリヴァーガルの象徴である塔。

 だがこの塔を利用するエインエヤルは決して多くはない。

 この塔の上層にはウルドを始めとするエインエヤル幹部の執務室や会議室などがあり、中層には取り扱い及び持ち出しが禁止されている武器や書物などの物品が保管されている。

 そして下層……塔の地下には罪人を入れる牢屋とその罪人を裁く為の審議場がある。その為、この塔に近付くのはごく限られた者だけだった。


「司令官、調査部隊の報告によりますと、月が空に昇っている時間が日に日に短くなっており、それに比例して魔物の数も増えてきているようです」

「そうか……。時間はあまり残されていないという事か」

「……いかがでしょう、レギンレイヴに〈あれ〉の在りかを探させては」


 ラーズがそう言葉にした時、ウルドの足がピタリと止まった。


「口を慎め。〈あれ〉の存在は決して誰にも知られてはならない。例え我々に忠誠を誓っていてもだ」

「はっ、失礼いたしました」


 ラーズにそう言いつつも、ウルドの中では僅かに迷いがあった。

 月の出ている時間が日が経つにつれ短くなっているなら、いずれ空からは月が消えてしまうかもしれない。そうなってしまえばニヴルヘイムは……いや、世界は魔物で溢れかえるだろう。


 ならばラーズの言う通りレギンレイヴにあれの在りかを探させるか……?


 そう頭の中に過った瞬間、即座にその考えを掻き消す。

 

(いや、駄目だ。もしあれが資格者以外の者の手に渡ったならば……)


 恐らく世界は月が消えるよりも悲惨な状況になるだろう。そんな最悪な状況は何としてでも防がなければならない。

 限られた時間と選択肢の中で、ウルドは焦燥に駆られていた。


(早く手を打たなければ……全てが手遅れになる前に)


 不意にウルドが窓の外へと視線を向けると、丸い月が空の下に沈もうとしていた。





*** 






「はああああああああ!!」


 気合いの声と共に放たれた拳は硬い殻を(まと)った頭部を粉々に打ち砕いた。魔物の絶命を待つ前に、スクルドは直ぐ様次の魔物へと狙いを定める。

 スクルドは跳躍し、八本の長い手足を持った魔物に拳を振るう。


ガキィィィィィィィィン


 魔物は前足をかざしてスクルドの攻撃を防いだ。スクルドは態勢を立て直そうと一旦魔物から離れた。

 その隙に魔物は鋭く尖った前足をスクルド目掛けて降り下ろす。

 しかしスクルドはそれを避け、魔物の前足は深く地面に突き刺さった。

 刺さった足が中々抜けないのか、もがく魔物の背後にスクルドは近付き、二本の後ろ足を掴む。そしてそれを力一杯引っ張った。


ギャアアアアアアアアア!!


 メリメリと不快な音と共に断末魔の叫びが耳をつんざく。後ろ足を引き千切られた魔物は痛みと怒りで更に攻撃力を増した様だった。

 前足を引き抜き、先程とは比べ物にもならない速さでスクルドに襲いかかる。残った足を振り降ろそうとしたところで突如魔物の動きが止まる。

 そして次の瞬間、魔物の胴体が真っ二つに裂け、スクルドに赤い液体が降り注いだ。裂けた魔物の向こう側にアルヴィトの姿が見えた。

 黒い爪を右腕に覆ったアルヴィトは直ぐに別の魔物へと向かって行く。

 スクルドは静かに自分の体を見下ろし、それから既に戦闘を開始しているアルヴィトに視線を向けた。











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