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SWEET TRAP  作者: 麻乃そら
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第二十一話

「……弱ったな。望君、大丈夫?」


気遣うような声がすごく近くで聞こえた。


「すまない。僕の言ったこと、そんなにショックだった?顔色が悪いよ?」

香月さんは心配そうに、僕の顔を覗き込んだ。

ぎょっとして思わず体をひいてしまう。

紳一郎さんに似ている顔でそんなに接近しないでほしい。

って、さっきまで正面にいたのに、いつの間に僕の隣に移動してるんだよ!!




「望君?」

香月さんは固まっている僕の名前を呼んで、慰めるように(?)肩に腕を廻してきた。

……さっきから思ってたんだけど、このひと紳一郎さんと同じ香りつけてるよね?

そのせいなのか、体に力が入らない。

は、離れなくっちゃ!

……と思ってるのに、香月さんの腕の力が強くて動けないよ。


『君はシンイチロウの大事なオクガタサマなんだから、他の男に絶対に隙を見せたらいけないよ?』


アンリさんがせっかく忠告してくれたのに、僕ってヤツは!

「こ、香月さん!あの、離れてくれませんか?」

「……君、甘い香りがするね」

そう言って、香月さんは僕の顎をすくい、顔を近づけてきた。


アンリさんの時と同じパターンじゃないか!

ううん、あの時よりもっとまずい状況だよ。

助けてくれる芦川さんもいない!


「おーい。それはちょっとシャレにならないんじゃないの?」


その時、からかうような男の人の声が聞こえた。

声の主を探すと、腕組をした小沢先生がドアの前に立っている。

「せ、先生!」

香月さんの腕の力が抜けて、僕は慌ててそこから逃げ出した。


「ノックの音は聞こえませんでしたけどね……」

「あ、忘れてた」

小沢先生はそう言ってコンコンとドアをノックした。

「相変わらずですねえ、小沢先輩」

香月さんが溜息をついた。

「教師になったとは聞いてましたけど、この学校にお勤めだったんですか。

一流の大学を首席で卒業したのにもったいないって、皆が言ってますよ。

お父様の会社は継がれないんですか?」

「ふん、面倒くさい。

教師になるのはガキの頃から決めてたんだ。

俺はこの学校を卒業して偉くなった教え子達に、同窓会でチヤホヤされるのが夢なんだよ!

財界や政界で大物になった教え子達が、ヨボヨボのじーさんになった俺に感謝の言葉を伝えるんだ。

俺はシワシワの顔に涙を零し……」


「あの~。先生、僕、教室に戻っていいですか?」

将来の夢を熱く語る小沢先生に、僕はオズオズと声をかけた。

「おっと。そんな話はどうでもいいんだよ!

おい、こいつは紳一郎の大事な花嫁なんだ。

手なんか出したら、紳一郎に殺されるぞ?」

「そうかなあ?

紳一郎の恋人達とは僕も仲良くさせてもらいましたけど、いつも涼しい顔してましたけどねえ」

「……そいつらとは、本気じゃなかったからだよ」

香月さんは僕の方に視線を向けた。

「へえ、望君には本気なんだ?」

「おう!紳一郎とこいつは運命の出会いをして結ばれたんだ!

深~く、熱~く、愛しあってるんだよ!

……な?」

「え?」


いきなり小沢先生にふられて、僕は何て答えたらいいのかわからない。

だから、僕は嘘をつけない性格なんだよ……。


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