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SWEET TRAP  作者: 麻乃そら
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第二十六話

日曜日。

僕は落ち着かない気持ちで、紳一郎さんの帰りを待っていた。

一昨日の芦川さんへの伝言を思い出して、ドキドキする。

(結局、芦川さんには恥ずかしくてどうしても言えなかった)


僕を、か、可愛がるって……。

いろいろと変な想像をしてしまう僕っていやらしいのかな?


結婚してから一ヶ月近く経つけど、僕と紳一郎さんはまだキスまでしかしていない。

同じベッドで、ただ寝ているだけだ。

紳一郎さんの仕事が忙しくて夜遅いので、そんな時間がなかったんだよね……。


結婚したばかりの時は花嫁の務めだと思っていたから、

一度は覚悟を決めた僕だけど……。

こんなに時間が開くと、怖気ついちゃうよ。

余計な事を考えてしまうんだ。


僕、うまく出来るのかな?

キスされただけでガチガチになっちゃうのに……。

経験豊富な紳一郎さんが、初心者の僕なんかに満足するんだろうか?

失望させて、嫌われたりして……。


ああ、もっと、勉強しとくんだった!!


「望様?ご気分でも悪いんですか?

すみません。

ノックしたんですけど、お返事がないので……」


芦川さんの声がして、机に伏せっていた僕は慌てて椅子から立ち上がった。

自分の部屋にいても落ち着かないので、勉強部屋で待機していたんだ。


「あ、芦川さん、紳一郎さん、もう帰ってきたんですか?

すぐに玄関に行かなくっちゃ!」

「いえ、まだですけど」

「あ、そう……」

「それが、お客様がおみえなんです。

前にいらしたことのあるアンリ様と、あと、紳一郎様の従弟の方が……」

「……従弟って、香月さん?」


そういえば、フランスに帰る前に挨拶に寄るって言ってたな。

本当に来ちゃったんだ。


「ご存知なんですか?

あの、紳一郎様のお留守にお通ししてもよろしいんでしょうか?

アンリ様は今日お約束をなさってたらしいんですけど、この間のことがありますし……。

望様に伺ってからと思いまして、お待たせしてるんです」

「……追い返すわけにはいかないよ。

紳一郎さんも、もうすぐ帰ってくるだろうし、お通ししてください。

僕もすぐに行きますから」

「はい、わかりました!

望様、この芦川がしっかりお守り致しますので、ご安心なさってください!

今日は望様には指一本触れさせませんわ」

芦川さんは厳しい顔で、指をポキポキと鳴らした。

「あ、ありがとう。お願いします」


アンリさんはこの間の一件で、芦川さんのブラックリストに入ってしまったらしい。



僕ひとりでアンリさんと香月さんのお相手をするのはちょっと荷が重いけど

これも紳一郎さんの花嫁である僕の務めなんだよね。

それに、ここでひとりで紳一郎さんの帰りを待つよりもいいかもしれない。

余計なことばかり考えちゃうし……。


僕は勉強部屋を出て、お客さんの待つ応接室に向かった

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