【第7話】地獄の神 タルタロス ①
【第7話】は2部にわけます
どのくらい歩いたのか、ようやく地獄の入り口に辿り着いた。青銅の門を潜ると、そこには霧が立ち込めた淀んだ空気が広がっており、その周りは青銅の壁で覆われていた。
しばらく進むと低い呻き声が聞こえてきた。目を懲らすと、巨石に封じられた男の姿が見えてきた。
「お腹空いた・・・・喉乾いた・・・・・おいあんた!その果実を取ってくれないか?」
「これ?ちょっと待ってね」
地獄に似合わない美味しそうな果実が実っている。取ってあげようと果実に近づいたその時。
「触るなっっ!!」
アルテミスの声に私は驚いた。
「びっくりした〜・・・・もうアルテミス!びっくりするじゃない!」
「永遠に飢え続ける男 タンタロス
そいつは息子を殺し、その人肉を神に食らわせるという二重の禁忌を犯し罰を受けている最中だ。」
「そうだったんだ。それじゃあ仕方ないね。ごめんね。タンタロスさん。」
それだけ言い残してその場所を離れた。そのあともいろんな囚人たちに出会う。
2匹の禿鷹に肝臓を啄められている巨人
巨石を押し上げ続ける男
火車に磔られたケンタウロス
穴の空いた壺で水を汲み続ける王女たち
そして私は、ふと疑問に思ったことをアルテミスに聞いてみた。
「さっきから歩いてるだけだけど、ここって地獄なんだよね?」
「・・・・・・そうだ」
「拷問とか受けるんだよね?」
「・・・・・・? 禁忌も犯していないのに何の罰を受けるんだ?くだらないことを言ってないで、さっさと歩け。」
何か想像してたのと違わない?地獄ってこんな平和なところなの?
「あ! でも、私は掟を破ったよ?」
「恋愛をした者への地獄は、今は工事中だ。」
「・・・・・・じゃあさぁ。アルテミス1人でもよかったんじゃないの?」
「・・・・・・・・」
それから、アルテミスは一言も喋ってくれないまま最下層部まで辿り着いた。
「着いたぞ」
「じゃあ、エウノミアーを連れて早く帰ろう!」
そう言って私は牢獄に近づいた。
「美香! 牢獄の番人 カムペーだ!」
カムペーと聞いて、大きな牛のような怪物を想像しながら後ろを振り向いた。するとそこには、蛇の鱗、漆黒の翼、頭部に蠍を乗せた超絶美人が、不適に笑いながらこちらを見ていた。
「久しぶりだなカムペー。エウノミアーを返してもらうぞ!」
「誰かと思ったらアルテミスじゃない?相変わらず色気も何もないわね(笑)」
「そんなもの私には必要ない。」
「ほんとに〜?強がってるだけじゃないの〜?」
「・・・・・・・・」
「それよりも〜・・・・さっきから気になってたんだけど、その丸々と太った子豚さんは、だぁれ?」
なっ・・・・なんて失礼なやつ!やっぱり神も女神も性格悪い奴ばっかりだ!
「おい!カムペー!いくら自分が綺麗だからって人を馬鹿にするような言い方をするな!あと、エウノミアーを返せ!」
「・・・・・・・・え? 綺麗って私のこと?」
ん? なんか様子がおかしいぞ?
「・・・・・・そうだけど?」
「・・・・・・・・」
ありゃ? 下向いて俯いちゃった。顔も真っ赤だし。見た目と違って意外と純粋なんだな。
「ねぇ、カムペー。あなた綺麗で性格も悪くなさそうだし、こんな悪いことしたらダメだよ〜。エウノミアーを返してくれる?」
「・・・・・・・・(コクン)」
「ありがとう!じゃあ、鍵ちょうだい?」
・・・・・・・・チョロすぎる。この手応えのなさは何なんだ?
カムペーから鍵を受け取り、私たちはエウノミアーを牢獄から解放することに成功した。
「おまえ、なかなかやるな」
・・・・・私「綺麗」って言っただけですけどね。
「ありがとうございました。美香さんですね?タルタロスが来る前に早く戻りましょう。」
「そうだな」
エウノミアーの言葉で3人は青銅の門を目指して歩き出した。
「何かあっさりしすぎて、正直拍子抜けしちゃったな(笑)」
「青銅の門を出るまでは油断してはいけません。私が解放されたことを、すでにタルタロスは気づいているはず。いつ現れてもおかしくありません。」
「タルタロスって名前からして、もうすでに強そうだもんね。でも、こっちは3人もいるし大丈夫だよ。ね? アルテミス!」
「・・・・・・・」
あれ? アルテミスどうしたんだろう?
目の前に青銅の門が見えてきた時、霧がなくなった。そして辺りを闇が包み込み、隣にいるアルテミスとエウノミアーの顔さえ見えなくなった。
「・・・・・・・・来たか。」
「まさかタルタロス!?」
恐怖に押しつぶされそうになった時、辺りはピンク一色に包まれた。地獄にピンク?とも思ったけれど、目の前に現れた男を見るとそんなことは些細なことだったと気づかされる。
【第7話】地獄の神 タルタロス ②へつづく




